「集中」に関するさまざまな研究と文献に、共通するメッセージがあります。
それはある意味警告ともいえますが、「現代の私たちは、以前よりも集中できなくなっている」です。
もちろんこれは、昔の自分と比べての結果でもありますし、先の時代と比べた人類規模での結果でもあります。インターネットがない時代に幼少期を送った人なら、我が身を振り返って、集中力や記憶力が低下していることを実感されるでしょう。
マルチタスクが得意だという人たちと、マルチタスクが苦手で一つのことしかできないという人たちの、集中状態を分析した実験です。その内容は、単純作業を一定時間行うというものでしたが、気が散るような仕掛けがいくつも用意してありました。
結果としては、マルチタスクが苦手な人たちのほうが、集中が持続して、単純な作業をミスなく行えたそうです。一方で、マルチタスクが得意だとする人たちは、一つひとつの気が散るサインに反応し続け、結果として注意力が落ちてしまったようです。
これらのサインには、重要なことから無意味なことまでさまざまな種類がありましたが、マルチタスク得意班は、その重要性に関わらず、あらゆるサインに対して反応してしまったのでした。
この実験はさらに続きがあります。与えられるタスクが次々と変わっていくという実験も行ったのです。つまり、「マルチタスク能力」を測るものなのですが、こちらのテストでも、日々マルチタスクを「実践」している人たちのほうが、それができないという人たちよりも成績が悪かったそうです。
この結果からわかることがあります。
マルチタスクが日常化していくと、集中力が劣化してしまうということです。
意識があっちこっちに
一人の人間が一日にこなせる仕事量には、当然、限界があります。「限界」という表現がそのままマイナスになるのではないことに要注意です。
「限界」は私たちが生身の存在であり、機械ではないことを証明するものです。
しかし、仕事量が増え、あっちへもこっちへもとどんどん広がっていくと、必然的に意識もあっちへこっちへと向いてしまうようになります。
私たちの「意識」は、「タスクの重要度」ではなく、「即座に反応する」ことに注意を注いでしまうようになります。こうして、限界を踏み越えてしまい、意識が不安定になり、結果的に心が不安定になってしまいます。
しかし、今やマルチタスクを逃れる仕事環境はあるのでしょうか?
多くのビジネスパーソンは、パソコンとスマートフォンを仕事の必須アイテムにしているでしょう。それがなくても成り立つ仕事のほうが少ないはずです。
会社内でどのような立場だろうが、どのようなミッションに取り組んでいようが、パソコンがあることで可能になったことはあれもこれも、全部自分でやらなければなりません。
「私は、マルチタスクはしません」と社内で豪語できるような人は、はてさて……いないでしょう。
マインドフルネスの効果
だからこそ、マインドフルネスが今の時代の要請にピタリとはまっているのです。マルチタスクからは逃れられない。
マインドフルネスに求められる効果には2つの方向性があります。
❶「注意のコントロール」
❷「気づき」
❶「注意のコントロール」とは「注意を理解し、それを自らの力でコントロールできるようになること」です。
❷「気づき」とは、「注意を向けたものに対する五感や内受容感覚、浮かんでくる思考や感情に気づいていく」ということです。
マインドフルネスが目指す理想の状態は、「意識を向けたものによる気づきで心をいっぱいにする」ことなのです。
あれもこれもこなすべきタスクや、考えるべき案件がいっぱいあったとしても、今、ここ、一つのことに集中するための「お守り」のような、日常のルーティンとして取り入れやすい身近な方法なのです。
『ZEN、集中、マインドフルネス』(著:大竹 稽)より
<併せて読みたい>
情報過多、マルチタスク時代を生きるための「気づく力」
『ZEN,集中、マインドフルネス』
(クロスメディア・パブリッシング)
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