前編では、リーマンショックで約700万円を失ったPANさんが、米国株投資で再起し、会社員を卒業するまでを伺いました。後編では、2026年初めに資産5億円へ到達したPANさんに、現在のポートフォリオや米国株の銘柄選定術、初心者が投資を始める方法を聞きます。
AI関連株へ集中しながら、債券、ビットコイン、金も確保
トウシル:米国株で順調に資産を増やしてこられたPANさんですが、現在のポートフォリオを教えてください。
PANさん:現金を除いた投資資産の8割ほどが米国関連です。株式の中心はAI関連株ですね。今の相場をけん引しているテーマなので、ここに投資しないと十分なパフォーマンスを得にくいと考えています。ただし、AI相場がいつ崩れるかは分かりません。伸びると考えて投資しながらも、常にリスクは意識しています。
トウシル:AI関連株へ積極的に投資しつつ、暴落への備えもしていると。
PANさん:はい。債券と現金の合算は、資産全体の3分の1ほどになります。米国債券には利回りが4%を超えるものもあるので、金利を受け取りながら、相場が大きく下がったときに追加投資できる余力を確保している形です。
トウシル:AI関連株へ集中する一方で、相場が下がったときの余力もしっかり残しているんですね。
PANさん:性格上、常にリスクを意識しているんですよ。2020年のコロナショックのときには、下落が始まってから2日間で保有株のほぼ全てを売りました。
しかし当時は、さらに下がるのか、すぐ戻るのかは誰にも分かりません。結果を知っている「未来人の目」で、過去の判断を評価してはいけないと思っています。キャッシュにすれば、その時点でリスクを止められます。暴落時は「Cash is king」です。
トウシル:現在はAI関連株と債券、現金以外にも投資しているんですか?
PANさん:ソフトウエアやサイバーセキュリティの銘柄に加えて、欧州、韓国、台湾、日本にも投資しています。日本株を買ったのは約20年ぶりで、個別株ではなく上場投資信託(ETF)を選びました。さらに金やビットコインも保有しています。
僕はこれを「攻めの分散投資」と呼んでいます。値動きの違う資産を持ってリスクを抑えるだけではなく、これから伸びそうな対象を複数選び、その中から上がるものを狙う考え方です。常に全てが思い通りに動くわけではなく、今の時点では、金やビットコインのように、期待したほどのパフォーマンスが出ていないものもあります。
将棋の3手先を読む。身近な変化から見つける次の成長テーマ
トウシル:PANさんが主戦力としているAI関連株の次に伸びそうな分野が気になります! AIの次に伸びそうな投資テーマは、どのように探しているのでしょうか。
PANさん:世の中で何かが起きたとき、その影響で次にどこが伸びるのかは常に考えていますね。「風が吹けば桶屋がもうかる」という発想です。将棋の3手先を読むように「こうなったら、その次に何が起こるだろう」と連想します。
コロナ禍のときには、SaaSやクラウド、eコマースが伸びると考えました。外出できなくなり、あらゆる活動がインターネットへ移るだろうから、という考え方ですね。
トウシル:前編に登場したズーム以外にも、投資した銘柄はありましたか?
PANさん:代表的な銘柄の一つが、ハンドメイド作品を売買できるエッツィー(ETSY)です。米国でサービスを知り、大きく注目される前から投資していました。コロナ禍では、外出できない人が自宅で作品を作り、買う側もオンラインで商品を探す流れがさらに広がりました。
米国で知人の家を訪れたとき、緯度と経度の数字が入ったユニークなクッションを見かけたんですが、それもエッツィーで購入したものでしたね。
トウシル:身近な出来事から、投資先を見つけたんですね。
PANさん:ただ、連想が必ず当たるわけではありません。
重要なのは、全てを当てることではありません。ニュースを見て、自分なりに次の動きを考えて、想定と違えば見直す。その繰り返しです。
企業の将来性、過去8回の決算、経営陣の声。銘柄を選ぶ三つのステップ
トウシル:気になる銘柄を見つけた後は、どのような手順で投資するか決めるのでしょうか?
PANさん:僕は大きく三つのステップで銘柄を見ています。
【STEP1】は、企業の将来性を確認する作業です。他社に負けない製品やサービスがあるか、市場自体に成長する余地があるか、シェアが伸びているか、魅力的な新製品や技術が出ているかを調べます。
企業によって注目すべき数字も違います。例えば、アップルならiPhoneの販売動向、テスラなら出荷台数など、その会社の成長を左右する重要な指標を見ます。
トウシル:最初から企業の資料を全部読むのは、少し大変そうです。
PANさん:まずはChatGPTなど複数の生成AIに聞いて、会社の概要や強み、弱みを大まかにつかめばいいと思います。
ただ、AIには間違った情報もあります。回答をそのまま信じるのではなく、企業のIRページにある投資家向け資料やプレスリリースで確認します。公式YouTubeに製品デモがあれば、実際にどんなサービスなのかを見る材料にもなります。
トウシル:生成AIに最終判断を任せるのではなく、調査の入り口として使うんですね。次は何を見るのでしょう?
PANさん:【STEP2】は、過去2年分、合計8回の四半期決算です。「1株当たり利益(EPS)」「売上高」「ガイダンス(今後の業績見通し)」の3項目が、市場予想を上回っているかを確認します。
今では過去の実績と市場予想を比較できるツールも充実しています。基本的には、3項目で安定して市場予想を上回っている企業を候補に残します。
企業によっては1回の小幅な未達を許容する場合もありますが、大幅に予想を下回ったり、2回連続で未達になったりした企業は、投資対象から外しますし、すでに保有しているなら売却を検討します。
大切なのは、決算が出てから慌てるのではなく、「この数字を下回ったら売る」と事前に基準を決めておくことだと思います。
トウシル:数字が出る前に、自分の判断基準を決めておくわけですね。三つ目は何ですか?
PANさん:【STEP3】は、直近の決算時カンファレンスコールを確認します。
カンファレンスコールとは、企業が決算発表後に開く電話やオンライン形式の説明会です。経営陣が業績や今後の見通しを説明し、証券アナリストや投資家からの質問に答えます。決算の数字だけでなく、経営陣がどのようなトーンで話しているか、質問に正面から答えているか、何を懸念しているかを確認できます。
トウシル:英語で1時間近い説明を聞くのは、なかなか大変ですね。
PANさん:Seeking Alphaなどには文字起こしがあるので、それをChatGPTに読み込ませ、決算のハイライトや懸念点を整理してもらいます。日本語字幕付きで決算説明会を見られるようにしてある証券会社もありますよ。
まずは生成AIで概要をつかんだ上で、気になる点があればさらに質問します。投資額が大きい銘柄については、AIの要約だけで終わらせず、僕自身も原文を読みます。
トウシル:カンファレンスコールで、特に気をつけている発言はありますか?
PANさん:自社株買いや新製品のロードマップなど、ポジティブな材料が次々に出てくるときほど警戒します。「ここまで好材料を並べるのは、ほかに隠したい問題があるのではないか」と考えるんです。
経営陣の説明をうのみにせず、数字やほかの情報と照らし合わせます。分析は絶対に上がる銘柄を探すためではなく、なぜ投資するのか、どのような状況になったら売るのかを、自分で決めるために行うものだと思っています。
米国株の第一歩、「知っている3社を1株ずつ」買ってみる
トウシル:米国株に初めて挑戦する人は、どこから始めればいいでしょうか?
PANさん:海外の株と聞くと難しそうですが、身構える必要はありません。僕がおすすめしているのは、自分が知っている米国企業を3社選び、まず1株ずつ買ってみる方法です。
ナイキのスニーカーを履いている、スターバックスによく寄る、VisaのカードやiPhone、Googleのサービスを使っている…など。普段の生活で接している企業なら、事業もイメージしやすいですよね。銘柄によりますが、だいたい10万円前後から始められます。
トウシル:最初から業種を分けたり、難しい分析をしたりしなくてもいいんですか?
PANさん:まずは興味を持つことが目的なので、セクターまで気にする必要はありません。
1株でも持つと、株価が上がったり下がったりしたときに、「何があったんだろう」と気になります。ニュースを調べ、決算を見ているうちに、投資が自分事になっていきます。
やがて気になる企業やセクターが出てきたときには、生成AIに「この会社は何をしているの?」「強みと弱みは?」と聞いてもいいでしょう。そこから企業の資料やチャートへ調査を広げていけばいいと思います。
トウシル:少しずつ経験を積んでいくんですね。
PANさん:慣れてきたら、銘柄を入れ替えたり、投資比率を変えたり、利益確定や損切りを経験していけばいいと思います。5銘柄を持っていれば、四半期決算は年間で合計20回あります。毎回追いかけていけば、少しずつ企業や市場を見る目が養われます。投資判断力は、地道に分析を続ける中で身に付けていくしかありません。
日本円だけを持つのもリスク。海外資産が人生の選択肢を広げる
トウシル:米国株に投資すると、海外の経済や企業にも自然と目が向きそうですね。
PANさん:そうですね。それだけでなく、日本円以外の資産を持つ意味も意識できると思います。日本に住んでいるから日本株へ投資し、資産も日本円だけというのは、ホームカントリーバイアスです。日本株が悪いわけではありませんが、日本円だけを持つ状態にもリスクがあります。
トウシル:具体的には、どんな場面で円の弱さを感じますか?
PANさん:分かりやすいのは、iPhoneの価格です。単純な比較はできませんが、iPhone 11 Proの発売時の価格は10万円台前半、iPhone 17 Proは17万9,800円です。米国の開始価格も999ドルから1,099ドルへ上がっていますが、日本円で見た値上がり幅のほうが大きくなっています。
日本での価格が大きく上がった背景の一つには円安があります。ここ十数年で、円の対ドルでの価値は大きく下がりました。日本円だけを持っていると、海外の商品やサービスを買う力も低下します。
トウシル:円の価値が下がると、資産額が変わらなくても、買えるものが減ってしまうんですね。
PANさん:そういうことです。米国株に限らず、欧州の資産、外貨、金など、日本円以外の資産を持つ方法もあります。
今はスマートフォン一つで世界中へ投資できます。日本だけに投資先を限定せず、自分に合った形で選択肢を広げてみてほしいと思います。
僕は今、日本と米国の二拠点で生活しています。これを実現できているのも、ドル資産を持っているからです。2026年の初めには資産が5億円に到達しましたが、資産形成の目的は数字を増やすことだけではありません。
資産額によって、住む場所や働き方を選べる状態をつくることにも、大きな意味があると思っています。ぜひ米国株を通じて希望する生き方を手に入れてください!
トウシル:米国株をはじめとする海外への投資は、資産だけでなく、人生の選択肢を広げることにもつながるんですね! 本日はありがとうございました!
▼前編はこちら
リーマンショックで退場も経験、元手100万円から資産5億円を築けた理由 米国株投資家 PANさんインタビュー[前編]
(トウシル編集チーム)

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