BTCは昨年10月のピークから10カ月が経過し、そろそろ底入れが意識され始めている。一方で8月は1年で最もパフォーマンスが悪い鬼門の月だ。

ここからどうなるのか。楽天ウォレット・シニアアナリスト:松田康生、通称MATT(マット)が、8月のビットコイン相場見通しを分析する。


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7月のビットコイン相場を振り返る

鬼門の8月、ビットコインは底値を守れるか?注目すべき三つの材料
出典:TradingViewより楽天ウォレット作成

 7月のBTC市場は反発した。月初に5.7万ドル台で切り返すと、6月の戻り高値6.7万ドル手前で上値を重くし、半値押しとなる6.2万ドルでサポートされている。なお、月末の日米協調介入でドル円が163円台から一時155円台に急落した影響で、円建て価格は月末にかけて失速している。


 先月、BTCが年初来安値を更新した理由として、材料面ではウォーシュ新議長の下で米連邦準備制度理事会(FRB)がタカ派寄りになったことと、クラリティ法案(米国における暗号資産の規制体系を明確化するための包括的な法案)の行方が不透明になったことを挙げた。


 そのウォーシュ議長が、ポルトガル・シントラで開催された欧州中央銀行(ECB)フォーラムで、米イランの覚書締結と原油価格の下落を受けてインフレリスクは後退した、と言及。続く米雇用統計も弱めだったことから利上げ観測が後退した。さらに消費者物価指数(CPI)が前月比でマイナス0.4%、コアでも同0.0%と出ると、BTCは6.6万ドルまで値を伸ばした。


 一方で、いったん落ち着いたイラン情勢だが、故ハメネイ師(米国とイスラエル軍による空爆で死亡したイランの最高権力者)の葬儀後にイラン革命防衛隊が複数の商船を攻撃し、米国が空爆を再開。フーシ派が紅海の封鎖にまで言及すると、一時70ドルを割り込んでいた原油価格が90ドル台に上昇し、BTC相場の重しとなった。


 その後、米軍が空爆を停止し、イラン政府も同調したが、革命防衛隊がヨルダンの基地を奇襲するなど、イラン情勢は緊張と緩和を繰り返している。


 クラリティ法案の可決は難航している。

ホワイトハウスが大統領などの暗号資産ビジネスを規制する倫理条項に同意し、ベッセント米財務長官が成立に向けて「あと1ヤード」だとテレビで発言すると、BTCは6.7万ドルに迫った。


 ところが民主党はさらなる修正を要求し、採決に必要な60票の確保が困難と見たスーン米共和党上院院内総務は8月7日までの休会前の採決を断念。これがBTC相場の重しとなった。


 こうした材料以上にBTCに大きな影響を与えたのは、需給の悪化だった。ビットコインを企業の資産運用戦略に取り入れ、積極的に保有しているストラテジー(MSTR)社は、6月初に少額の売却を実施。そして6月29日に新たな資本政策を発表し、配当支払いを目的にした12.5億ドルのBTC売却枠を設定した。


 それに伴い、6月30日に0.81億ドル、7月6日に1.35億ドル、8月3日に1.05億ドルを売却。主に優先株STRC(ストラテジー社が発行する変動配当型の永久優先株)の配当に充当され、一部は優先株の買い戻しで配当負担の削減を図っている。


 配当原資があいまいなまま高利回りのSTRCを発行してBTC購入を続ける不健全なオペレーションを是正し、また額面を割れたSTRCを買い戻すことは合理的だが、当面は同社が新規に購入する可能性は低そうだ。


 ストラテジー社の購入が事実上ストップする中、BTC相場はほぼ上場投資信託(ETF)フローに連動する展開を続けた。6月はマイナス45億ドルと、米ETFローンチ以来最大の流出を記録したが、7月は+1.7億ドルとわずかながらプラスに転じ、相場の反発を支えた。


 特に月前半は順調に流入を続け、7月2日から22日までの14営業日で約10億ドルの流入があった。

ところが、その後は流出に転じ、BTC相場は上値を重くした。


BTC価格とETFフロー
鬼門の8月、ビットコインは底値を守れるか?注目すべき三つの材料
SoSovalue・Bloombergより楽天ウォレット作成

 ETFフローの後退を呼んだ理由の一つは半導体株の不振だ。7月10日にナスダックに上場したSKハイニックス(SKHY)株が週明け13日の韓国市場で暴落。韓国の株価指数(KOSPI)も大きく値を下げ、一時サーキットブレーカーが発動した。いわゆるSKショックだ。


 いったんは落ち着いたが、今度はSKグループと韓国でのデータセンター建設で5,000億ドルの投資で提携し、オハイオ州へのデータセンター建設で2,500億ドルの融資保証をオープンAI社に提供すると報じられたエヌビディア(NVDA)株が急落。


 KOSPIが再びサーキットブレーカーを発動し、本邦ではキオクシアホールディングス(285A)株がストップ安を付けた。


 こうした半導体株の急落が市場心理を冷え込ませたが、その後のビッグ・テック決算でマイクロソフト(MSFT)とアマゾン・ドット・コム(AMZN)のクラウド事業が好調だったことが好感され、半導体株も反発。リスクオンムードが広がる中、ETFフローもプラスに転じている。


各材料の見通し

 イラン情勢は、中東特有のバザール交渉にトランプ米大統領のディール志向が加わり、緊張と緩和を繰り返している。ここに来てイラン国内では穏健派と強硬派の対立が顕在化し、国際的に認められにくいホルムズ海峡の支配権に固執する姿勢も目立つため、落としどころは見通しにくい。


 過去の中東戦争でも停戦から本格的な和平まで長期間を要した例が多く、この問題も当面はくすぶり続けそうだ。ただし市場はこの状況に徐々に慣れ始めており、原油価格が現状程度で推移する限り、インパクトは限定的とみられる。


 金融政策も先行きが見通しにくい。ウォーシュFRB議長はインフレに厳しく対処する姿勢を示す一方で、市場とのコミュニケーションを見直し、バランスシート政策などについて専門部会を設置している。


 この動きはパウエル前FRB議長体制の一新と捉えると分かりやすい。各作業部会での改革進捗(しんちょく)をジャクソンホール会議のシンポジウムで発表する可能性があり、注目される。金利動向もデータ次第ではあるが、まずはその大枠を固めてからになるのかもしれない。


 スーン院内総務は、8月の休会前に議題に上らなければ、中間選挙前のクラリティ法案成立は絶望的になると指摘する。米上院は、10月は選挙活動でほぼお休みだが、9月は2~3週間開会している。ただし選挙が近いので、超党派で合意が取れているもの以外は通らなくなるのが通常だ。


 そのために、審議入りの動議だけでも8月7日までに議事妨害(フィリバスター)阻止(クローチャー)に必要な60票を集めておかないと、9月に奇跡的に60票が集まる可能性はほぼないとみられている。


 なお、中間選挙前に成立しなかった場合、選挙が終わっても1月までは現勢力のまま議会は続く(レームダック期間)。民主党が勝利した場合は、この期間に法案が通る可能性はほぼない。共和党が勝利したからといって民主党の協力を得られるとは限らないが、チャンスは残る。

そういう意味では、現時点では厳しくはなるが可能性がゼロになるわけではない。


 このように各材料ともやや決め手に欠ける展開が予想される中、一つ気になる動きがある。日米の協調介入だ。為替市場では単独介入の効果には限界があるが、協調介入は効果が大きいとされる。かつては、2011年の東日本大震災時の円高阻止や1985年のプラザ合意など、相場の転換点になったことが記憶される。


 通貨発行権を持つ両国が協力すれば、為替レートをコントロールすることは理論上可能だからだ。これが円安のスピード調整程度で終わるのか、円キャリー取引の巻き戻しの転換点となるのか、市場は固唾(かたず)をのんで見守っている状況だ。


 急激な円高は円キャリー取引の巻き戻しを起こしかねない。2024年8月には急激な円高が世界的な株安を引き起こし、日経平均株価は史上最大の下げを記録した。リーマンショックも、日本銀行の利上げと米利下げによる円キャリー取引の巻き戻しが、リスクマネーの枯渇を招いた一因とされる。


 また、単純に円高はグローバル企業の海外収益を目減りさせ、株価の下落要因となる。足元では前回安値でもある155円でリバウンドしているが、ここを割ってくれば市場の雰囲気が変わり、AI・半導体株にけん引された株式ブームが終焉(しゅうえん)しかねず、大きなリスクオフ要因となるかもしれない。


鬼門の8月、ビットコインは底値を守れるか?注目すべき三つの材料
各材料の見通しまとめ 表

8月の見通し:いよいよ大底を迎える?

テクニカル

BTCUSD(日足)
鬼門の8月、ビットコインは底値を守れるか?注目すべき三つの材料
出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

BTCUSD(週足)
鬼門の8月、ビットコインは底値を守れるか?注目すべき三つの材料
出典:Trading Viewより楽天ウォレット作成

 BTCは6月初に2月の安値6万ドルを割り込むと6.7万ドル台まで反発した。しかし、この戻しはいわゆる「デッド・キャット・バウンス(急落した株価や相場が一時的に反発する現象で、その後再び下落する傾向)」に終わり、7月初にかけて5.7万ドルに下落し、年初来安値を更新した。


 そこから切り返すと6.7万ドル手前で跳ね返され、半値押しとなる6.2万ドルにサポートされている。この6.7万ドルは6月の戻り高値とフィボナッチの38.2%戻しが重なる強めのレジスタンスで、半値押し程度でサポートされれば健全な調整の範囲内といえそうだ。


 前回、7月は底値を固める展開と申し上げたが、この6.7万ドルを上抜ければ、下向きのヘッドアンドショルダーが完成し、底固めの第一関門をクリアした格好となる。すでに一目の雲の中に入っており、下落トレンドからは脱した格好だ。さらに7万ドル近辺には200日移動平均線が下がってきており、ここを抜ければトレンド転換、「冬の時代」が終わった格好となる。


 しかし、それはあくまで、この半値押しと一目の雲が重なる6.2万ドルでサポートされて反発した場合の話で、まだどちらに抜けるのかは判断できない。週足で見ると、BTCは下降フラッグを2回形成し、今回は上昇トライアングルを形成している。


 見方を変えれば、今回6.7万ドルをブレークしても、そこで相場が走らなければ上向きの平行チャネルとなり、3回目の下降ヘッドアンドショルダーラッグ(相場のトレンド転換を示すチャートパターン)ともなりかねない。また6.2万ドルを割れて、5.7万ドルでの底固めをやり直す可能性もある。


 要は、テクニカル的には底固めにもう一息だが、まだ予断は許さないといった形か。5.7万ドルを割れれば、2024年8月の安値4.9万ドルが次のサポートだ。


アノマリー

BTCUSD 月別騰落率
鬼門の8月、ビットコインは底値を守れるか?注目すべき三つの材料
出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

 7月は陽線となった。これで3年連続となり、過去16年で11勝5敗と、2月・4月と並んで1年で最高のパフォーマンスを記録した。その反動というわけでもないが、8月は過去15年で5勝10敗と1年で最弱の月だ。


 続く9月も負け越しで、BTCが最も苦手とする季節が到来した。逆に10月は好パフォーマンスだ。株の世界では「閑散に売りなし」と言って夏休みシーズンは堅調とされるが、マイニング報酬による供給が一定のBTCは夏場が苦手で、いわば「閑散に買いなし」といった現象が起こりがちだ。


 4年周期のアノマリーでいえば、半減期の1年半後にピークをつけてからおおよそ1年後にボトムをつける。今回のサイクルでいえばピークが2025年10月だったので、この二つのアノマリーを総合すれば、8月か9月にボトムをつける可能性が高そうだ。もしくは7月の5.7万ドルがボトムで、8月に再トライするも失敗して、ダブルボトム気味に反発するシナリオも考えられる。


8月見通し

 8月のBTC市場は引き続き底値を固める展開となりそうだ。


 7月の安値5.7万ドルでの底固めが続いている。6.7万ドルが第一関門で、7万ドル近辺の200日移動平均線をクリアすればトレンド転換だ。しかし8月は鬼門の月で、5.7万ドルを割り込む可能性も否定できない。5.7万ドルが大底となるのか、もう少し下があるのか、難しいところだが、サイクル的にもこの7~9月で大底を迎える可能性が高いと考える。


 材料面ではイラン情勢、Clarity法案、金融政策いずれも決め手に欠ける中、ドル円の動向には要注意だ。円キャリー取引の巻き戻しが世界的なリスクオフを巻き起こすのか、円安のスピード調整程度で大きな混乱は避けられるのか、ここが5.7万ドルを守り切れるか否かの分かれ目となりそうだ。


ストラテジー社・ETFフローとBTC価格
鬼門の8月、ビットコインは底値を守れるか?注目すべき三つの材料
SoSovalue・ストラテジー社HP・Bloombergなどより楽天ウォレット作成

 需給面では、ETFと並ぶ買い手だったストラテジー社が売り手に回ることが懸念されるが、同社の配当目的の売却は月2回5,000万ドル程度だ。1回あたりおおよそ2日分のマイニング報酬に相当し、吸収可能だ。


 図を見ても、この2カ月の同社の売りの影響は軽微なことが分かる。要は同社の売りというよりは、買い手が不在となることが懸念される。その代わりと期待されるのがETFフローだ。まだ予断は許さないが、半導体株ブームとその後の売りが一巡すれば、BTCにETFフローが戻ってくる可能性がある。


 ただし、夏休みシーズンということもあり、戻ったとしても限定的と思われる。


鬼門の8月、ビットコインは底値を守れるか?注目すべき三つの材料
今月のMATTメモ

 


 

 


  先日、都内を歩いているとスーパーの店先でキャベツが298円で売っていました。


 自分で買い物をするので、物価に関してはレベル感が分かるのですが、私が住んでいる川口では通常100円台で、安い時には98円の時もあります。


 お菓子や食品メーカーが提供する商品の価格は都心と郊外でそれほど変わりませんが、生鮮食品は驚くほど異なります。土地代や人件費を考えれば当たり前ですが、その結果、価格差が2倍・3倍になるのも珍しくありません。その点、川口はスーパー激戦区で、その安さにひかれて都内から引っ越してきました。


 よく「安いものを探して何軒もスーパーを回ることを時給換算する」人がいますが、これは間違いだと思います。安いものやお得な買い物をするのは楽しいからで、節約もありますがレジャーなのです。私も30分歩いて198円の卵を買いに行ったりします。


 もう一つ、これは職業病のような部分があります。マーケットの仕事とは安く買って高く売ることなので、長らく為替のディーラーや特に債券のポートフォリオマネージャーをしていると、割安な銘柄を探すことが習慣になってしまいます。すると必要もないのに「割安」というだけで余計に買ってしまいがちです。先日も10個入り178円の卵を3パック買ってしまいました。


 命の次に大切なお金を払うことは痛みを伴う行為で、その痛みを和らげることは快感につながるのかもしれません。この感覚は、ポイ活やポイント投資にも通じるものがあるのかもしれませんね。


(松田 康生)

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