骨格から好印象を設計する印象設計専門家・池田曜央子(いけだ・ようこ)です。元建築士という経歴を活かし、感覚やセンスに頼らず理論で似合わせる「骨格補正メイク」を考案。
現在はメイクだけでなく、ヘアスタイルやファッションまで含めたトータルの外見づくりを研究し、SNSやレッスンなどを通して提案しています。

「似合う髪型」って、そもそも何?

 普段は似合うメイクを中心にコンサルティングをしていますが、実は同じくらい喜ばれるのがヘアスタイルのアドバイスです。「今の髪型がなんとなくしっくりこない」「美容室で似合うようにしてください、と頼んでも正解がわからない」「雑誌で素敵だと思った髪型にしたのに、自分がやると何か違う」など、そんなお悩みをよく聞きます。

「似合う髪型がわからない!」面長・丸顔・左右差…骨格でわかる...の画像はこちら >>
 私自身も、もともと「似合うとはなんだろう」とずっと悩んできた側の人間なので、その気持ちはとてもよくわかります。「似合う」という言葉は、考えてみればとても抽象的です。ですが不思議なことに、誰が見ても「この人、この髪型似合ってるよね」と感じる組み合わせは確かに存在します。美容室のメニューでも「似合わせカット」という言葉をよく見聞きしますが、一体何をもって「似合う」と判断しているのでしょうか。そして、自分自身で「似合う」を見つけることはできるのでしょうか。

 今回は、骨格に「似合う」とはどういうことなのかを日々研究している筆者が、似合うヘアスタイルの考え方をできるだけ理論的に解説していきます。

実は「似合う」には2種類ある?

 まず、私は人が「似合う」と感じるものには、大きく分けて2つあると考えています。ひとつは、その人の特徴を強調するもの。もうひとつは、その人の特徴を補正するものです。ここでいう「特徴」とは、基準となる比率に対して目立っている部分のこと。例えば、顔が縦方向に長ければ「面長」、横方向の丸みが強ければ「丸顔」というように、人の顔にはそれぞれ異なる特徴があります。
この特徴があるからこそ、私たちは一人ひとり違う顔に見えます。

 では、その特徴をさらに強調することを「似合う」と考えたらどうでしょう。面長の人なら、縦方向のラインを生かしたシャープなヘアスタイル。丸顔の人なら、丸みを生かした柔らかなヘアスタイル、というように、もともと持っている特徴をさらに際立たせる方向です。すると、その人らしさがより強く出て「キャラが立つ」ようになります。これも間違いなく、ひとつの「似合う」です。

「似合う髪型がわからない!」面長・丸顔・左右差…骨格でわかる“理想の髪形”決め方ルール
髪型ビフォーアフター
 一方、もうひとつの考え方が特徴を補正する似合わせです。面長であれば縦長感を和らげ、丸顔であれば横幅を目立ちにくくする。つまり、それぞれの特徴を強調するのではなく、全体をバランスのよい卵形へ近づけて見せる考え方です。面白いことに、「強調型」と「補正型」では、同じ人に対して真逆のヘアスタイルの提案になります。だからこそ「似合う髪型を教えてください」と言っても、人によって答えが違うのです。

私が「補正型」をおすすめする理由

 ちなみに私は、一般の方へのコンサルティングでは、基本的に「補正型」をおすすめしています。例えば、漫画やアニメなどのキャラクターを想像してみてください。
キャラクターの場合は、顔や髪型の特徴を強調したほうが個性が際立ち、一目見ただけで「あのキャラクターだ」と認識しやすくなります。その意味では、強調型との相性がとてもいいと感じます。

 一方、一般の方の場合は、私がこれまで多くの方を見てきた経験上、特徴をさらに目立たせるよりも、気になっている部分を自然に補正したほうが「こっちのほうが好き」「こっちのほうがキレイに見える」と感じる方が多いのです。そもそも本人がコンプレックスに感じている部分は、その人の顔の「特徴」になっていることも少なくありません。

 そこで私のコンサルティングでは、その特徴を無理に消すのではなく、目の錯覚を利用して全体のバランスを整えて見せることを大切にしています。ヘアスタイルは、特に輪郭の補正に非常に効果的です。ではここからは実際の受講者さんたちの例を交えながら、顔の特徴別に補正方法を解説していきます。

面長が気になる場合は「横」を意識

 面長寄りのAさんの場合。面長さんを補正するときの基本ルールは、「横を強調する」ことです。顔そのものの縦幅を変えることはできませんが、顔の周囲に横方向のボリュームを作ることで、相対的に縦の長さを目立ちにくくすることができます。

「似合う髪型がわからない!」面長・丸顔・左右差…骨格でわかる“理想の髪形”決め方ルール
ヘアスタイル
 例えば、前髪を作ると、おでこの見える面積が小さくなるため、顔の縦幅が短く感じられます。さらにサイドをふんわりさせることで横幅が加わり、全体として丸みのあるシルエットに近づきます。Aさんの場合、もともと前髪は作っていました。
ただ、短くパツンと切った前髪は幼い印象になりやすいため、少し長めに伸ばし、コテで自然にカールさせています。

 また、以前はサイドの髪も短く、輪郭をそのまま拾うスタイルでした。そこで表面の髪を少し長く伸ばしてもらい、コテでふんわりとカールするようにアドバイス。顔そのものは何も変わっていないのに、髪のシルエットをちょっと変えるだけで、縦長感が和らいで見えるようになります。

丸顔が気になる場合は、面長と真逆

「似合う髪型がわからない!」面長・丸顔・左右差…骨格でわかる“理想の髪形”決め方ルール
ヘアスタイル
 次は丸顔寄りの私自身を例にしてみましょう。丸顔さんを補正するときの基本ルールは、面長補正とは真逆です。つまり、「縦を強調する」こと。横にボリュームを出すと、もともとの丸みがさらに強調されてしまいます。そこで前髪からサイドへつながるような縦方向のラインを作り、顔の横をスッキリと見せます。例えば、前髪を完全に下ろして額を覆うより、額を見せたほうが縦の長さを感じやすくなります。

 さらにサイドの髪をふんわり横へ広げるのではなく、片側だけでも顔に沿わせるようにすると横幅も抑えられます。すると、顔自体の形はもちろん変わっていないのに、全体として少し縦長のシルエットに感じられるようになります。面長さんには「横」、丸顔さんには「縦」。
このようにヘアスタイル選びは感覚ではなく、かなり論理的に考えることができるのです。

輪郭の左右差は、無理に左右対称にしなくていい

 輪郭に左右差があるBさんの場合。顔はもともと完全な左右対称ではありませんし、年齢を重ねるにつれて筋肉の使い方や生活習慣などによって左右差が気になってくることもあります。「写真を撮ると片側だけ輪郭が違って見える」「片方の頬だけ張って見える」そんなお悩みもよく聞きます。この場合、私は左右を無理やり同じように見せようとはしません。気になる側だけを、髪でさりげなくカバーします。

「似合う髪型がわからない!」面長・丸顔・左右差…骨格でわかる“理想の髪形”決め方ルール
ヘアスタイル
 実は人は、見えていない部分について、見えている情報から自然に補って認識する傾向があります。つまり、左右差が目立つ部分を少し髪で隠してしまえば、わざわざ輪郭そのものを変えようとしなくても、全体としてバランスが整っているように感じやすくなるのです。左右差を隠そうとして顔全体を髪で覆ってしまう必要はありません。ほんの少し毛束でカバーするだけでも見え方は変わります。コンプレックスは「全部隠す」のではなく、どこまで見せて、どこを見せないかを考えることも大切です。

おでこが広いなら「全部隠す」必要はない

 最後は、おでこの比率がやや大きめのCさんです。おでこが狭い私からすると、Cさんの広く丸いおでこはむしろ羨ましいくらいなのですが、ご本人にとっては気になるポイントのひとつ。とはいえ、せっかくのキレイなおでこを前髪で丸ごと隠してしまうのはモッタイナイ。
そこで、おでこのサイド部分だけを髪で少し隠しました。

「似合う髪型がわからない!」面長・丸顔・左右差…骨格でわかる“理想の髪形”決め方ルール
ヘアスタイル
 すると、実際のおでこの大きさは何も変わっていないのに、見えている部分の形が変わることで、顔全体が卵形の輪郭に近づいて見えます。

 さらにこのケースでは、ヘアスタイルだけでなくメイクも組み合わせています。おでこの生え際に薄くシェーディングを入れ、眉は上側へほんの少し足して描きます。すると目の錯覚によって、おでこの面積が実際より小さく感じられるようになります。このように、髪だけですべてを解決しようとせず、ヘアとメイクを組み合わせて補正するのもおすすめです。

顔を変えなくても「見え方」は変えられる

 メイクの撮影現場でも、ビフォーアフターを見た編集さんなどから、「メイクでも変わっていますけど、ヘアスタイルの効果ってすごいんですね!」と言われることがよくあります。実際、輪郭に関してはメイクだけでできることには限界があります。シェーディングで影を作ることはできますが、顔の外側のシルエットそのものを大きく変えることはできません。そこで力を発揮するのがヘアスタイルです。顔の周囲にある髪まで含めてひとつの「形」として考えると、縦長にも横長にも見せることができますし、左右差やおでこの広さなども自然にカバーできます。

 そして何より知っておいてほしいのは、似合う髪型を見つけるために、流行のヘアスタイルを片っ端から試す必要はないということ。
まずは鏡を見て、「私は顔のどこを気にしているんだろう?」と考えてみてください。縦の長さなのか、横幅なのか、左右差なのか、おでこの広さなのか。それがわかれば、次に考えるのは「そこを強調したいのか、それとも補正したいのか」です。
 もし補正したいのであれば、気になる方向と反対の方向を強調するのがひとつの基本。面長なら横へ、丸顔なら縦へ。そうやって「似合う」を分解していくと、これまで感覚的だったヘアスタイル選びにも、ちゃんと理由が見えてきます。顔そのものを変えなくても、見え方は変えられます。

 ぜひ次に美容室へ行くときは、「なんとなく似合う髪型」ではなく、自分の顔の特徴をどう見せたいのかまで考えて、ヘアスタイルを選んでみてくださいね。

<文/池田曜央子>

【池田曜央子】
(いけだ・ようこ)メイク講師。骨格補正メイク考案。一般社団法人日本骨格バランス協会代表理事。
1977年生まれ、青山学院大学経済学部卒業。建築士だった38歳のころ、愛犬の事故死でうつ状態に陥り、糖質依存となり15kgの激太り。外見差別を受けたことをきっかけに、美容・ファッションなどを学び、メイク講師として活動を開始。輪郭と顔パーツを数値で分析、骨格や年齢による変化を補正し、好印象な美人に近づける独自の「骨格補正メイク」を考案。メイク講座やスキンケア講座などで1000名を超える女性を変身させる。43歳で-17kgのダイエットも成功させ、ミセスコンテストで特別賞受賞。著書『骨格補正メイク 顔の比率を描き変えて、一生美人!』(主婦の友社) Instagram:@ikeda.makeup ブログ
編集部おすすめ