夏と言えば青春。

アツい卓が立った。


Mリーグが出来たときから8年間、ずっとこの舞台で戦ってきた4選手が揃ったのだ。

アプローチは違えど、数十年間ずっと麻雀業界の先頭を走り続けてきた、この4人の対局。

しかも、Mリーグでは絶対に実現しない、萩原と瀬戸熊の同チーム「雷電対決」まで同時に叶っている。

まさにドリームマッチだ。

やはりというか、勝負のゆくえは非常にもつれた。

2試合で、上位2人が勝ち抜けとなるMトーナメント。

2戦目の南3局。

初戦4着の多井から、序盤にメンホンチートイツのダイナマイトリーチがかかる。

そこへ、

萩原が追いついた!

挟まれて困ったのが、

1戦目トップの亜樹だった。

萩原も多井も3萬を切っており、場に3萬は3枚見え。

一番安全に見える、

2萬が打ち出された!

「ロン」

萩原のアガリだ!

メンタンピンドラ、親の12000!

これで萩原は一気に勝ち上がりへと近づく。

だが、めくり合いに負けた多井も黙ってはいない。


南3局1本場に、メンタンピンツモ赤の2100-4100を決めて、オーラスに望みを繋ぐ。

全員に勝ち上がり条件が残る、凄まじいオーラスになった。

ざっと条件を見ていこう。

多井と萩原はトップをとれば通過。多井はハネマン以上のツモがメインの狙いだ。萩原は700-1300のツモでいけるので、打点もそこまで必要ではない。

瀬戸熊は1戦目が2着なので、今の並びだと自身がこの半荘でトップから2着に落ちても通過できる。現状、かなり有利なポジションである。

亜樹は親番なので、アガリは連荘となる。瀬戸熊がアガってくれれば基本的には通過だが、仮に亜樹がノーテンで流局した際にはテンパイ料で「萩原が瀬戸熊をまくるパターン以外は亜樹の通過」といったところだ。

各々、条件を確認して、南4局が始まった。

「リーチ」

多井が、ハネマンツモ確定のリーチを放った!

役ナシの状態でテンパイしていた瀬戸熊は、放銃できないのでオリにまわる。


次の手番で萩原は、

役牌の南がアンコの、広いイーシャンテンになった!

萩原は、

3萬を打ち抜いていく!

ガチンコ勝負だ。

その刹那、

「ツモ」

アガったのは、

役牌を鳴いていた亜樹だった!

発ドラ赤で2000オール!

亜樹の連荘だ。

多井、萩原はトップをまくればいい、という条件は変わらない。

南4局1本場は、

「ロン」

「12000は12300」

またもや親番の亜樹がアガリを決めていく!

南ドラ赤赤の12300。

ここで放銃してしまった多井は、敗退が濃厚となった。

条件が変わったので、また整理しよう。

難しいなと思う方もいらっしゃるだろうが、これがトーナメントの醍醐味であり、勝ち上がりを目指した「条件戦」の面白いところでもある。

多井は役満ツモ条件。

先ほどまで安泰だった瀬戸熊は、1戦目トップの亜樹が素点を持った3着へと浮上したことによって、ギリギリのところへ追いやられた。

萩原がトップをとると、瀬戸熊はトータル3着となって敗退してしまう。

萩原の条件は、500-1000以上。

2本場になったことで、500-1000は700-1200のツモアガリでも瀬戸熊を逆転できる。
条件としては、かなり軽い。

亜樹はもう、よほどのことがない限り、親を流して終了だ。瀬戸熊や萩原に放銃してもよい。

要は、

「雷電二人が勝ち上がりを懸けた一局」となったのだ。

だからこの南4筒2本場、瀬戸熊は、

「チー」

「チー」

早々に2つ副露を入れて、最序盤からアクセル全開で進めていった。

瀬戸熊の上家に座っている多井が、条件的に絞れないのも大きい。

この瀬戸熊の動きを見て、

「チー」

萩原も仕掛けた!

ん…チー…??

なんと萩原は、この手格好からタンヤオに向かったのだ!!

普段のMリーグではまず見ることのない、萩原の遠い鳴きだ。

こうしないと、先んじて仕掛けている瀬戸熊に追いつけないと考えたのであろう。

門前進行では到底間に合わないので、タンヤオをつけて動いていくのは、いい判断だと感じる。

ゴールは遠く、暗い道の先にほのかな明かりが見えるだけ。

だがそれでも、萩原は果てしない闇の向こうへ手を伸ばした。

「チー」

萩原は、さらなる鳴きにも成功。


7索をカンチャンで鳴き、2メンツ目を完成させていく。ここは打東。

さらには、

2筒を引いた!

あの途方もなく遠い仕掛けが、泥臭い喰いタンが、中盤過ぎにイーシャンテンとなったのだ。

だが、手が進んだのは萩原だけではない。

次の巡目に、

ライバルの瀬戸熊が、浮いている3索にくっつけて、タンヤオのテンパイを入れた!

余った6筒が河に放たれる。

この6筒は、

「チー」

萩原の欲しい牌だ!

手で見えないが、6筒を赤57筒でチーをして、萩原は23筒とターツで持った4筒待ちとなった。

萩原は1筒を切っているのでフリテンだが、なんと4筒はこの時点で3枚も山にいた。

瀬戸熊の2-8索待ちも3枚。

ファンの方にはたまらない、黄色のユニフォームを着た二人の火花散る攻防。

しかし、勝者はどちらか一人。

いつまでも見ていたいと思えた、このレジェンドたちの共演は、

「ツモ」

瀬戸熊の2索ツモで幕を閉じた。

機敏に動いて、アガリを射止めた瀬戸熊がトップ。


萩原は、

悔しそうな表情で、瀬戸熊のアガリ形を見つめていた。

だが、試合が終わればノーサイド。

インタビューでは、

柔らかな笑顔を浮かべていた萩原。

軽妙な語り口で、

対局者を笑わせてもいた。

まるで、学校祭を思わせるような場の雰囲気。

40代、50代になっても、若者のように青春を謳歌できるのだ。

「麻雀キャリアの中で、一生忘れない一日になった」

と語っていた萩原。

やはり、麻雀というゲームは、

アツくて最高に「面白い」。

(C)Mリーグ (C)AbemaTV,Inc.

ゆうせー ゆうせー 麻雀戦術研究家。福井県出身。京大法学部卒。Mリーグの観戦記者歴8年。
オンライン麻雀「天鳳」では全国ランキング1位。「雀魂」では4人打ち最高位の魂天に到達。最近は、YouTubeでの麻雀講義や実況プレイ、戦術note執筆、そして牌譜添削指導に力を入れている。元Mリーガー朝倉康心プロの実兄。 好きなアーティストは吉澤嘉代子。 この著者の記事一覧はこちら
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