『イマイが暴く_最新_振り込め詐欺』(無料動画サイト「YouTube」より)
動画URL http://youtu.be/UkaKQo1ZX5M
かつて、日本テレビ系で不定期に放送された『報道特捜プロジェクト』。レギュラー化を望む声が多かった人気番組だが、中でも視聴者の支持が厚かったのが「イマイ」コーナーだ。
では、ライターとして散々悪い連中を取材してきた私が、ガチンコでイマイを真似してみたら、果たして、どんな結果になるのか? 早速、実践チャレンジしてみた。
●融資保証金詐欺の手口今回、私が取材対象に選んだのは、巷に氾濫する「詐欺金融広告」である。一冊の情報雑誌に無数の嘘八百広告が溢れている。その中から、「金利0.3%」「7大疾病保険制度」「99.99%ご融資」等々、ありえないほど甘い誘い文句の踊る「M信用クレジット」なる業者を選択、電話を掛けた。
異常に丁寧な語り口の男に、氏名・住所・電話番号・職業、何から何まで嘘を告げたところ、
「残念ながら、お客様には貸し出し禁止が出ています」
と言われた。
理由を尋ねると、ブラック・リストに載っているからだという。審査などしていない証拠だ。だが、「2つの条件をのめば、特別にご融資します」と言う。
2つの条件とは、
(1)大手消費者金融で10万借りて、「借用実績」をつくる
(2)その金で返済保険に入る
まったく意味がわからぬまま、業者の言う通り東京・新宿に移動。
業者「靖国通り沿いに消費者金融のレイクがあるでしょ? 10万円借りてみてください。実績つくったら、金融庁から貸し出しOK出ますから」
金融庁から許可? 笑うしかない。当然、実際には借金などせず、「うまく借りられた」と嘘の報告を入れると、「金融庁に確認できました。では、その10万円を保険として、先に当社にお振り込みを! オタクが返せなくなった時の保証金だから」と言う。
これでハッキリした。この業者は、いわゆる「融資保証金詐欺」【編註:貸し出しに先立ち、担保となる「保証金」を振り込ませる詐欺】だ。さて、正体が判明したところで、イマイの真似開始である。
●矛盾点を指摘すると態度が急変まずは、業者をイラ立たせることからスタート。仕事が忙しくてATMに行く時間がない、などと言い訳し続け、振り込まないこと1週間。その後「振り込む前に、色々疑問がある」と告げ、広告内の矛盾点を突く。
私「“5年連続お客様支持率No.1”らしいけど、貴社の許可番号は(1)でしょ? 登録して3年たっていないのに、5年ておかしくないですか?」
途端に業者の態度と口調が激変する。
業者「はぁ? なんのマネだ、お前」
いきなりヤクザ口調。正直、怖い。しかし、テレビで見た通りだ。めげない、めげない。
私「ホントに俺を審査した? じゃあ、俺の勤務先、言ってみてよ」
業者「お前の勤務先は、上がってるから。今週中に乗り込むから覚悟せえよ」
フリーライターの私に勤務先などない。狭いボロアパートの一角が私の仕事場だ。すべてが、でまかせの脅し。一方的に切られた電話に、早速リダイヤル。
私「住所記載が途中で終わっているけど、実際に訪問したいから、キッチリ教えて」
業者「電柱に1000回お辞儀したら、教えてやるよ」
私「7大疾病って何?」
業者「『しっぺい』って、お前アホか。『しつびょう』だろ」
私「これ『しっぺい』って読むんですよ。辞書で調べてください」
業者「いたずらか、これ? 営業妨害で訴えるぞ」
私「どこに?」
業者「警察に決まってるだろ」
私「警察と接触して一番困るの、あなた方では? 『俺らの詐欺を邪魔する奴がいる』って訴えるんですか?」
また一方的に電話を切られた。
その後、数日にわたってリダイヤルを繰り返し、追及し続ける。「広告に写真を出しているI会長に会わせてよ」「VISAと提携していると書いてあるけど、確認したら無関係だといわれた」……我ながら嫌なヤツだ。
すると、「電話してくんじゃねぇ」「貧乏ヒマ人としゃべってる時間がもったいねぇ」「お前が嫌いなんだよ」……甚だしいほどにテレビで見た通りの反応が返ってきた。名乗っただけで切られる回数が増えた、取材開始から10日目。ついに業者が弱腰になった。
業者「もういいよ。どうすりゃ、許してくれる?」
私「正直に教えてください。詐欺ですよね?」
業者「ああ、そうだよ。勘弁してくれよ」
私「『融資保証金詐欺』ですね?」
業者「そうそう。その通りよ。二度と電話しないでくれよ」
電話回数、実に78回目にして、勝負あり。
詐欺業者は一方的にまくしたてるのは大得意でも、突っ込まれると極端に弱い。
正直、こういった詐欺、身に覚えのない架空請求、応募してもいないのに届く「当選おめでとうございます」ハガキなどには接触しないで無視を決め込むのが一番だ。「無視こそ最大の防御なり」といえる。
面白そうだからとマネする人がいるかもしれないが、何があっても私は責任を取れません。くれぐれも計画的に。
(取材・文=鷹司昇一郎)