アリーナツアー、幕張メッセ公演の模様をお届け!
| 秦 基博 GREEN MIND 2010 | 2010.05.09 (SUN) at長崎稲佐山公園野外ステージ |
3回目を迎えた秦 基博のシリーズ・ライヴ【GREEN MIND】は、全4ヶ所の野外ツアー・スタイル。ギターの弾き語りを基本にしたアコースティック・ライヴは、初夏という季節にぴったりだ。2本目となる長崎稲佐山公園野外ステージは海に臨む山頂にあり、満開のツツジと涼しい風が迎えてくれる。会場の後ろには長崎名物の屋台が並んでいて、野外気分を盛り上げてくれる。客席後方には"家族エリア"もあって、幅広い年齢層のオーディエンスが秦の登場を待っている。
気負いなくステージに現われた秦に、観客はいきなり立ち上がって歓声と拍手を送る。照りつけていた太陽が薄い雲に隠れて、絶好のライヴ日和。オープニングを告げる秦のギターによるインスト「Theme of GREEN MIND」が、ゆったりと会場に響き渡る。3人のサポート・メンバーが加わって「休日」を歌うと、秦が話し始めた。
「気持ち良い風が吹いてます。暑過ぎず、寒過ぎず、適温なんじゃないですか? ゆっくり音楽を楽しんでもらいたいと思います」。観客はいかにも音楽が好きな人達ばかりで、秦の言葉をスッと受け入れる。何よりその言葉は秦自身に向けられているのだ。軽快なビートの「花咲きポプラ」を聴いていると、彼が一番このライヴを楽しんでいることが分かる。伸びやかな声が一人ひとりに届いて、オーディエンスの表情が一気に和んだ。これが秦の歌の最大の魅力であり、最小限のサウンドでダイレクトにオーディエンスとつながろうとする彼のスタンスを表わしていた。
バンドがいったん去った5曲目からの弾き語りは、秦がイメージする【GREEN MIND】そのもの。その場の雰囲気で歌う曲を決めながらの進行が、観客との一体感を高めていく。ほとんどのオーディエンスが秦と一緒に歌を口ずさんでいる。何気ない日常に浮かぶ愛や哀しみが、大きな自然の中で共有される光景が感動を呼ぶ。無理に観客をリードしようとしない秦のスタンスが、爽快だ。
アニメ『NARUTO』の主題歌として流れている新曲「透明だった世界」では、両親に連れられてきた家族席の子供たちが大喜び。一方で親達は「虹が消えた日」などの切ないラブソングを歌って楽しんでいる。
再びバンドが加わってからも、ペースは変わらない。
「昨年、一人でひたすら【GREEN MIND】ツアーを回って、今年は野外って決めていました。草を伝ってリズムを感じて、野外の空気を伝って歌を、っていうイメージがあった。でも、そんな想像以上に鳥が鳴いてますね(笑)」。会場を囲む林の中で、鶯(うぐいす)が盛んに鳴いている。
最後に弾き語りで歌った「アイ」が圧倒的だった。一番後ろの芝生で寝転ぶ人にまで、自分の心の全貌を届けようという気迫に満ち溢れている。バンド編成もあるメリハリの効いたパフォーマンスの中だからこそ、ギター一本がこれほど力強く繊細な説得力を持つ。秦の【GREEN MIND】の真価がこの歌に集約され、オーディエンスの大きな大きな拍手が巻き起こった。
アンコールの余韻が、やがて夕風に変わって、秦の歌が全ての観客の記憶に深く刻み込まれたライヴだった。
(取材・文/平山雄一)