中国に新たに派遣される北朝鮮労働者の契約上の賃金が、この1年で25%以上上昇していることが分かった。しかし、増えた分は北朝鮮側の派遣会社などに吸い上げられ、労働者本人が受け取る金額はほとんど増えていないという。

デイリーNKの内部消息筋が伝えた。

消息筋によると、中国企業と北朝鮮側が結ぶ労働者派遣契約では、昨年初めまで1人当たりの月額賃金は2500~2800元(約5万2000~5万8000円)程度だった。ところが今年、新たに結ばれた契約では3200~3500元(約6万6000~7万3000円)程度まで上昇したという。

最低額で比較すると2500元から3200元へ28%、最高額でも2800元から3500元へ25%の増額だ。

ところが、肝心の労働者の懐事情はほとんど変わっていない。

北朝鮮労働者が毎月実際に受け取る金額は、従来と同じ700~800元(約1万5000~1万7000円)程度にとどまっているという。中国企業が労働者1人について支払う金額は1年間で約700元増えたにもかかわらず、その増加分が本人には渡っていない格好だ。

背景にあるのが、北朝鮮特有の海外労働者派遣の仕組みだ。

海外に派遣された北朝鮮労働者は、中国企業から支払われる賃金を直接全額受け取るわけではない。北朝鮮側の派遣機関が一括して管理し、現地では生活費などとして一部を労働者に渡す一方、残りは「忠誠資金」や国家に納める計画分など、さまざまな名目で差し引き、帰国後に支給する。

今回の契約単価引き上げでも、増額分は労働者の待遇改善ではなく「仲介費」などの名目で控除されているという。労働者を募集・派遣する北朝鮮の貿易会社が差額を確保し、それを各社に課された国家計画分として納めているとみられている。

消息筋は、「契約書に記載される金額は上がったが、労働者に毎月渡す金額は変わっていない」と証言。「中国企業が支払う金だけを見れば北朝鮮労働者の賃金がかなり上がったように見えるが、実際に現場で働く人々に渡る分はそのままだ」と説明した。

北朝鮮労働者の人件費の上昇はロシアでも伝えられており、中露両国で引き合いが強まり、北朝鮮側の交渉力が上がった可能性がある。そこで得られた利益が、労働力を提供する当人にはほとんど分配されず、国家の総取りとなるところがいかにも北朝鮮的だ。

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