「若いんだから、これくらいできるでしょ?」と頼られることはありませんか?

 今回は、義母の「セミが怖い」というお願いに応えたお嫁さんのエピソードをご紹介しましょう。

 井上波留さん(仮名・33歳)は、ある夏の午後、義母からの電話を受けました。


「『波留ちゃん、助けて! セミが家の中に入ってきたの! 怖くて部屋にいられないから、どうにかして』と義母が半泣き状態で、私もビックリしてしまって」

 波留さんは「セミなら、窓を開けておけば出ていくんじゃないですか?」とアドバイスしました。ところが義母は「怖いってお願いしているんだから、今すぐ来てよ!」と怒鳴ったそう。

「セミが怖い! 今すぐ来て」義母に呼びつけられ、電車で1時間...の画像はこちら >>
 波留さんの自宅から義母の家までは、電車を乗り継いで1時間近くかかります。それでも「怖い」と訴える義母を放っておくこともできず、仕方なく向かうことにしました。

「怖い!」と呼びつけたのに、義母は何もしない

「家に着くと、義母は玄関の外で汗だくで待っていて『波留ちゃん、早く! リビングよ!』と背中をグイグイ押されて」

 波留さんが「分かりました。でも私も虫は苦手なので……」と言っても、義母は「大丈夫よ、波留ちゃんは若いんだから!」と、まるで聞く耳を持ちません。

「仕方がないので、私はリビングのカーテンにしがみついているセミを、恐る恐る窓を開け、カーテンを少しずつ動かして外に誘導しようとしましたが、なかなか上手くいかなくて」

 その間も義母は「私はここから動かないから!」とリビングの扉からこっちをのぞいているだけ。

「私がおっかなびっくりしながらセミと格闘しているのに、義母は少しも手伝わずにずっと安全なところにいるんですよ。正直、だんだん腹が立ってきました」

セミを追い出した直後、まさかの追加注文

 それでも波留さんがなんとか誘導すると、セミはしばらく部屋の中を飛び回ったあと、ようやく窓の外へ出ていきました。

「私もやっと帰れるなとホッとしていたら……」

 義母が突然「ちょっと待って、波留ちゃん。まだ家の中に別のセミがいるかもしれないから、全部の部屋を確認してくれない?」と言い出したんだそう。

 さらに「あとベランダも。虫が落ちてないか見ておいて」と、まるで当然の仕事を頼むような態度。

「さすがに、ここまでされると我慢できなくて。
私は義母に『お義母さんが困っているから、私だって虫が苦手なのにセミを追い出すために来たんです。なのに感謝もしないで、全部の部屋の確認をしろなんて、私を無料の便利屋かなにかだと思っているんですか?』と静かに伝えました」

「昔はもっと優しかったのに」と義母が反論

 すると義母は、曇った表情で「波留ちゃんって、昔はもっと優しかったのに」とため息混じりに呟いたそう。

「私が『優しいから言われた通りに来ました。でも、優しいことと、何でも言うことを聞くことは違います』とハッキリ伝えたんですよ」

 ところが、その言葉を聞いた義母は突然、鬼のような表情になり「もういい! セミより波留ちゃんのほうが怖いわ! そんなに偉そうに言うなら、もう帰って!」と怒鳴りました。

 一瞬、波留さんは呆気にとられましたが、すぐに小さく息を吐き「分かりました。もう帰りますね」と言ってバッグを手に取り、そのまま玄関を出たそう。

「怖い嫁」くらいが、ちょうどいい?

「外に出たら急に笑いが込み上げてきて『セミより怖いって何?……こっちはわざわざ助けに来たのに』と思いつつ、私って一体何やっているんだろうとバカらしくなりましたね」

 それ以来、波留さんは義母と少し距離を取って付き合うようになりました。

「不思議なことに、それから『怖い! 助けて!』という電話がかかってくることは、ぱったりなくなりました。正直ホッとしています」

 助けを求めるときだけは「若いんだから」と嫁を頼り、助けてもらった後は、さらに仕事を押しつける……。そんな義母の身勝手な行動全てに付き合う必要はないと波留さんは改めて気づかされたそう。

「『セミより怖い』と言われた私ですが、これからは義母にとって“怖い嫁”ぐらいでちょうどいいのかもしれませんね」と微笑む波留さんなのでした。

「セミが怖い! 今すぐ来て」義母に呼びつけられ、電車で1時間かけて駆けつけたら…まさかの“追加注文”に絶句
※画像はイメージです

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。
好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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