◆聖性の織り込みに挑む
鹿島田真希の最新作。若い建築史のS教授。
だが、彼らの起こす反応にはきちんとした下敷きがある。それは聖なるものをめぐる理論だ。アブラハムとイサクの逸話に自分を重ね合わせたり、愛が終わり、肉体が滅んだ後の復活の可能性を考えたり……。面倒な話ではない。過剰な装飾を剥(は)ぎ取った文体で綴(つづ)られる小説は、描写や説明から解放されて、テンポのよい会話を前面に押し出しながら進んでいく。
それにしても鹿島田の変貌(へんぼう)ぶりには毎回驚かされる。『二匹』というデビュー作の荒唐(こうとう)無稽(むけい)ぶりから、『白バラ四姉妹殺人事件』や『六〇〇〇度の愛』といった端正な小説へ。そして本作では、聖性をどう小説に織り込んでいくかという困難なテーマに挑んでいる。
【書き手】
陣野 俊史
1961年長崎生まれ。文芸評論家、フランス文学者。ロック、ラップなどの音楽・文化論、現代日本文学をめぐる批評活動を行う。最新作に『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』(集英社)。その他の著書に『フランス暴動 - 移民法とラップ・フランセ』『じゃがたら』(共に河出書房新社)、『フットボール・エクスプロージョン』(白水社)、『フットボール都市論』(青土社)など。
【初出メディア】
日本経済新聞 2006年9月13日
【書誌情報】
ナンバーワン・コンストラクション著者:鹿島田 真希
出版社:新潮社
装丁:単行本(160ページ)
発売日:2006-07-28
ISBN-10:4104695033
ISBN-13:978-4104695034