打席内で迷うような仕草が見られなくなった大谷(C)Getty Images

 わずか半月ほど前、「打者・大谷」は打てずにもがいていた。

 防御率ゼロ点台を維持し、サイ・ヤング賞の獲得に対する期待も膨らんだ投手としての安定感と反比例するように、大谷翔平の打球はどうにも上がらなかった。

実際、3月26日の開幕から約1か月は、打率.273、6本塁打、出塁率.406、長打率.491、OPS.897とまずまずの成績だったが、5月に入ってからガクッと低迷。

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 今季初めての休養日となった現地時間5月14日まで大谷の月間スタッツは、打率.150、1本塁打、出塁率.261、長打率.250、OPS.511と低調なまま。本来の調子が影を潜め、さすがのデーブ・ロバーツ監督も「打席の質が継続的に落ちてきた」と案じていた。

 同時期には、パワー系のスタッツも軒並み落ち込んだ。95マイル(約152.8キロ)以上の打球割合を示すハードヒット率(47.5%)も3年間(54.2%→60.1%→58.7%)と比べると極端に低下していた。

 明らかに苦しんでいた。がしかし、そのまま落ちていくほど大谷はヤワな打者ではない。一部で二刀流継続の限界論や、年齢的な衰えを指摘する声も上がった中で、14日以降の打撃成績は、打率.372、出塁率.500、長打率.674、OPS1.174と大幅改善。ハードヒット率も60.0%にまで上がった。

「常に言ってますけど、やっぱり構えが一番大事だと思っているので。動き出しの、構えの部分でほとんど(結果)が決まっているのかな」

 3安打2打点をマークした5月17日のエンゼルス戦後には、そう語った。「打撃は水物」とはよく言ったものだが、大谷は打席内での感覚を含めて休養日から別人のような変貌を遂げたと言っていい。

 素人目には分かりにくい偉才のわずかな変化は、名手の目にはハッキリと見えていた。

 現地時間5月28日に米YouTubeチャンネル『Dan Patrick Show』に出演した2010年のナ・リーグMVPであるジョーイ・ボットー氏は、「おそらく彼はまだ絶好調には程遠い。とくに打撃面ではそうだ」と指摘。その上で、「ようやく感覚は良くなったというコメントを見たが、彼は満足していないと思う。ただ、大げさな表現は好きではないが、僕らは史上最高のシーズンの真っ只中にいるよ。少なくとも最近のスイングはそう感じさせる」とし、「打者・大谷」の短期間での進化を語った。

 自身も球界でも指折りの強打者だった。2002年の入団からレッズ一筋で活躍したいぶし銀は、通算2135安打、356本塁打を記録。オールスターにも6度も出た。だからこそ、今の大谷が継続している二刀流がいかに図抜けているかは身に染みて理解ができる。

 ボットー氏は、こうも続けている。

「僕らはタイガー・ウッズやマイケル・ジョーダンのような21世紀を代表する偉大なるアスリートについて話しているんだ。

これは野球というスポーツの性質のせいかもしれないが、誰もが毎日のように彼を見ているうちに、彼のやっていることに慣れて、いつしか驚かなくなっている。ただ、本来は6か月か、7か月が経った時に評価すべきなんだ。とにかくショウヘイの偉大さは、僕らが生きているうちにふたたび見られるかは分からない。それは噛み締めるべきだ」

 ようやく復調の兆しを見せ始めている二刀流スターの快進撃はどこまで続くか。その一挙手一投足に、球界全体の熱視線が注がれている。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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