レビュー

『会社の値段』はシンプルなタイトルながら、非常に奥深い一冊だ。失われた30年を経て日経平均株価が最高値を更新する今、20年ぶりに新版が上梓されたのも納得できる。

「この一冊で金融リテラシーを高める」という売り文句は、決して大げさなものではない。
本書は基礎編、応用編、実践編の3部で構成されている。基礎編では、会社の値段、すなわち企業価値を算定する意味と方法を初歩から解説する。応用編では、実際に企業へ値段をつける投資家たちのリアルに迫っていく。さらに実践編では、バブル崩壊以降の日本企業社会を題材に、株式市場が適切に企業価値を評価できないことで生じる問題を読み解いていく。実に骨太な企業・金融の教養書だ。
要約では基礎編と応用編の5章に焦点を当て、リスクとリターンというファイナンス理論の基礎から、会社の成り立ちや社会における存在意義までを整理した。
著者は、米国留学中に企業買収の世界に触れたことをきっかけに、日本興業銀行やゴールドマン・サックス証券などで企業価値算定やM&Aに携わってきた実務家である。ファイナンス初学者がおさえておきたい基礎知識がコンパクトにまとめられていて、文章も明快でわかりやすい。金融リテラシーを高めるのに最適な一冊だ。「そもそも会社とは誰のために存在するのか」という問いにも触れられる。本書はファイナンスに関わる方や投資をしている方はもちろん、あらゆる業種のビジネスパーソンに多くの示唆を与えてくれるだろう。

本書の要点

・会社に値段をつけ、誰でも売買できるようにした株式市場は、新たな事業や産業を生み出す資本主義の原動力となった。
・企業価値は「企業が将来生み出すキャッシュフローの割引現在価値」で決まる。PERやEBITDA、PBRなどの指標は、企業価値を測るための代表的な物差しである。
・健全な企業は、簿価純資産を上回る「のれん価値」を生み出す。企業価値の本質は、この「超過収益力」を持続的に成長させる力にある。



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