空前のエンターテインメント「スター・ウォーズ」シリーズをベースに、日本有数のアニメスタジオがクリエイター独自の”ビジョン”で描き出す、ルーカスフィルムの一大プロジェクト『スター・ウォーズ:ビジョンズ』。ヒットメーカー神山健治が総監督を務め、Production I.Gが手掛ける最新作にして初の長編アニメシリーズ『スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ』が、ディズニー公式動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」で独占配信中。
今回は神山総監督に、作品のテーマや描きたかったこと、主人公カーラや新キャラクター・ナワームに込めた想いなどを語ってもらった。

――どのようなテーマで物語を作っていこうと考えたんでしょうか?

神山 ライトセーバーが失われ、ジェダイもほとんどいなくなった1000年後の世界で作り出された、使い手の心の色を映すライトセーバー。そのアイデアを取り入れ、正史の「スター・ウォーズ」とは異なる物語を作っていこうというのが、このシリーズのテーマになっています。

革命の時代が終わり、帝国に刃向かう反乱軍が正義ではなくなった現在の「スター・ウォーズ」では、”ライトサイド”や”ダークサイド”の境界が、観ている人たちにとって少し分かりにくくなっているのではないかと感じていました。

そうした善悪を単純に色分けすることが難しい今の時代に、改めてジェダイが掲げる正義である”ライトサイド”とはどういうものなのか。そして、フォースの暗黒面である”ダークサイド”とは何なのかを問い直したいと思って作ったのが、この『スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ』です。

――これまで制作してきた短編2作から引き継いでいこうと思ったことはなんですか?

神山 使う人の心を映すライトセーバーという設定は、ルーカスサイドが一番興味を持ってくださった部分でした。その部分は短編から受け継ぎつつ、全8話からなる長編シリーズの中にどう組み込んで、どう発展させていくかは特に意識したところです。

それと、短編に登場していたキャラクターたちを、長編シリーズの中でどう生き生きと描いていくかというのも大きな課題でした。主人公・カーラの父親でセーバースミスのジーマをはじめ、ジューロやイーサンといった個性的かつ魅力的なキャラクターたちの活躍も見どころになっています。

ファンの皆さんに「見たかったのはこれじゃない」と言われないように、期待を上回る新しい面白いアイデアを常に取り入れながら、期待に応えられる作品にしていくことを心がけました。

――全8話の長編シリーズということで、短編のときとは違う難しさを感じたところはありましたか?

神山 長編作品を作るのはいつも大変なんですけど(笑)、全8話って実際は時間にすると「スター・ウォーズ」の劇場作品一本分ぐらいなんですよね。


ただ今回は長編シリーズという形だったので、各話ごとに物語の山場や締めを考えたり、どの話数でどのキャラクターを活躍させるかといった配分のバランスを調整するのに苦労しました。

――「スター・ウォーズ」の世界観を描くにあたって必要と感じていたものはなんですか?

神山 やっぱりジェダイとライトセーバーが出てこないと、「スター・ウォーズ」にはならないと思うんです。その上で宇宙船での冒険や戦い、さまざまな惑星を舞台にした活劇、その両方があってこその「スター・ウォーズ」だと考えていました。

そこで、そうした魅力はふんだんに取り入れつつ、物語の軸となるカーラとジーマにフォーカスを当て、この世界ならではのカーラの冒険譚と成長物語を描いていった感じです。

カーラを通じてジェダイへの憧れを思い出してほしい

――今作では主人公のカーラをどのように描こうと考えたんでしょうか?

神山 今の時代、「ジェダイって格好いいよね」と掛け値なしに言える人は少なくなっているような気がしていて。それよりも「ジェダイの規範って窮屈だよね」とか、「ジェダイの正義って言っていることは正しいけど格好良くないよね」という空気感が、今のファンの間に漂っているような気がしていたんです。

だからこそ、そんなファンの人たちに「ジェダイってやっぱり格好いいんじゃないか」「ジェダイになりたい」と改めて思ってもらえるような存在として、カーラを描きたいと考えました。

この作品を観た皆さんが、カーラの活躍を通じてジェダイへの憧れを再び抱くきっかけになってくれたら嬉しいですね。

――そんなカーラの前に立ちはだかる敵として、新キャラクター・ナワームが登場します。

神山 善悪を映すライトセーバーという設定を活かす上で、ナワームを登場させたことは、僕にとって今作の大きなチャレンジの一つとなりました。

ダース・ベイダーを思わせる黒いマスク姿で登場するナワームは、力こそが正義だと信じ、圧倒的な力で銀河に新たな秩序を構築しようと、破壊と暴力をまき散らしていきます。

まさに”ダークサイド”を体現しているような人物ではありますが、なぜか彼の持つライトセーバーは、ジェダイの正義を象徴する青い光を放つんです。


そんな謎めいた存在であるナワームの登場によって、”人の心を映すライトセーバー”という、この物語で掘り下げたかったテーマを、より明確にすることができたと思っています。

――カーラの成長に大きな影響を及ぼしていく父親のジーマとジューロについてもお聞かせください。

神山 今作をカーラの成長譚を描いたジュブナイル作品にしようと考えたときに、真っ先に思い浮かんだのが『スター・ウォーズ/新たなる希望(エピソード4)』に登場するオビ=ワン・ケノービでした。

若者を導き、自らは去っていく……。カーラのそばで彼女を導いていく存在も、そういうキャラクターであるべきだと思い、生み出したのがジューロになります。

ジーマは、ジェダイとはどうあるべきか悩んだ先達ですね。カーラには、そんな偉大な父親を追いかけるだけでなく、いつかは乗り越えていってほしいという想いを込めました。

――総監督として、この『スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ』を作り終えた今の率直な感想をお聞かせください。

神山 本当に楽しかったです。「スター・ウォーズ」という偉大な作品に関わることができたのは本当に光栄なことでしたし、とても貴重な体験をさせていただきました。

世界的なスタジオとともに作品を作る機会はなかなかありませんので、そこで得られたことはとても多かったと思っています。

この経験を今後の作品作りにも活かしていきたいと思っていますし、自分自身、まだまださまざまなことに挑戦できるという自信にもつながりました。


――最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。

神山 ファンの皆さんにたっぷりと楽しんでいただける「スター・ウォーズ」を、アニメーションで作ることができたと自負しています。

皆さんの期待に応えられるような作品になっていると思いますので、ぜひご覧いただき、『スター・ウォーズ:ビジョンズ/九人目のジェダイ』ならではの面白さを堪能していただけたら嬉しいです。

<PROFILE>
神山健治(かみやまけんじ)
3月20日生まれ。主な監督作品はTVアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』、『精霊の守り人』、『東のエデン』、劇場映画『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』、『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』ほか。

(C)2026 Lucasfilm Ltd.
編集部おすすめ