『1974フットボールオデッセイ』(双葉社)著者:西部 謙司Amazon |honto |その他の書店

◆ひと味違うサッカー小説
ドイツ・ワールドカップが近づいて、サッカー本は再び活況を呈している。特定の選手に光を当てたもの、戦術や国民性にこだわったもの、いろいろだ。
だが、この本は一味違っている(ALLREVIEWS事務局注:本書評執筆年は2006年)。

一九七四年。ワールドカップ、西ドイツ大会。決勝は地元西ドイツとオランダのカードだった。ベッケンバウアーやゲルト・ミュラーを擁する西ドイツに対して、ヨハン・クライフという不世出の天才を抱えたオランダ。だが、圧倒的な力をみせつけて勝ち上がってきたオランダは、1―2で西ドイツに敗れた。どうして敗れたのか。「トータルフットボール」という、その後のサッカーの世界を席巻することになる革命的戦法を身につけたチームは、なぜ、負けたのか。

著者は、その謎を解き明かすために主だった選手へのインタビューを敢行し、三十二年の時間を超えて、その決勝戦へと肉薄する。

そう、これは小説である。登場人物の二十二人+アルファをきちんと動かして、紙の上で、三十二年前の決勝を再現しようとしている。ヨーロッパサッカーに通暁した著者だからこそ書くことができた、異色のサッカー小説である。


【書き手】
陣野 俊史
1961年長崎生まれ。文芸評論家、フランス文学者。ロック、ラップなどの音楽・文化論、現代日本文学をめぐる批評活動を行う。最新作に『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』(集英社)。その他の著書に『フランス暴動 - 移民法とラップ・フランセ』『じゃがたら』(共に河出書房新社)、『フットボール・エクスプロージョン』(白水社)、『フットボール都市論』(青土社)など。

【初出メディア】
日本経済新聞 2006年5月10日

【書誌情報】
1974フットボールオデッセイ著者:西部 謙司
出版社:双葉社
装丁:単行本(232ページ)
発売日:2006-04-01
ISBN-10:4575298859
ISBN-13:978-4575298857
編集部おすすめ