SNSで羽振りよく稼いだ若手経営者が脱税で摘発された。むろん脱税は犯罪である。
稼ぐ者を罰する国に、まともな起業家は育たない。日本マクドナルド創業者・藤田田が約40年前に放った警告を、新装復刊『殺されない社長の心得』(ベストセラーズ)より抜粋して紹介する。
■ケチな奴には金は儲からない
大金持ちには浪費家はいない。逆にいえば、浪費しないからこそ、金持ちになったのである。
マクドナルドでは、メモ用紙などは広告の裏の白い部分を使っている。こういったことは、わが社だけではなく、どこの会社でもやっているはずである。
最近では、コンピューターのおかげで、メモ用紙には不便をしなくなった。コンピューターのデータで使わない物はたくさんある。
必要な金は、惜しまずに使うべきだが、ムダな物にまで、金を使う必要はない。いかに金がありあまっていたとしても、ムダな支出はすべきではない。
こう書くと、ケチのすすめを説いているようだが、私はケチな人間には金儲けはできないと思っている。
なぜなら、そんな人間は、義理も欠くし、金の使い方も知らない。ましてや投資する度胸もない。ただひたすら金をかき集め、囲いこむだけで終わってしまうからだ。金はふやさなければ意味がない。金儲けがしたかったら、ケチではなく、超合理主義に徹してほしい。
超合理的な金銭感覚をもって、有効な対象に投資し、積極的に進撃すべきなのだ。
4次元の世界は、3次元の世界に時間を加えたものだ、といわれている。
だから、4次元の思考で金儲けを考えるときに、時間はきわめて重要な意味をもってくる。金儲けは時間をかけなければならないのだ。
ボタンを押すだけで金は儲かるわけでもないし、ボタンを押しただけで成功するものでもない。宝クジを買って金持ちになる方法などという、インスタントに儲かる法は、存在しないのである。
金だって、積んでいかなければ、たまるはずはない。たとえば、金をためる場合も、マル優と特別マル優と郵便貯金の各300万円の枠を使うしか、利用法を知らないようではダメである。
財形貯蓄は500万円の枠がある。そのほかにも、一時払いの養老保険は500万円までなら事実上非課税になる。抵当証券も250万円までは結果として非課税になる。金投資口座も譲渡所得で実質的には約850万円まで非課税になる。そういった特典がある。
それらを拾いだして、金をこまかく分けて蓄積していくことが、金をためる秘訣である。
毎日、そういった蓄積を時間をかけてつづけていくということは、相当にめんどうなことである。
どこかで、蓄積をサボったり、使いたくなったりするものである。その怠慢さを許したり、誘惑に負ければ、そこで蓄積は終わり、金をためるという目的を達成することはできなくなる。
強い意志と克己精神の持ち主でなければ、なかなか蓄積をつづけるのは困難なのである。
時間をかけてダムに貯えた水を落下させれば大きな電力が得られるように、20年、30年と時間をかけて、最初に掲げた目的に近づくことが肝要である。
時間をかけずに性急に金儲けをしようとするからできないのだ。時間をかければ、ある程度の金をためることはだれにでもできることなのである。
■日本の税制では金持ちは育たない
ただ、日本では、現在の税制がつづくかぎり、大金持ちになれるチャンスは非常に少ない。累進課税があまりにもひどすぎるからだ。
10億円ぐらい儲けても、93パーセントは税金でもっていかれる仕組みになっている。
アメリカのレーガン大統領は、所得税率を15パーセント、25パーセント、35パーセントの3段階だけにすることを考えている。最高で35パーセント、それ以上はとらない、というのである。
最高で35パーセントしか所得税はとらないから、国民の皆さんは安心して大いに働いてください、というのであれば、国民は起業家精神を発揮して働く。ところが、働いて儲けたら、70パーセントも80パーセントも税金を徴収します、というのでは、働こうという気にならない。儲けたら、その分をごっそり税金にとられるのではむなしすぎる。
せめて、レーガンが考えているように、所得税率の最高は35パーセント程度におさえてくれないと、どんなに儲けてみたところで、金持ちにはなれない。
人間には、金を儲けて人生を楽しみたい、という基本的な欲望がある。その基本的な欲望をおさえこんでしまうような、現行の税制はまちがっている。
現行の所得税法は、私にいわせるなら、社会主義国向けのそれであり、共産主義国にふさわしいものである。少なくとも、資本主義国日本の現状には合っていない。
日本はアメリカと同じ資本主義国である、ということを忘れている人が多すぎるように思われる。
企業は悪だとか、金持ちは悪人である、といった誤った教育をする先生もいる。そういった宣伝活動をおこなう人がいる。そういった教育や活動を見ていると、日本は社会主義国家か、と錯覚しそうになる。
しかし、現実には、日本はけっして社会主義国家ではない。資本主義国家である。資本主義の国であれば、資本主義の国家らしく、国民に起業家精神を起こさせるようなうまみを与え、起業をもっと優先させ、金持ちができやすい税制を採用すべきなのだ。
大企業は大企業として存在すればいい。というのは、大企業はそれだけ世の中に貢献するからである。
だから、大きな企業を起こし、責任をもってその仕事を推進している人には、税制上の優遇措置を講じるくらいの配慮は必要である。そうしなければ、国民全体が役人みたいに働かなくなってしまう。資本主義国家にとっては、それがこわい。はやく手を打たなければ、日本も英国病に悩む、イギリスのようになってしまう。
よく、医者や弁護士の脱税が新聞に報道される。脱税はたしかに悪いことだが、93パーセントを税金にもっていかれては、知恵を働かせようとしないほうが不思議である。93パーセントを税金にもっていかれることに耐えている日本の国民は実に気の毒である。
35パーセントは国、65パーセントは国民というふうにすれば、脱税しようとする気を起こすものはいなくなるはずだ。
戦後、アメリカは、日本を財閥が力をもっていたかつての日本にしないために、金持ちのできない、異常なまでの高率累進課税を強制した。それをいまだに改めようとしないのは、日本の政治家の怠慢である。
政治家自身は高率の累進課税の対象にならないように、政治資金は税金の対象としない救済措置を講じているのだから、税金をふんだくられる国民の痛みなどわかるはずはない。
そろそろ国民が政治家に、アメリカ並みに最高で35パーセントにしてくれ、と要求をつきつける時期がきていると思う。
文:藤田田
《『殺されない社長の心得』より構成》
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