■お見合い、不成立
これは、ある男性会員様のお話です。
お見合いしたけれど、結果は不成立。
年収・職業といった、いわゆる「条件面」では女性が求める水準を十分にクリアしていました。会話の内容も、テンポもとくに問題はなし。
一体、なぜ?
後日、女性側からのフィードバックで判明した理由は、「臭い」でした。
男性は「清潔感には気をつけていたんです。汗拭きシートも持って、デート前にはちゃんと拭いていました」と振り返ります。本人なりに対策していたつもりでした。
しかし、女性が問題にしたのは、彼自身の体臭や汗のにおいではなく、ジャケットの裾から漂う「服の生乾き臭」でした。
本人が必死にケアしていたポイントと、実際に見られていたポイントが、見事にずれていたのです。
夏は、汗や皮脂、衣服の水分といった要素が一年でもっとも顕著に現れる季節です。冬であればやり過ごせたわずかなにおいが、夏の高い気温と湿度によって容赦なく周囲に露呈します。
「清潔感に気をつけているのに選ばれない」という男性が増えるのも、この季節ならではの現象と言えるでしょう。しかし問題は、本人の清潔さそのものではなく、「どこににおいの死角があるか」がわかっていないことにあるのです。
■データが示す男女の感覚差
「そんなことで?」と思う読者もいるかもしれませんが、冒頭の事例はけっして珍しいことではありません。
実際に結婚相談所の仲人へ聞いたところ、夏場に女性が交際希望を出すのを躊躇うポイントとして多く挙がったのは、汗そのもののにおいはもちろんですが、洋服の生乾き臭、口臭、そして良かれと思ってつけている「強すぎる香水や柔軟剤のにおい」でした。
興味深いのは男女間の感覚のズレです。
婚活支援サービスを展開するパートナーエージェントの調査(20~39歳男女360名)によると、「洋服から生乾きの臭いがする」を不潔と感じると回答したのは、女性が58.3%だったのに対し、男性は25.0%。実に33ポイント以上の開きがありました。男性が気にしていない細部を、女性はしっかり感じ取っているのです。
重要なのは、これらがすべて「本人の手入れや配慮によってコントロールできる領域」であるという点です。
無頓着なまま放置された服の生乾き臭や、過剰に振り撒かれた香料は、清潔さそのものより、相手に対する「配慮のなさ」や「生活習慣の乱れ」をダイレクトに伝えてしまいます。
つまり婚活におけるにおい対策とは、単に無臭にすることではなく、「目に見えない細部まで自分を客観視し、リスクを管理できているかどうか」を測る指標になっているのです。
■柔軟剤選びよりも大切なこと
直視すべきは、多くの男性が「におい対策」を「足す行為」に注力してしまっている点です。
現代のビジネスパーソンは、身だしなみへの意識が高い人ほど、女性に好まれる香水や柔軟剤を選び対策を講じています。しかし、婚活の現場におけるにおい審査の本質は、魅力的な香りを競うコンテストではありません。求められているのは、「生活の不快感を徹底的にゼロにする(引き算の)スクリーニング」です。
どれほど良質な香りを足して装おうとも、その下から「服の生乾き臭」や「わずかな口臭」といったマイナス要素が1ミリでも覗いた瞬間、それは単なる「悪臭の補強」になってしまいます。男性側が「いい香りを足した」と満足している一方で、女性側はその下にある根本のマイナスにこそ、自然と意識が向いてしまうのです。
■なぜ「足し算」に集中してしまうのか
ではなぜ、多くの婚活男性が「足し算」をしてしまうのでしょうか。
それは、男性が婚活でやりがちな「加点主義(足し算)のコミュニケーション」に原因があります。
多くの男性は、お見合いやデートの席で「自分の魅力をアピールして、相手に気に入ってもらおう(プラスを足そう)」と考えます。会話のネタを仕込み、自分の実績や優しさをアピールする、その延長線上で「いい香りのする自分」を足そうとする。つまり、戦いにおいて「加点」は必須だと捉えているのです。
もちろん加点は大事です。しかし、これから人生を共にするかもしれない相手を選ぶ場において、女性の視線は「これから一緒に生活できるかどうか」という、より生活者としての視点に自然と向います。至近距離で向き合った瞬間、あなたがどれだけ面白いトークを足し、誠実な態度をアピールしようとも、「デリカシーのない発言」をした時点で、アウトです。「何を言うか」よりも、「何を言わないか」に、人間性はでるものなのです。
臭いも同じです。どれだけいい香りの柔軟剤を選んでも、ミントを口に放り込んでも、引き算しきれなかった「服の生乾き臭」や「口臭」が漂った時点で、その努力は一瞬で印象から消えてしまいます。
男性が「足し算」に必死になっている一方で、見落とされがちな「引き算」こそが、実は最初の関門になっている。この構造的なズレに気づかない限り、どれだけ婚活テクニックを磨いても2回目のデートに繋がることはありません。
■「臭いか、臭くないか」の二択ではない
もちろん、男性が「引き算」をしていないわけではありません。
しかしこの「引き算の失敗」が何よりも根深いのは、多くの男性が「臭(くさ)くなければセーフ(無罪)」という点を自分の中の基準にしてしまっている点にあります。
男性の多くは、自分の体臭や汗のにおいが周囲に漂っていないか、というレベルの「分かりやすい悪臭」のチェック(引き算)は行っています。汗を拭いていた彼のように、それで「よし、変なにおいはしない、セーフだ」と安心してしまうのです。
しかし、女性側のスクリーニング基準は「臭いか、臭くないか」の二択ではありません。お見合いの至近距離において見られているのは、「なんとなく漂う(=違和感の有無)」です。本人が「臭くないからセーフ」と胸を張っているその横で、わずかに混ざり合う柔軟剤と生乾き臭の違和感は、女性側に「清潔感に気を使っていると言う割に、どこか生活がだらしなそうだな」という、直感的なマイナス印象を与えてしまいます。
つまり必要なのは、「自分が思っている『これくらいでセーフ』という身だしなみの基準そのものが、婚活の現場ではすでにアウトかもしれない」という、自分が思っている以上に厳しく、細部のノイズを排除する意識を持つことなのです。
■「セーフの基準」を疑ってみる
相手のマイナスばかりに目を向けていては、関係は前には進みません。しかし、お互いの日常を重ね合わせるための「引き算のすり合わせ」は必ず行われるのです。
だからこそ、まずは自分が無意識に敷いている「このくらいでセーフだろう」という身だしなみのラインを一度リセットし、相手が本当に求めている「ノイズのない清潔感」に意識を向ける必要があります。その目に見えない細部への配慮こそが、お互いの距離を縮める最初の一歩になるのです。
婚活における清潔感の正体とは、自分では気づきにくい死角を一つずつ潰していく、地道なセルフマネジメントです。
どれだけ魅力をアピールしても、一つのノイズが、すべての印象を塗り替えてしまう。その構造的なズレに気づけるかどうかが、婚活の明暗を分けているのです。
選ばれるための努力というと、少し重く聞こえるかもしれません。
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平田 恵(ひらた・めぐみ)
タメニー 広報
立命館大学卒業。新卒で人材派遣会社に入社し、入社後わずか7カ月で課長に昇進。その後約5年間、高校野球のリポーターなどフリーランスとしてさまざまなメディアの現場を経験。再び人材業界の勤務を経て、2016年9月にタメニー(旧パートナーエージェント)に未経験広報として入社。2019年8月に人事部マネジャーへ異動(広報も兼任)、2020年10月からグループ広報の立ち上げをひとりで行う。2023年第1子を出産し、産後8週で仕事へ復帰。結婚式や婚活のプロとして数多くのメディアへ出演中。
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(タメニー 広報 平田 恵)

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