2024年、ジャパニーズウイスキー市場では「山崎」や「白州」を中心に価格が急騰し、一部では“ウイスキーバブル”とも呼ばれる状況が生まれた。あの熱狂から約2年が経過。
現在の市場の様子と、ジャパニーズウイスキーの今後について、専門家に話をきいた。

2024年に起こったジャパニーズウイスキーバブルの正体

世界から高い評価を得るジャパニーズウイスキーが、嗜好品だけでなく投資対象として注目され始めてから早数年。

定番銘柄と言えるノンヴィンテージのサントリー「山崎」は、2018年頃は約5,000円で買取されていたが徐々に右肩上がりとなり、2023年時点で倍増となる1万円程度にまで高騰。さらに、2024年4月には一気に1万2,000円ほどの値をつける。こうした状況は他の銘柄でも見られ、まさに“ウイスキーバブル”と言える状態になったわけだが、当時の状況を茶山さんは次のように回顧する。

「2024年4月にサントリーの一斉値上げがありました。それまでも100円、200円程度の値上げはありましたが、その時は結構大きめで、銘柄によっては1,000円、2,000円の値上げでした。すると、今は1万円のものが、明らかに1万2,000円になります。だったら、安いうちに買いだめをしておいて、後でまとめて売却しようという一種のバイアスがかかり、在庫を抱える人たちが激増しました。

それが4月の値上げ前のことで、これによってジャパニーズウイスキーの価格がそこでグンっと上がりました。さらに、ウイスキーの高騰がニュースなどで報じられると、それを知った一般の方もウイスキーを売りに来るということが当時は起こっていました」

ジャパニーズウイスキーの急激な高騰は2か月ほど続いたが、その後、急速に落ち着きを見せる。これについて茶山さんは、「『山崎』のノンヴィンテージで言えば、1万円ほどだった買取価格が突如として1万2,000円の値をつける、異常な状態だったわけです。
それが2、3か月経って、1万円に戻ったのは、ある意味で適正価格に戻ったと言えます」と解説した。

一方で、ジャパニーズウイスキーには今も品薄や高騰のイメージを持つ人も多いだろう。実際のところ、こうしたイメージは正しいのか。

「一時的に極端な時期があり、そのことをまだ皆さんが覚えていることが今も品薄や高騰のイメージの正体だと思います。ただし、相場自体は2024年7月以降もじわじわとは上がっています。品薄については、ウイスキーという商品の性質上、販売量を増やそうと思ってもすぐに増やせるものではありません。メーカーも増産して出荷量を増やしてはいるらしいですが、注目が集まって需要が増えた分をカバーするまでにはまだ至っていないのが現状なのではないでしょうか」
なぜジャパニーズウイスキーは投資対象として注目されたのか

酒の中でも資産価値としての注目度が一気に上がったジャパニーズウイスキー。そもそも日本酒やワインといったその他の酒を差し置いて、資産性を確立できたのはなぜだったのだろうか。

「2015年に香港で開催されたオンラインオークションで、かつて長野県にあった蒸留所が作った『軽井沢1960年』というウイスキーが1,400万円を超える価格で落札されたことがニュースになりました。このほかにもジャパニーズウイスキーが高値で取引されることが続き、いくつかの銘柄が海外からも認められるようになったのです。その頃から海外需要が増え、日本で手に入りづらくなります。すると、日本人も欲しくなるので、より手に入りづらい状況が生まれました」

「また、2014年にはニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝をモデルに描いた朝ドラ『マッサン』が放送され、ジャパニーズウイスキーの知名度を引き上げました。
こうしたことが積み重なって、資産価値や投資対象となる下地が出来上がっていったのだと思います」

そんなジャパニーズウイスキーだが、現在までに多く買取に持ち込まれたのは「山崎」「白州」「響」といった銘柄だ。これらは高い需要をキープしている一方、新しく出た銘柄も着実に地盤を固めているという。

「2018年9月にサントリーの『響 17年』という銘柄が、原酒不足から販売休止となりました。それに変わって発売されたのが『響 ブレンダーチョイス』という銘柄で、こちらは結構人気です。2020年以降に出た銘柄では『碧』などは買取依頼も多く、買われてもいるので、比較的新しい銘柄の需要も割と高い状況だと言えます」
ジャパニーズウイスキーの未来をプロはどう見る?

バブルを経たジャパニーズウイスキーの今後をどのように分析しているかを尋ねると、茶山さんからは次のような回答が得られた。

「現在は、2018年頃から高まる需要に対して、ちゃんと供給できるように、メーカーも体制を整えている状況だと思われます。再び価格が高騰する可能性はもちろんありますが、2024年のような極端な状況は起きづらいのかなと思います。ベース価格がじわじわ上がる状況は続いていて、すでにジャパニーズウイスキーが世界からも認められている状況を鑑みれば、今1万円のものがいきなり2万円になるというようなことは、特に若い銘柄ではさすがにないのではないでしょうか。もちろん、『山崎12年』や『山崎18年』のようにすぐ準備できない銘柄が、何かのきっかけで高騰する可能性はあるとは思います」

また「MY CELLAR」ブランドで店頭販売も行っているJOYLABでは、ある傾向を感じているという。

「以前は海外のお客様というと欧米や中国の富裕層が中心でしたが、現在はアジアの他の国々にも裾野が広がっていると感じます。なかでも、最近は名古屋や福岡といった地方では韓国の方が購入されていくケースが目立ちますね」

ジャパニーズウイスキー需要を、海外の方も支えているのは間違いなさそうだ。こうした傾向は今後も続きそうなのか。


「基本的には続いていくと捉えていますが、トランプ関税のように税額が急激に変わったり、国際情勢に巻き込まれて需要が減少したりする可能性はゼロではありません。ですが、過去を振り返ってもそこまでの自体は起こっていないので、仮に発生したとしてもあくまでも一時的なもので、ジャパニーズウイスキー需要は今後もあり続けると思っています」
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