BTCは6月に入り7万ドルを割り込むと、中東の和平合意、原油価格の下落、日米株の史上最高値更新という好材料をよそに、6万ドルを割り込み年初来安値を更新した。何が起こっているのか、どこまで下がるのか。

楽天ウォレット・シニアアナリスト:松田康生、通称MATT(マット)が、7月のビットコイン相場見通しを分析する。


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BTCは底打ちか、二番底か?「7月13日週」が分かれ道—ビットコイン7月見通し
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6月のビットコイン相場

BTCは底打ちか、二番底か?「7月13日週」が分かれ道—ビットコイン7月見通し
出典:TradingViewより楽天ウォレット作成

株とのダイバージェンス

 6月のBTC市場は下落となった。月初に7万ドルを割り込むと下げ足を速め、2月の安値である6万ドルも割り込んだ。その後、イラン和平合意もあり6.7万ドルまで値を戻したが、再び失速して5.8万ドルを割り込み、年初来安値を更新した。


 ビットコインは2月末の空爆以降、イラン情勢を巡るリスクオンオフに振り回されながら米株とシンクロしていた。しかし5月半ば以降はイラン情勢に振り回されつつも、米株とは明確にダイバージェンス(乖離(かいり))を起こした。なぜBTCは売られたのだろうか?


ビットコイン米ドル
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材料面

 材料的には、Clarity法案の行方が不透明になったことと、ウォーシュ新議長の下で米連邦準備制度理事会(FRB)がタカ派寄りになったことが主因だ。


 Clarity法案は上院銀行委員会を通過したものの、その後のスケジュールが非常にタイトであることが意識され始めた。上院本会議での採決に必要な60票の確保に向けた多数派工作が進められているが、7月13日~8月9日の会期中に上院を通過しなければ、中間選挙前の成立は厳しくなり、選挙結果によっては年末に廃案となる可能性が浮上している。


 ウォーシュFRB議長の就任自体も市場に大きなショックを与えた。当初はAIによる生産性向上を背景に利下げが期待されていたが、就任後の米連邦公開市場委員会(FOMC)では足元の高インフレへの対処を優先するタカ派姿勢を強調。先物市場では9月の利下げ確率を8割程度まで織り込むに至った。


 さらに議長はFRBのバランスシート縮小を検討する作業部会を立ち上げ、インフレヘッジとしてのBTC購入というストーリーは大きく後退した。


需給面

 こうした材料以上に大きかったのは需給の悪化だ。6月1日、ストラテジー社は優先株の配当支払いのために32BTC(約200万ドル)を売却したことが明らかになった。

これは同社が保有する84万BTCのごく一部に過ぎず、試験的な売却だった。その後、同社は1,000BTC以上を買い戻しているが、この売却が市場に大きな動揺を招いた。


 また、もう一つの需要の柱である上場投資信託(ETF)フローは、5月半ばから6月にかけて13営業日連続でマイナスを記録した。その後も流出が続き、6月の流出額は45億ドルに達し、2024年1月のETFローンチ以来最大となった。この二つのBTC買い需要の柱が逆流したことが、6月の低迷の主な原因となった。それぞれ詳しく見ていこう。


ストラテジー社の普通株(MSTR)・優先株(STRC)とBTCUSD
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ストラテジー社

 ストラテジー社は2020年以降6年で約84万BTC(現在時価約500億ドル相当)を購入。2025年だけで22.5万BTCを買ったが、これは同年の発行総額(16.4万BTC相当)を上回るペースだった。資金は主に普通株と優先株STRCの発行で調達している。


 STRCはストラテジー社が発行する、償還義務のない永久優先株で、変動配当(現在12%)を支払っており、年間負担は約17億ドルに達する。このため当初22.5億ドルの配当準備金を積んでいたが、5月に転換社債15億ドル(実支出13.8億ドル)を償還した結果、準備金は一時8.7億ドルまで減少。


 これが市場の不安を呼び、普通株は2年ぶりに100ドルを割り82ドルまで下落、STRCも額面100ドルを大きく下回り一時72ドルまで急落した。


 これに対し6月29日、同社は新資本政策(Digital Credit Capital Framework)を発表した。


 主な内容は


  • STRC配当率を11.5%→12%に引き上げ
  • 普通株11.5億ドル発行で準備金を25.5億ドル(約17.4カ月分)に積み増し
  • 普通株・優先株それぞれ10億ドルの自社株買い枠設定
  • 資金確保として12.5億ドル相当のBTC売却枠新設

となっている。


 発表後、BTCはいったん売られたが、普通株とSTRCが大幅反発。特にSTRCの回復は配当引き上げと準備金強化を好感したものとして理解できる。


 一方、自社株買い枠設定による普通株上昇には違和感が残る。新株発行で資金を調達した直後に自社株を買う実効性は薄く、BTC価格連動銘柄である以上、BTC売却で株価対策になるのか疑問だからだ。それでも発表は市場の動揺を抑え、株価は15%近く反発、市場の動揺を抑えることに成功した。


 一般に、株式発行による資金調達は債券と異なり償還義務がなく、優先株も無配当にできる理論的余地があるため、即時破綻リスクは低い。保有BTCから見ても現時点の配当負担は問題ない水準だ。


 ただし、STRCが額面を大きく下回る状況では新規発行が難しくなり、同社が重視するmNAV(時価総額/保有BTC価値)が1倍を割れば「割高発行で1株当たりBTCを増やす」戦略も機能しにくくなる。結果、年間22.5万BTC規模の積極購入が継続できなくなるリスクがあり、これが直近のBTC価格下落の一因となった。


ETFフロー

 次に、ETFフローの低迷要因として、AI半導体株ブームやスペースX(SPCX)の巨額新規公開株(IPO)が指摘されている。ETFは現物資産間でのスイッチングコストが極めて低いため、ブームが発生すると他アセットから資金を吸収しやすい。昨年末から1月にかけての金ブーム時にも同様の動きが見られ、今回もAI半導体株やスペースX社に資金がシフトした可能性が高い。


 1月末から2月にかけて金が反落した際にはBTCも一時連れ安となったが、その後資金が戻ってきた。今回も同様に、AI・スペースX関連株が調整すればBTCへの資金回帰が期待できる。


中長期的にはプラス

 とはいえ、買いの主力だったストラテジー社とETFフローが止まり、むしろ売りに回った影響で、短期的な調整は避けられない。ただし長期的に見れば、これはポジティブに働くと考える。ストラテジー社については、上場企業が永遠にBTCを買い支え続けることはあり得ず、売却ショックはいつか通過しなければならなかった。


 この調整により「1社依存の需給構造」が是正されるのは健全だ。また、ETFが初期の「流入一辺倒」ステージを終え、他のアセットクラスとの流動性競争に加わったことは、BTCが本格的な金融市場のアセットとして認められた証左と言える。材料次第で巨額資金が再流入する素地は整ったとみる。


 1社でマイニング発行量を上回る買いを続けていたストラテジー社が、買いを大幅に減らす(または抜ける)可能性が出てきたことは、暗号資産市場にとって確実に痛手だ。


 ただし、絶望的というわけではない。同社が2025年に費やした約200億ドルの購入はBTC市場では巨額だが、金融市場全体で見れば相対的に小さい。


 5月には大手投資銀行のモルガン・スタンレーと大手ネット証券のチャールズ・シュワブがBTC現物の自社提供を始めた。両社の預かり資産は合わせて約20兆ドルに達しており、わずか0.1%のシフトでも200億ドル規模の資金流入が見込める計算になる。


 もちろん、提供を始めただけで自動的に資金が流れてくるわけではないが、買い材料さえ出れば巨額の代替需要が期待できるインフラは整ったと言える。


BTCUSDとETFフロー
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出典:SoSoValueを基に楽天ウォレット作成

7月の見通し:13日週がヤマ場

テクニカル

BTCUSD(日足)
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BTCUSD(週足)
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出典:TradingViewより楽天ウォレット作成

 6月は月初に一目の雲の下限を割り込み3役逆転、7万ドルで上昇チャネルを下抜け下降フラッグが完成し勝負あり。一気に6万ドルを割り込み年初来安値を更新し、底固めはやり直しに。足元では底値を探る動きとなっている。


 まずは6月の下落の半値戻しとなる6.3万ドル、そして6月の戻り高値6.7万ドルは8.2万ドルからのフィボナッチの38.2%と重なる強めのレジスタンス。


 過去の下落局面でセリングクライマックスを迎えた場合は数日内に15%前後の急反発を見せており、今回がボトムだとすれば数日内にここを抜ける必要がある。逆に下値抜けた場合は2024年8月の安値4.9万ドルが強めのサポートだ。


アノマリー

BTCUSD 月別騰落率
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出典:Bloombergより楽天ウォレット作成

 6月は2カ月連続の陰線引け。昨年10月から5カ月陰線が続いた後、2カ月陽線が続いたが、再び陰線が連続、まだ「冬の時代」から脱却していない様子がうかがえる。今後、1年で最も弱い8月9月が控えているが、7月は10勝5敗と2月に続いて強い月。アノマリー的にはここで小反発、下げ渋る展開が予想される。


7月見通し

 7月のBTC市場は、材料次第だが底値を固める展開となりそうだ。


 需給的には、主力のストラテジー社とETFフローが不振の中、価格調整を余儀なくされている。ただBTC売却枠を設定したストラテジー社だが、BTC価格の下落により同社が重視するmNAVは若干プラスに転じており普通株発行による購入を続ける可能性もある。

またETFもいったんBTCが下げ止まれば割安感から回復する可能性がある。


 一方、材料面ではClarity法案の行方が最大の焦点となる。上院が夏季休暇に入る8月10日までに少なくとも本会議を通過しないと中間選挙前の成立はほぼ困難となるが、採決に必要な60票確保に向けてぎりぎりの交渉が行われている。


 上院は13日から再開、下院も同法案を可決してちょうど1年にあたる17日に公聴会も予定している。どちらに転ぶかほぼ五分五分の状況で13日週が焦点となる。


 また利上げに向けた動きも大きな材料だ。14日には年2回のFRB議長の議会証言を予定している。市場との過度の対話がFRBの手足を縛っているとするウォーシュ議長の一言には以前より重みがある。また余分なヒントを与える代わりにデータ重視の姿勢を強めるもようで、同日には消費者物価指数(CPI)も発表される。


 場合によっては7月FOMCでの利上げもありえなくはないし、イラン情勢次第では思った以上に原油価格が下落する可能性もある。


 まだここで底打ちするのか、もう一段の2番底があるのか、材料次第で何とも言えないが、13日週が大きなヤマ場となりそうだ。


 


BTCは底打ちか、二番底か?「7月13日週」が分かれ道—ビットコイン7月見通し
今月のMATTメモ

 


 


 


 体重が90キロを割りました。


 医師のいとこの強い勧めで昨年10月から本格的に減量を始め、9カ月で約30キロ落としました。普通の人からすればまだまだですが、減量のコマーシャルに出演できるレベルです。血液検査で*が付かなかったのは何年ぶりか覚えていません。


 気を付けているのは食事と歩くこと。1日最低1万歩、平均1.5万歩を目標にしています。これが意外と大変で、朝夕の永田町~青山一丁目往復に加え、帰りは赤羽から川口まで歩いてようやく到達するかどうか。


 永田町から青山一丁目へは赤坂御用地沿いを歩くのですが、よくジョギングする人とすれ違います。中には2回すれ違う人や、2回追い越していく強者も。歩いている間は暇なので、どういう条件ならそうなるのか考えてしまいます。


 御用地周囲を仮に1辺800mの正方形とすると、すれ違う人は私が1辺歩く間に3辺(2,400m)走ることになります。私の時速4kmに対し3倍の時速12km(100m30秒ペース)なら可能で、フルマラソン4時間切りレベルのアマチュア上級者です。2回追い抜かれると5倍の時速20km(100m18秒)、つまり箱根駅伝区間賞クラスか、私がよほどゆっくり歩いているかのどちらかですね。


 結局、歩くのが面白いのは、こういうことを考える時間があるからです。最近は電車でもスマホばかりで、ゆっくり物事を考える機会が減っていたので、貴重な時間になっています。為替の世界では「Once a Dealer, Always a Dealer」といわれますが、相場の面白さも、こうした「よく考える」機会を与えてくれるからかもしれません。


 ちなみに、平日に1.5万歩を達成するには、帰宅時に1時間程度歩かざるを得ません。その結果、帰り間際になると体力を温存しようと考えている…というのは、口が裂けても言えません。


(松田 康生)

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