新年早々、韓国でまたもや交通に関する失態が起きた。LCC(格安航空)のジンエアー旅客機が、“半ドア”のまま飛行するというトラブルを起こしたのだ。

旅客機はフィリピンのセブ島を出発するも、離陸から20分たつまで乗務員は誰一人、この状態に気づかなかったという。

 当時、この便に搭乗していた乗客はこう語る。

「離陸前からドアの隙間には気づいていたけれど、確信が持てずにいました。しかし、離陸のため機体の速度が上がると、轟音が鳴り始めた。そして、開いたドアの方向へギャレーのカーテンがなびくのを見て、圧力が抜けているなと思いました。それからは、ひどい寒気がしたり、寝ていた人が耳の痛みで起きるのを見て、これはまずいな、と」
 
 非常事態に気づいたこの乗客は、離陸から20分ほどたったころ「ドアがちゃんと閉まっていないのでは?」と、客室乗務員に声をかけたという。
しかし、乗務員は笑顔で「何も問題はない」と言い切る始末。ところがその5分後、「機体に異常が発生し、これからセブ島に引き返す」との機内アナウンスが流れた。機内のざわめきに乗客の子どもたちは泣きだし、「頭が痛い、鼓膜が痛い」と訴える人も続出。しかも、つらいのは痛みだけではなかった

「1万フィートまで上昇した時、ドアはもう指が入るくらい開いていて、恐怖が襲ってきました。急にパカッと開いて、人が上空へ飛んでいってしまうんじゃないか、原因もわからないままここで死ぬのかな、って」
 
 死の恐怖に包まれる中、数十分後、機体はなんとか無事にマクタン・セブ国際空港に着陸。われ先に降りようと乗客が騒ぐ中、今度はドアが開かないというハプニングが。
気圧によって異常を来したドアは、女性乗務員2人がかりでもなかなか開かなかったという。

 それにしても、近頃の韓国のLCCは、やけにトラブルが多い。今回のジンエアーは、あの“ナッツリターン”で有名な大韓航空の子会社。ネットでは「やっぱり不安で乗れない」と、LCC不乗運動が広がりつつある。また、韓国最大級のLCCであるチェジュ航空では昨年12月、客室与圧装置に異常が発生し、機体が急降下したり、酸素マスクが降りてくるなど、乗客の不安をあおった。さらに同時期、ティーウェイ航空、イースター航空、エアプサンも、与圧装置異常や機体部品故障で欠航や引き返しなどの多数のトラブルを起こしている。


 韓国LCCの一連のトラブルラッシュについて、大きな事故が起こる前の「ヒヤリ・ハット」ではないかと、韓国の航空機専門家は指摘する。

「最近のLCCのトラブルの増加は、もうじき起こる重大事故の前兆のような気がしてならない。トラブルが重なって、大きな事故へつながる可能性は多い。これは、航空会社が質より量を追求した代償ではないだろうか」

 米国のCNNでも報じられるなど、国際的にも注目を浴びているこの「半ドア飛行」。早急な原因解明と改善を願いたいが、当分の間は、韓国のLCCは避けたほうが安全かもしれない……。
(文=李ハナ)