◆知的ゲームのような展開
アルベール・カミュの『異邦人』は二十世紀を代表するフランス小説。日本でも窪田啓作訳で親しまれてきた。
でも、いろんな事情があって難解で接近しがたい感じがあった。それを乗り越えたい。トゥーサンやウエルベックの翻訳で知られる野崎歓さんも、たぶん同じ感想を持っていたはずだ。だから、野崎さんは『異邦人』を「よそもの」と訳してみた。身近な存在としてムルソーを理解するというよりも、ごく普通にそこにいる理解しがたい他者として、ムルソーを捉(とら)えようとしている。
だからこの本には最初に『よそもの』の抄訳が掲げてあり、その後、その翻訳を下敷きにした野崎さんの授業が始まるという趣向。授業といっても堅苦しい理論を振り回すのではなく、ムルソーという主人公を徹底して「よそもの」として考える知的なゲームのように話は進む。目からウロコが落ちるような話がいっぱいだ。
【書き手】
陣野 俊史
1961年長崎生まれ。文芸評論家、フランス文学者。ロック、ラップなどの音楽・文化論、現代日本文学をめぐる批評活動を行う。最新作に『戦争へ、文学へ 「その後」の戦争小説論』(集英社)。その他の著書に『フランス暴動 - 移民法とラップ・フランセ』『じゃがたら』(共に河出書房新社)、『フットボール・エクスプロージョン』(白水社)、『フットボール都市論』(青土社)など。
【初出メディア】
日本経済新聞 2006年8月23日
【書誌情報】
カミュ『よそもの』きみの友だち著者:野崎 歓
出版社:みすず書房
装丁:単行本(ソフトカバー)(154ページ)
発売日:2006-08-05
ISBN-10:4622083213
ISBN-13:978-4622083214