原材料費や人件費の上昇を受け、外食でも値上げが相次ぐなか、ゆで太郎は全体を値上げした際にも、主力の「かき揚げそば」だけは価格を下げたといいます。なぜ、一番売れる商品をあえて安くしたのでしょうか。
『ゆで太郎の儲かる仕組み - 22年連続黒字を支えるがっちり経営術 -』(池田智昭/ワニブックス)から抜粋してご紹介します。
主力商品だけは値上げの波に抗う
ゆで太郎の温かいそばの主力は、やはりかき揚げそばです。
立ち食いそばから町のそば屋へと進化させる中で、唯一そのまま受け継いだ財産が、このかき揚げでした。
だから私たちは、全体を値上げした時でも、かき揚げそばだけは価格を下げました。しかも現在は、かき揚げにほうれん草まで付いています。
原材料費も人件費も上がる中で、なぜ一番売れる商品だけ値下げしたのか。理由は、この商品が利益を生む商品ではなく、「入口」になる商品だからです。
野菜だけのかき揚げは、もともと高価格帯にはしにくい商品です。素材の単価が比較的低いため、企業努力によって価格を抑えやすい。だから私たちは、この商品に「価格の入口」という役割を持たせています。
一方で、「ほぼ海老」のように、むき海老を10個以上使ったプレミアムなかき揚げもあります。入口は安く、上位商品ではしっかり価値を提供する。
価格帯の両端を用意することで、お客様はその日の気分や財布事情に合わせて選ぶことができます。
もちろん、美味しさにも妥協はありません。どこのそばチェーンでも、かき揚げは主力商品です。その中で差別化できるのは、店内調理です。
ゆで太郎では、店で野菜を切り、一つ一つ揚げています。日清オイリオさんやニップンさんにも協力いただき、天ぷら講習会を行うなど、技術教育にも力を入れています。工場で揚げたものを温めるだけでは、この味は出せません。
食べ歩きを続けている私自身も、「うちのかき揚げは本当に美味しい」と胸を張って言えます。価格を上げなければ利益が出ない時代だから、すべての商品を一律に値上げするのは簡単です。
しかし、それでは毎日利用してくださるお客様の心理的なハードルまで上がってしまいます。
毎日外食する方ほど、数十円の違いに敏感です。だから私たちは、入口になる商品だけは守る。
値上げと値下げを同時に行うという判断は、一品ごとの採算だけを見ていてはできません。かき揚げそばが価格体系全体の中でどんな役割を担っているか。
そこまで考えて価格設定することが、長く愛される店づくりにつながるのです。
まとめ
看板商品は利益より、来店理由を守る
『ゆで太郎の儲かる仕組み - 22年連続黒字を支えるがっちり経営術 -』(池田智昭/ワニブックス)
「駅前一等地には出店しない」「職人は育てない」「薄利多売にも頼らない」外食産業の常識を次々と覆し、全国200店舗超へと成長した「ゆで太郎」。その成功の裏には、競争しない立地戦略、職人技を分解して誰でも再現できる仕組み化、利益率より来店頻度を重視する価格設計があった。本書では、22年連続黒字を支えた経営の考え方を初公開。人手不足時代の組織づくり、フランチャイズ運営、商品開発、価格戦略、外国人雇用まで、「再現性のある経営」の本質を余すことなく明かす。外食業はもちろん、あらゆる業種の経営者・管理職に役立つ一冊。











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