時代とともに変化する教育の現場。特にAIとグローバリズムの進化が著しい現代において、子どもにどのように教育的アプローチをすればよいか悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
今回紹介する『世界の一流は「子ども」に何を教えているのか 自分の頭で考える人間の育ち方』は、「世界で通用する18歳」を育てるために親や教師は何をすべきかをテーマに書かれた一冊です。
アメリカ・ニュージャージー州プリンストンに30年以上暮らし、作家でジャーナリスト、プリンストン日本語学校高等部ディレクターとして、数多くの日本人・日系人高校生をアメリカの名門大学へ送り出してきた教育者でもある冷泉彰彦氏が、教育と子育ての「世界標準」についてわかりやすく伝えています。
現在、世界的に進んでいるのがAIによる業務改革です。AIの活用によって初級職の必要性が低下したことなどを背景に、アメリカでは大学新卒者の就職が非常に厳しい状況にあると説明されています。そのような中で、ひと握りの天才タイプに当てはまらない「第2グループ」の学生たちには、「専門性に加えて総合的な実行力を備えた人材」(本書より)が必要だと冷泉氏は述べています。
そもそも、アメリカの大学入試は、学力だけでなく「全人格を判定するもの」になっているといいます。学校の成績表に加え、部活動や課外活動、ボランティア経験などを記した履歴書のほか、面接やエッセイ、作品ポートフォリオなどの提出を求める大学も少なくありません。
さらに、本書によると、アメリカの大学が重視しているのが「文武両道の人材」です。「第2グループ」については、出願時点でスポーツ活動を継続していることが重要視されるケースがあると紹介されています。スポーツとともにアート活動も重視されるとのことで、いずれにしても学力だけではない総合的な力が問われていることがわかります。
本書では、このような学生を育てるために、世界標準の親や学校がどのような教育を実践しているのかについても紹介しています。学校の勉強だけでなく、お金の扱い方や自主性、生活管理に至るまで、具体例を交えながら解説しています。
日本でも総合型選抜入試が増えるなど、以前に比べて大学受験のスタイルには変化が見られます。一方で、反復訓練による正確性や記憶力を問う試験が現在も重視されていることは確かです。
冷泉氏は、思春期という人生の貴重な時間を、「学問も、ほかの課外活動も、すべてが将来の進路を考え、そのための情報収集とスキル獲得のために全部が有機的に結びついているようにする」(本書より)ことが重要だと説いています。
日本の従来の教育方式だけではなく、子どもの成長力に見合った教育を受けさせたい、そして将来的にはグローバル企業や国際機関で活躍する人材へ育ってほしい――そんな願いを持つ人にとって、本書は多くの示唆を与えてくれる一冊といえるでしょう。
[文・鷺ノ宮やよい]