アップルが、最新のAppleシリコン「M6」「M5 Ultra」、およびそれぞれのチップを搭載する新しいデスクトップ型Mac「Mac mini」「Mac Studio」を発表しました。いずれも8月25日から予約注文を開始し、9月22日に発売します。


Mac miniの新モデルは2種類。価格は、M6搭載Mac miniが149,800円から。現行のM4搭載モデルから15,800円値上がりしています。上位のM5 Pro搭載モデルは299,800円からで、こちらは現行のM4 Pro搭載モデルから2万円の値上げです。

Mac Studioにも2つの新モデルがあります。価格は、M5 Max搭載モデルが419,800円から。こちらは、現行のM4 Maxモデルから価格を据え置きました。新たに加わったM5 Ultra搭載モデルは949,800円から。現行のM3 Ultraモデルから5万円上昇しています。

オプションの選択肢になる512GBのユニファイドメモリを搭載するMac Studioは、少し遅れて10月下旬に発売予定です。

今回のMac miniとMac Studioには、単純なCPU、GPUの性能の向上だけではない共通のテーマがあります。それが「オンデバイスAI」です。


アップルによると、Macのビジネスが直近の2026年会計年度 第3四半期の業績で30%近い成長を記録した背景のひとつに、オンデバイスAIへの関心の高まりがあり、ユーザーの期待に応えてきた中核のMac製品がMac miniとMac Studioだといいます。
初の2nm世代「M6」と最強の「M5 Ultra」

Mac miniが搭載するM6は、Appleシリコンとして初めて2nmプロセスルールを採用しました。トランジスタの集積密度と電力効率を高め、チップのあらゆるコンピュートブロックの強化を図っています。

CPUは、Apple Mシリーズのメインストリーム向けチップ(ProやMax、Ultraではない)として初の12コア構成としています。その内訳もまた特徴的で、CPUの中で最も高いシングルスレッド性能を担う「スーパーコア」は2基、ほかに4基のパフォーマンスコアと6基の高効率コアという、3種類のCPUコアを組み合わせています。AppleシリコンのCPUにスーパーコアを採用するアーキテクチャーは、今年3月に発表されたM5 ProとM5 Maxに始まっています。

M6は、M5と比べてマルチスレッド性能が最大1.2倍に向上。M1比では最大2.4倍にも高まります。

GPUも、M5より2つ多い12コアに増え、各GPUコアにAI演算を高速化するNeural Acceleratorを搭載しました。AI向けのピークGPUコンピュート性能は、M5比で約30%向上。グラフィックス処理では、ジオメトリ性能が50%上がっています。

もうひとつの大きな進化が「デュアル16コアNeural Engine」です。
合計32コアとなるNeural Engineを、Apple Mシリーズとして初めてひとつのダイに搭載しています。

M5 Ultraも合計32コアのNeural Engineを備えますが、その仕組みは異なります。アップルによると、M5 Ultraでは2基のNeural Engineがそれぞれ独立して動作するのに対し、M6では同一チップ上で相互接続され、より大きなモデルを高速に処理するため、2基が協調動作するところがユニークであるといいます。

M6は、最大32GBのユニファイドメモリをサポート。帯域幅は最大170GB/sと、M5の153GB/sから約11%、M1の68GB/sからは約2.5倍に拡大しています。

もうひとつの新しいチップである「M5 Ultra」は、アップル史上最もパワフルなAppleシリコンです。デュアルダイ構成のM5 Maxを2基、次世代のUltraFusionで接続した初の「クアッドダイ」構成を大きな特徴としています。

最大36コアのCPU、80コアのGPUに加え、最大512GBのユニファイドメモリを搭載できます。メモリ帯域幅は、M3 Ultraの約819GB/sから約50%増の1.2TB/sに拡大。数千億パラメータ規模の巨大なLLMを、完全にオンデバイスで動かす用途も視野に入れています。
デスクサイドで新たな用途を提案するMac mini

新しいMac miniは、ミニマルなデザインと、約5インチ(約12.7センチ)四方のコンパクトな筐体を継承しながら、M6またはM5 Proを搭載します。

M6モデルはM4搭載Mac mini比で、AI性能が最大4倍、グラフィックス性能が最大2倍、CPU性能は最大40%向上しています。
ストレージ性能も最大2倍になりました。標準ユニファイドメモリは16GBで、カスタムオーダーにより最大32GBまで選べます。

通信機能も強化され、Apple N1チップによりWi-Fi 7とBluetooth 6に対応します。イーサーネットは、高速な2.5ギガビットが標準となり、オプションで10ギガビットに変更ができます。

アップルはMac miniについて、初めてMacを使うユーザーから、複数台をネットワークで接続して並列処理させる「Mac miniクラスター」のような使い方もカバーする汎用性の高いMacだと説明します。

アップルは今回、Mac miniの新たなユーザー像も打ち出しています。M6搭載Mac miniは、MacBookのそばに設置し、AIエージェントを常時稼働させる「Always-On デスクサイドコンピュータ」としても有力な選択肢になるといいます。メールやドキュメント作成などの日常的な作業はMacBookでこなしながら、ローカルで実行する負荷の大きなAIワークロードはMac miniに任せるという考え方です。据え置き型のMac miniであれば、MacBookの利用状況に左右されず、AIエージェントの実行環境を常時維持できます。

さらに、大規模なLLMをローカルで動かしたいユーザーや、アニメーション、映像制作など負荷の高い用途にはM5 Proチップを搭載するMac miniの選択肢があります。最大18コアCPU、最大20コアGPU、最大64GBのユニファイドメモリを搭載でき、Thunderbolt 5にも対応します。
大きなAIモデルもローカルで動かせるMac Studio

アップルは、Mac Studioを「究極のプロ向けデスクトップ」として位置付けています。
従来からミュージシャン、デザイナー、映像制作者などのクリエイターがおもなユーザーでしたが、大容量ユニファイドメモリを活かしたAIコンピューティングも、今回さらに重要な用途となりました。

Mac Studioは、M5 MaxまたはM5 UltraのAppleシリコンが選択できます。

M5 Maxモデルは18コアCPU、最大40コアGPU、最大128GBのユニファイドメモリを搭載可能です。GPU各コアのNeural Acceleratorにより、AIタスクは従来比で最大約4倍も高速化。長いコンテクストを持つLLMのプロンプト処理にも効果を発揮します。

さらにM5 Ultraモデルなら、ユニファイドメモリを最大512GBまで拡張できるので、膨大なサイズのAIモデルをローカルで扱えるとアップルは主張しています。

Thunderbolt 5とRDMA(Remote Direct Memory Access)を利用して複数のMac Studioをクラスタ化することも可能です。4台をつないだ環境では、単体のMac Studio比で分散AI推論を最大3倍高速化できるといいます。アップルは、イーサネット接続時には一般にミリ秒単位となるレイテンシが、RDMA-over-Thunderboltではマイクロ秒単位に短くなることから、レイテンシを約100分の1に短縮できる規模の改善が見込めると説明しています。
AI時代は「速いMac」の意味が変わる

M1チップが登場した当時、Appleシリコンの革新性を象徴した指標のひとつは「Performance per Watt:エネルギー消費効率」でした。高性能なMacをノートブックのモデルでも静かに長時間、パフォーマンスの低下を抑えながら動かせる。それまでのMacとは明確に異なる体験価値でした。


M6とM5 Ultraを見ていると、アップルがAIワークロードの時代に合わせ、Macの性能を測る新たな物差しを加えたことが分かります。CPUやGPUを何コア搭載しているか、あるいは演算性能が何倍に向上したかという従来の指標だけでなく、どれほど大規模なAIモデルをユニファイドメモリ上に展開し、クラウドに頼らずローカルで高速に実行できるかという視点です。M6のデュアルNeural EngineやGPUのNeural Accelerator、M5 Ultraが対応する最大512GBのユニファイドメモリ、さらに複数のMac Studioを束ねるクラスタリングまで、一連の進化はより大規模なAI処理をMacのローカル環境で完結させるという同じ方向を目指しているように見えます。

AI時代のMacでは「速く快適なコンピュータ」の意味そのものが少しずつ変わり始めているのかもしれません。今度のMac miniとMac Studioは、その変化を最も分かりやすく示す新基準になりそうです。

著者 : 山本敦 やまもとあつし ジャーナリスト兼ライター。オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。独ベルリンで開催されるエレクトロニクスショー「IFA」を毎年取材してきたことから、特に欧州のスマート家電やIoT関連の最新事情に精通。オーディオ・ビジュアル分野にも造詣が深く、ハイレゾから音楽配信、4KやVODまで幅広くカバー。堪能な英語と仏語を生かし、国内から海外までイベントの取材、開発者へのインタビューを数多くこなす。 この著者の記事一覧はこちら
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