銀行の“チーズ金庫”で預かる約552億円分のパルミジャーノ。...の画像はこちら >>



 イタリアで愛される熟成ハードチーズの代表格、パルミジャーノ・レッジャーノが、「チーズを冷やし続けること」という予期せぬ気候変動問題に直面している。



 夏の猛暑により、酪農家への融資の担保として何十万個ものチーズ(ホール)が保管されている温度管理された倉庫で、エネルギーコストが押し上げられている状況だ。



 「クレデム」の名称で知られる銀行「クレディト・エミリアーノ」は、1953 年以来、熟成前のパルミジャーノ・レッジャーノを担保として預かり、融資を行う役割を担ってきた。パルミジャーノ・レッジャーノは出荷までに最低12 カ月、長ければ最長3 年間の熟成期間を要するため、小規模な酪農家はその間収入を得ることができない。そこで銀行が、将来価値の上がるチーズを巨大な専用倉庫で預かって熟成と管理を代行する代わりに、生産者へチーズ 1個の価値の60~80%を前払いで融資する仕組みとなっている。



 同銀行の子会社である「マガジーニ・ジェネラーリ・デッレ・タリアーテ」は、レッジョ・エミリアとモデナでこのチーズ金庫を運営しており、3億ユーロ(約552億 円)を優に超える価値を持つ50万個以上のチーズを保管している。



 しかし、極端な猛暑により、このシステムの維持費はますます高騰している状況だ。今年の夏のピーク時には、保管庫での1日あたりの電力消費量が約30 %増加し、冷却システムやボイラーのアップグレード、断熱材の増強、再生可能エネルギー発電の拡大を余儀なくされた。



 さらに、問題はそれよりずっと前、牛舎の中で始まっている。気温が40度を超えると、牛の摂食量が減り、横たわる時間が増えるため、牛乳の生産量が最大で10 %減少する。



 「パルミジャーノ・レッジャーノ協会」のニコラ・ベルティネッリ会長は、「猛暑は牛乳の品質と量の両方に影響を与える」と語る。



 このチーズは、地元で栽培された牧草や干し草を食べて育った牛の乳を使用し、5 つの県でのみ生産することが義務付けられている。そのため、生産者は干ばつや極端な天候による飼料への被害を特に受けやすくなっている。



 イタリアでは2025年に419万個のパルミジャーノ・レッジャーノが生産され、約40億ユーロ(約7360億円)の消費者売上を生み出した。



 こうした猛暑による財務的な影響が表面化するまでには時間がかかり、農場から製造業者、そして融資機関へとサプライチェーンを下っていく可能性が指摘されており、実際に、米ペンシルベニア大学のビジネススクール「ウォートン校」の労働経済学者である R・ジソン・パク氏は、上流工程での猛暑が「下流工程における企業の評価額に測定可能な影響を及ぼす」と述べている。



 チーズは最長で3年間保管される可能性があるため、猛暑の夏が来るたびに、消費者の手元に届くずっと前の段階からコストが上乗せされていくことになる。



文:BEST T!MES編集部

編集部おすすめ