社会的な地位が高くなるほど、その人の本質が何気ない振る舞いに表れるもの。人生後半で周囲から慕われる人と、敬遠される人を分けるものは何なのでしょうか。


『「まだ働かなきゃダメなんですか?」60歳からでもバリバリできる仕事力: 『島耕作』シリーズ作者が実践する、いつまでも楽しく働くコツ』(弘兼憲史著)は、『課長 島耕作』の作者が自身の経験をもとに、人生100年時代を楽しく働き続けるための心構えや仕事術、健康法を説いた一冊です。

今回は本書から一部を抜粋し、著者が大企業の社長との出会いから学んだ「謙虚さ」の大切さと、定年後に過去の肩書を手放すべき理由について紹介します。

■偉い人ほど「謙虚」な姿勢が好感を生む
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」は、僕の座右の銘です。僕がこのことわざを意識するようになったのは30~40代の頃、名門ゴルフ場でゴルフをするときに一緒に行った大企業の社長さんの行動を見てからです。

その社長さんはとても偉い方なのに、キャディさんに敬語を使っていました。「ありがとうございます」と言ってお礼もきちんとされていました。それを見たときに、簡単なことですが、「偉くなった人はこうなるんだ」と衝撃を受けました。

後日、ファミリーレストランで見かけた年配の人が、ものすごく偉そうに「水をくれ!」とスタッフの方に命令をしていました。

おそらく、大企業の社長さんはファミリーレストランで水をもらっても「お水を持ってきてくれてありがとう」と言うと思うのです。

このような場面に触れて、しみじみと「実るほど頭を垂れる稲穂かな」と思いました。偉い人であればあるほど、謙虚な姿勢と出会ったときのギャップを感じさせます。

「一見怖そうなのに偉そうにしていない。
なんて腰が低いんだ」

このようにますます株が上がり、評判も広がることでしょう。

『会長 島耕作』に出てくる三舞代議士は、高圧的な態度をとって顰蹙を買いました。そのおかげでうまくいくはずだったプロジェクトも頓挫してしまいました。

高圧的な態度は損をするし、謙虚な振る舞いには得しかありません。あなたも人生において得をしたいと思いませんか。

■定年後に「元〇〇」の肩書を語ってはいけない理由
そして定年後に絶対してはいけないのは、前の肩書を語ることです。

以前、名刺をいただいたことがあったのですが、その名刺に元〇〇と書いていました。その肩書から離れても同じように呼ばれたいと思っているところに、何ともいえない「哀れ」を感じました。肩書がなくても自分を誇って紹介できる人物に人は惹かれます。

田舎暮らしに憧れて定年退職後に移住し、失敗した人の多くは前の肩書をひけらかし、都会との違いを「これだからダメなんだ」と地元住民の方に言っていることが原因だそうです。今まで大企業に勤めていようが、素晴らしい役職であろうが、その土地で住むことに関しては初心者です。「学ばせていただいています。
いろいろと教えてください」という気持ちでいないといけないのです。

60代はいわば「第二の青春」です。肩書という古くさいしがらみこそ、あなたにふさわしくありません。ぜひ前を向いていこうではありませんか。

肩書が欲しいなら、新しい肩書をつくりましょう。

「元」「前」はみっともないことです。なぜなら今が一番ではないから、そう呼ばれるし、自分も前がよかったと思っているということだからです。

著者:弘兼 憲史(漫画家)
1947年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業。松下電器産業に勤務の後、74年漫画家デビュー。85年『人間交差点』(原作 矢島正雄)で第30回小学館漫画賞青年一般部門、91年『課長 島耕作』 で第15回講談社漫画賞一般部門、2000年『黄昏流星群』 で第4回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、03年同作で第32回日本漫画家協会賞大賞を受賞。07年には紫綬褒章を受章している。
主な作品はほかに、『ハロー張りネズミ』 『加治隆介の議』 など多数。現在は『社外取締役 島耕作』(「モーニング」)、『黄昏流星群』(「ビッグコミックオリジナル」)を連載中。
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