NHKの連続テレビ小説『風、薫る』でりん役の見上愛とともに、直美役でダブル主演を務める上坂樹里。第17週では、母・文(内田慈)との別れが描かれ、これまでにない複雑な感情と向き合いながら演じたという。
藤原季節演じる寛太との関係性、大きな転機を迎えた直美の心情、さらに第18週以降、2人の主人公が新たな一歩を踏み出す今後の見どころについても語ってもらった。(前後編の後編)

【写真】朝ドラ『風、薫る』主演・上坂樹里の撮り下ろしカット【7点】

――直美が鹿鳴館で給仕として働いていたときに出会った寛太は詐欺師で、海軍中尉と偽って直美に接近します。すぐにお互いに身分を偽っていたことが判明しますが、その後も二人は不思議な関係を続けます。寛太を演じた藤原季節さんの印象はいかがですか。

上坂 藤原さんは「これ、やってみていいですか?」と監督に提案されることが多くて。たとえば直美の家に寛太が来て、お茶を出すシーンがあるんですが、お茶を一気に飲んでしまって、直美から急須を奪って注ぐという細かい動きを提案して、実際にそれが採用されました。藤原さんが寛太という役を楽しんでいる姿に刺激を受けましたし、現場でも独特な空気感を作ってくださるので、一緒にお芝居するのが本当に楽しいです。寛太は、いろんなキャラクターに扮装して登場するのですが、毎回違う人に見えるので、そこも藤原さんの魅力だと思います。

――直美は寛太に母探しを依頼しますが、なかなか有力な情報を得ることができません。しかし第16週で、瑞穂屋で働く柳川文(内田慈)が、直美のお守りと同じ柄の髪飾りを持っていたことが判明。そして第17週の81回で、母が文であることに直美は勘づきます。この展開は事前に知らされていたんですか。


上坂 脚本をいただいてから知ったので、「まさか文さんが直美のお母さんだったなんて!」とびっくりしました。第17週は、直美の人生の土台が一気に揺れ動く大事な週だったので緊張しました。母と分かってはいるけど、文さんの口から知りたい気持ちもあるし、事実を知ってしまう怖さもある。両方の気持ちがあって、勇気を出して「お母さんですか?」と聞いても、文さんは認めてくれない。そこで壁のようなものを感じて、どうしたらいいのか分からない。私自身、直美を演じながら、今まで経験したことのない複雑な感情があふれ出てきて、どう向き合ったらいいんだろうと悩んだこともありましたが、親子と感じてもらえるように、お芝居することを大切にしました。

――83回では文が胃がんであることが分かり、治療法がないと宣告されます。

上坂 娘として、看護婦として、その事実を比較的に受け入れられるかどうかも重要な選択で、今まで自分をコントロールすることができていた直美が、急にできなくなってしまうところが切なかったです。

――85回では、「1つだけしたいことがあります」という文の願いで、直美は2人で浦崎八幡神社にお参りに行きます。そこで文は直美に「これまで随分努力なさったんですね」と涙を流し、「教会に捨てられていた子がこんな素敵な看護婦さんになって」「私とは違う。あなたならきっと大丈夫」と親子であることを認めるような言葉をかけます。

上坂 お参りをするとき、直美も自分のお財布を取り出して、お賽銭を入れようとすると、文さんがお金を渡してくれますが、内田さんがアドリブでそういうお芝居をしてくださったんです。
そういう細かい部分からも、どこかで2人はつながっているんだという空気を感じてもらえたんじゃないかと思います。

――内田さんは、2人が親子であることをどのタイミングで知ったのでしょうか。

上坂 内田さんは最初からご存じだったそうです。第6週で、りん、直美、トメちゃん(原嶋凛)と三人で瑞穂屋に行って、美津さん(水野美紀)がお琴を弾いているシーンがあります。そのときに会話こそしていないんですが、その場に文さんがいたんですよね。私自身、文さんが母だと知らずにその場にいたので、後から見返して感慨深かったです。

――その時点で文は、直美が娘と知っていた可能性もあるんですね。お参りの後、文は生涯を終え、りんの母・美津は、「よく頑張りました」と直美を労います。この言葉に、これまでの想いが決壊した直美が大号泣するシーンは胸を打ちました。

上坂 第17週の撮影は、直美の弱い部分と向き合う時間が長くて、演じていてもつらかったです。ただ、そういうときにりん、吉江先生、美津さんなど、優しく寄り添ってくれる人たちが周りにいてくれて。だからこそ、直美は最後まで文さんと向き合えたんだと思います。


――最後に今後の見どころを教えてください。

上坂 第18週の予告で、直美が「帝都医大病院を辞めさせていただきます」と言うシーンがありますが、直美は新しい環境に身を置きます。長屋のトヨさん(松金よね子)、母と同じ夕凪を名乗っていた女郎のセツさん(村上穂乃佳)、そして文さんとの交流を経て、お金がなくて満足に看護を受けられない人のために看護がしたいという強い気持ちを持って、新たな行動に出るんです。りんも新潟で新たなスタートを切りますが、お互いに違う場所で仕事に向き合っていくことになります。それによって、りんという存在の大きさを改めて知ることになりますし、それ以外のところでも、直美にいろいろな変化が訪れて、新しい人たちとの出会いも描かれるので、そちらにも注目してください。

連続テレビ小説「風、薫る」
NHK総合/毎週月曜~土曜8時ほか

脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる「明治のナイチンゲール 大関和物語」
音楽:野見祐ニ
主題歌:「風と町」Mrs. GREEN APPLE
語り:研ナオコ
出演:見上愛 上坂樹里 佐野晶哉 生田絵梨花 古川雄大 井上祐貴 内田慈 平埜生成 多部未華子 原田泰造 水野美紀 坂東彌十郎 ほか

公式サイト:https://www.nhk.jp/g/ts/XWRG4KR6Z2/
Instagram:https://www.instagram.com/asadora_ak_nhk/
X:https://x.com/asadora_nhk/with_replies
【前編】『風、薫る』上坂樹里、見上愛は「太陽みたいな方」 初めての一人暮らしも相談
編集部おすすめ