自分の山に、見知らぬ人が勝手に入り込んで山菜やきのこを持ち去っていく――。山林を所有する人にとって、これは想像以上に身近なトラブルです。

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農林水産省の林野庁は「野生の山菜やきのこ採取にあたっての留意点」という公式ページを設け、他者が所有する森林への無断立ち入りや無断採取について注意を呼びかけています(出典:林野庁)。国の機関がわざわざ周知するほど、山菜採取をめぐるトラブルは全国で起きているようです。

今回ご紹介するのは、過去に大きな反響を呼んだ実録エピソードから、父親が所有する山林で無断採取を繰り返す男を、尾行してまで特定したケース。まさかの結末とは。

記事の後半では、「じゃあ、山菜って採ってはいけないの?」という素朴な疑問について、森林法の規定や、ワンコインで合法的に山菜採りが楽しめる自治体の制度まで掘り下げます。

*  *  *

山の所有者の息子とは知らずに「時々来てる」と話す山菜採りの男性

 春の山菜シーズン。ふきのとうやわらび、ぜんまい、たらの芽などが旬を迎える。

 いずれも山に行けば比較的簡単に手に入れることができるが、国有林は森林管理局への事前申請が必要なうえ、無断での山菜の採取は禁止。私有林も所有者の許可を得なければならず、無断での立ち入りは違法だ。

 だが、現実問題として山菜採りのために勝手に山に入る者は後を絶たない。会社員の真岡秀彦さん(仮名・45歳)の父親は、代々受け継いできた実家周辺にある複数の山林を所有。

 友人や親族、同僚などには快く山菜採りや秋のきのこ狩りを認めていたが、同時に無断で立ち入る者もいたという。

「両親によると、以前から山の麓に不審な車両がたまに停まっていることに気づいていたそうです。
近くにはハイキングコースも釣りができるような川もなく、山菜採りが目的なのはほぼ間違いない。

「許可は取ってます」嘘をついて他人の敷地で山菜を採る60代男性…身元がバレて慰謝料30万円を支払うまで/年間500円で合法な手続きも…山菜採りのルールを調べてみた
※画像は生成AIによるイメージです
 かといって山を下りてくるまで待つのも面倒ですし、注意して逆ギレされても怖いじゃないですか。それで立ち入り禁止の看板を設置し、警告の紙を車に置いたそうですが、あまり効果はなかったようです」

 真岡さんは実家と同じ県内に住んでいることから1~2か月に一度は顔を出しており、2年前の春先に戻った際、朝に犬を連れて近所を散歩していると山の麓に1台のワゴン車が停まっているのを発見する。しかも、車に向かう途中、ちょうど山から60歳くらいの男性が下りてきたとか。

 彼が持っていた網かごには大量の山菜が入っており、「山菜採りですか?」と尋ねると、笑顔で「ええ、この山はよく採れるので、以前から時々来てるんですよ」と笑顔で答えたのだ。

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※画像は生成AIによるイメージです
「いちばん引っかかったのは、『山の持ち主は知り合いで、ちゃんと許可は取っている』と言った部分。田舎なので両親の交友関係はある程度把握していますが、自分のまったく知らない人だったからです。

 現場から数百メートル離れた実家に戻り、両親に尋ねたところ、知り合いが山に入る場合は事前に連絡をもらうことになっていたのですが、この日は誰も入る予定がなかったとのこと。この時点で男性の不法侵入は、ほぼクロで間違いないと判断しました」

父親に命じられ、不法侵入の山菜ハンターを尾行し、自宅を特定

 そこで真岡さんは自身の車でワゴン車を待ち伏せし、男性の自宅を特定することに。幸いにも実家があるのはどん詰まりの地域だったため、町道との合流地点付近で待機。ワゴン車が来たのを確認して尾行を開始する。

「正直、この男性のように無許可で山菜採りをする人って多いと思うし、私個人は別に怒ってるわけでもなかったですが、父に『どこのどいつか調べてきてくれ!』って言われたので。

 けど、普通に生きていて誰かを尾行するってまずやらないですよね。
車で後をつけるだけなのですが、探偵になった気分で面白かったです(笑)」

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※画像は生成AIによるイメージです
 ちなみに男性は、町の中心部から程近い住宅街の一角に住んでいることが判明。住所に加え、表札から相手の名前を確認することに成功する。

「最初、山の麓で男性に近付く際、こっそりスマホで撮っており、それと尾行中の車のドライブレコーダーからの映像などと合わせてUSBメモリーに保存。父に渡しました。でも、この時点ではこちらから何のアクションも起こさなかったそうです」

 ところが、それから約半月後、今度は父親が山の麓に停まっているワゴン車を見かける。ナンバーも同じだったため、父親はこの時点で懇意にしている法律事務所に相談。証拠もあって相手の住所も特定できていたため、弁護士に連絡を取ってもらい、対応を任せたそうだ。

男性の妻と息子は平謝りも本人は最後まで不服そうな態度

「後日、弁護士立会いのもと、男性から謝罪を受けました。私も同席したのですが、謝罪といっても形ばかりのもので不服そうな態度でした。でも、それを男性の妻と息子がたしなめ、土下座せんばかりの勢いで謝ってきました。

 小さな町だから警察沙汰になって後ろ指を指されるのを恐れたのでしょうね。こちらから慰謝料などは一切求めませんでしたが、あちらから30万円を支払うとの申し出もあり、父もそれで矛を収めることにしたんです」

 ただし、再び不法侵入を確認した場合、今度は問答無用で警察に通報すると通告。さすがに懲りたのか実家近くの山で男性を見かけることはなくなった。


「それでも父は『ああいう奴はほとぼりが冷めたころにまたやるに決まってる!』と見回りを兼ねた朝の散歩が日課になっています。

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※画像は生成AIによるイメージです
 仕事を辞めてからは家でゴロゴロしてばかりでしたし、少し健康的な生活になったのかも。息子として心配していた部分でもあったので、そこはよかったと思います」

 そもそも無断で人の敷地に立ち入るのも山菜を持ち帰るのも違法。「どうせバレやしない」と軽い気持ちで考えている人は、今すぐその認識を改めるようにしよう。

<TEXT/トシタカマサ>

*  *  *

■そもそも、山菜って採ってはいけないの?

今回のエピソード、真岡さんのケースは30万円という金額の申し出で決着しましたが、そもそも山菜採りは「絶対にダメ」なのでしょうか。

法律上、他人の山林から無断で山菜やきのこを採取する行為は「森林窃盗罪」にあたる可能性があります。森林法第197条では「3年以下の懲役または30万円以下の罰金」と定められており、国有林・私有林を問わず適用されます(出典:e-Gov法令検索)。

実際、2023年には福岡県内で市議会議員(当時)が私有林でコシアブラを無断採取したとして書類送検されるケースも報じられています。最終的には不起訴処分となりましたが、社会的な地位を持つ人物であっても書類送検される事案が現実に起きているのです。

■500円で合法的に楽しめる、山形市の入林許可証

とはいえ、法律上は「無断」がNGなのであって、正しい手続きを踏めば合法的に楽しめる方法もあります。

たとえば山形市では、市内5地区(山寺・高瀬・東沢・滝山・蔵王)の国有林について、1地区500円(1年間有効)の入林許可証を発行しています(出典:山形市)。窓口で申請すれば、その年の山菜・きのこシーズンを合法的に堪能できるというわけです。

山形県は古くから山菜文化が根付いている土地で、県公式サイトでも「山菜の採取に関する注意」ページを設け、採取できる場所の確認や、森林所有者・地域で管理している森林・関係法令で禁止されている場所について丁寧に周知しています(出典:山形県)。
文化として根付いているからこそ、ルールもしっかり整っているというわけです。

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※画像は生成AIによるイメージです
「ちょっと山に入って摘んでくればタダ」――そんな感覚が、じつは30万円の代償になりかねない話です。山菜は本来、その土地の人々が長年培ってきた恵み。近くにルールがはっきりした制度がなければ、道の駅や直売所で地元の人が採ったものを買う、というのも立派な楽しみ方かもしれません。

<再構成/日刊SPA!編集部>

【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。
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