米モトローラ・モビリティや韓国サムスン電子が、国内向けに折りたたみスマートフォンの新機種を相次いで発表しています。今後、ほかのメーカーからも新機種が投入されるとみられ、普及に弾みがついたかに見える折りたたみスマートフォンですが、消費者がそれらを積極的に選べない事態も同時に起きています。

モトローラ、サムスンが新機軸の折りたたみスマホを投入

国内では参入するメーカーがなかなか増えず、普及が進まなかった折りたたみスマートフォン。ですが、2026年は新規参入、そして新機軸のモデルを打ち出すメーカーが増え、バリエーションが急拡大しています。

ここ最近の動向を見ても、その傾向は明確です。例えば「razr」シリーズで縦折りタイプの折りたたみスマートフォンを継続的に投入している米モトローラ・モビリティは、2026年7月15日に新機種「motorola razr fold」を日本市場へ投入しています。

これは、2026年1月に海外発表された新しい折りたたみスマートフォンの1つですが、大きな特徴は同社初となる横折りタイプのスマートフォンだということ。これまでのrazrシリーズは、いずれも縦折りタイプのみでしたが、motorola razr foldは閉じた状態で約6.6インチ、横に開いて約8.1インチの大画面が利用できる横折りタイプのモデルとなっているのです。

各社が最高クラスの性能を搭載する横折りタイプのモデルということもあって、motorola razr foldの性能も非常に高く、チップセットに米クアルコム製の最上位となる「Snapdragon 8 Gen 5」を搭載し、RAMは12GB。バッテリーも6000mAhと大きな容量を採用しています。背面カメラも広角、超広角、望遠の3眼構成で、カメラの画質などを比較する独立系機関の「DXOMARK」で、発売時点では横折りタイプの折りたたみスマートフォンとしては世界最高の評価を獲得するなど、力が入れられているようです。

また、2026年7月22日に新機種を発表した韓国サムスン電子は、従来の横折りタイプの新機種「Galaxy Z Fold8 Ultra」、縦折りタイプの新機種「Galaxy Z Flip8」に加え、新機軸の折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Fold8」の投入を発表しています。

Galaxy Z Fold8は「Fold」と付く通り横折りタイプのモデルなのですが、従来の「Galaxy Z Fold」シリーズと比べて大きく変化しているのが画面比率です。実際、Galaxy Z Fold8の縦横の画面比率は、閉じた状態で10:16、閉じた状態で4:3という、これまでの折りたたみスマートフォンにはない比率が採用され、形状にも違いが生じています。


このような比率を採用したのには、コンテンツをより大画面で見やすくする狙いがあるようです。一般的なバータイプのスマートフォンは、横にした状態での画面比率が16:9であることが多く、動画などのコンテンツはその比率に合わせて作られていることが多いのですが、横折りタイプのスマートフォンでそれらを視聴すると画面比率がうまく合わず、上下に黒い帯が多く発生してしまい、没入感に欠けることが課題となっていました。

そこでGalaxy Z Fold8は、横折りタイプの大画面を、コンテンツを楽しむことに特化して設計。開いた状態でも16:9に近い比率を採用し、黒い帯が発生するスペースを小さくしてコンテンツを楽しみやすくすることを重視したわけです。
価格高騰が著しい折りたたみスマホ、40万円に迫る製品も

これら2社の新機軸モデル以外にも、2026年に発売された折りたたみスマートフォンは新しい取り組みが多く見られます。実際、2026年4月に発売された中国オッポの「OPPO Find N6」は、同社として国内初投入となる折りたたみスマートフォン。折りたたみスマートフォンの課題となっている折り目部分の“しわ”が限りなく目立たない構造などで注目を集めました。

また、厳密には2025年と2026年をまたいでの発売となるのですが、ZTEも横折りタイプの「nubia Fold」を2025年12月に、縦折りタイプの「nubia Flip 3」を2026年1月に、それぞれソフトバンクの「ワイモバイル」ブランドから発売しています。いずれもZTEらしい低価格が特徴ですが、なかでもnubia Foldは、同社として国内初投入となる横折りタイプのスマートフォンということもあって注目されました。

これだけ各社が折りたたみスマートフォン、しかも横折りタイプを中心に、従来各社が投入してこなかったモデルを国内で相次いで投入しているのには、米アップルの存在が大きいと見られています。かねて折りたたみスマートフォンへの参入が噂されていたアップルですが、2026年に入り同社がいよいよ製品を投入するのでは、という憶測報道が増えているだけに、アップルの参入を見越して各社が先手を打ち、新機軸のモデルで消費者の関心を高めようとしているのではないでしょうか。

さらに今後を見据えるならば、アップルだけでなく、横折りタイプの「Pixel Fold」シリーズを毎年夏ごろに投入する傾向が強い米グーグルの動きも注目されます。
国内でも急速に端末数が増えることで、折りたたみスマートフォンを巡る競争は盛り上がることが期待されるのですが、その盛り上がりに水を差しているのが価格高騰です。

折りたたみスマートフォンはその構造上、バータイプのスマートフォンより高額になりやすく、普及を図るうえでは端末の選択肢の少なさに加え、価格の高さも大きな課題となっていました。ですが、昨今の円安とメモリ高騰によって、折りたたみスマートフォンの価格は下がるどころか、より一層の価格高騰が進んでしまっています。

実際、各社のオンラインショップでの価格を見ると、motorola razr foldは299,800円、Galaxy Z Fold8は269,880円から。Galaxy Z Fold8 Ultraでは最も高額なモデルで386,780円と、もはや40万円に到達しようかという状況です。いずれも一般消費者が手の届く価格とはとても言い難い水準に達していることが分かるでしょう。

せっかく各社から製品が出揃い、競争が加速するタイミングで、円安とメモリー高騰の影響が直撃してしまったことは、折りたたみスマートフォンの普及を見据えるうえでは非常にタイミングが悪いと言わざるを得ません。この価格高騰が収まらない限り、日本で折りたたみスマートフォンはごく一部の人に向けた嗜好品に留まり、広く浸透することはないのではないか、というのが筆者の正直な見方です。

佐野正弘 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。 この著者の記事一覧はこちら
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