NHKのドラマが、世界最大級の動画配信サービス・Netflixで配信されることになった。6月22日から、大河ドラマ『軍師官兵衛』、連続テレビ小説『まんぷく』、ドラマ10『昭和元禄落語心中』など6作品を皮切りに、計19作品が順次追加される予定だ。
国内だけでなく世界中の視聴者に届ける取り組みだが、これに対して、テレビ東京の吉次弘志社長が苦言を呈したことが話題になっている。なぜ、NHK番組のNetflix配信は物議を醸しているのか。

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Netflixによると、今回の配信は「NHKが手がけてきたドラマ作品を、国内はもとより世界中のより幅広い視聴者に楽しんでもらうこと」を目的としたもの。NHKは2015年から一部番組を提供していたが、一部プランで広告が表示されるようになったことから、2023年10月より全作品の配信を停止していた。今回は、契約プランにかかわらずNHK番組の配信中に広告が表示されないことを確認した上で、再提供に踏み切った形だ。

ただ、広告の問題が解消されても、視聴者の疑問が消えたわけではない。NHK番組は、視聴者からの受信料を主な財源として制作されている。そのコンテンツを有料の民間プラットフォームで配信し、副次的な収入が生まれるとなれば、「受信料で作った番組でさらに稼ぐのか」という不満が出るのも仕方ない。SNS上でも「NHKとNetflixで二重取りされてる気分」「ネトフリ配信で稼ぐなら受信料を下げてほしい」といった声が上がっている。

NHK側は、受信料で制作した番組の外部提供について、放送法に基づき事業者の要請に応じて行うものだと説明している。問題は、受信料を支払っている視聴者がどこまで納得できるかという点にある。

民放側からも疑問の声が上がった。
テレビ東京の吉次弘志社長は6月4日の定例会見で、NHKの判断の是非にコメントする立場ではないとしながらも、「NHKは国民の受信料で成り立っている公共放送」であり、民間事業者とは違うと指摘した。

さらに、番組の制作方法や資金のかけ方も根本的に異なるとして、民間会社と同じようにコンテンツを提供することには「自制的であるべき」との考えを示した。続けて「かつての郵便貯金が外国の投信を売るようなもの」と、踏み込んだ例えで釘を刺した。

民放各局にとって、配信ビジネスは重要な成長領域になっている。そこへ、受信料を主な財源とするNHKが参入し、海外発のNetflixに番組を供給するとなれば、これは「民業圧迫」にも映りかねない。視聴者にとっての受信料の問題も含め、複数の不満が重なっていることが物議の原因となっている。

一方、NHK側にも理屈はある。井上樹彦会長は5月の定例会見で、日本のコンテンツを海外に発信するうえで最大のネックとなる「言葉の壁」を越えるため、Netflixの各言語への翻訳やローカライズのスキルを活用できる点を強調。NHKの良質なコンテンツが海外でどこまで受け入れられるかを実証する機会であり、日本の魅力や文化を世界に発信する新たなチャンスにもなると説明している。

とはいえ、それで全員が納得するわけではない。「日本のコンテンツを世界へ」という目的は前向きに聞こえるが、はたしてそれは公共放送の領分なのかという疑問がある。また、番組提供で副次的な収入が生まれた場合、NHK側はコンテンツ制作への投資に還元するとしているが、受信料を払っている視聴者からすれば、「受信料負担の軽減につなげるべきでは」というモヤモヤが残る。


Netflixのような配信サービスの普及によって、「放送」と「配信」の境界は急速に曖昧になっている。NHKとしては、従来のテレビ視聴者以外に作品を届ける必要性を感じているのだろう。だが、公共放送が民間サービスと組む以上、受信料制度との整合性、民放との関係、収入の使途について、より丁寧な説明が求められる。

Netflixでの番組配信をめぐる議論は、NHKが公共放送として今後どうあるべきかという問いにもつながっていると言えるだろう。

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