レビュー

知人同士のふたり。仲のよさそうなパートナーだと思っていたけれど、あるときから一緒にいるところを見かけなくなる。

片方が転職してから忙しくなり、少しずつすれ違いが増えていったらしい。残念だけどそんなものかと、なんとなく納得して終わらせてしまう。
毒親に苦しめられる話、逆に「正解」的な親子愛に感動する話。煽情的な不倫で夫婦関係が粉々に砕ける話。人びとが語りやすいのは、そういう種類の共有しやすいストーリーだ。だからこそ、メディアにも作品にもネットにも、そのようなものが溢れかえる。
一方で、「パートナーに関する葛藤の物語は語りづらい」。自分にパートナーがいなくても、かつての経験、あるいは周囲の関係性のなかにはありふれているはずだ。しかしそれは、なぜだか他人に伝わりにくい気がしてしまう。多様なパートナーシップがあるところで、「あなたのところはそうなのかもね」以上の感想が出てこない。ただ愚痴を聞いてもらって解消される、その程度に思われがちなのかもしれない。
だからこそ本書は、一つひとつ異なるかたちをした「小石」を集めるかのごとく、「パートナーシップが小説でいかに描かれてきたか」に焦点をあてる。
隣にいる関係性を豊かなものにできれば、暮らしの色も変わっていく。そこにあるのは新しい「家族」のかたちであり、幸せの可能性だ。
受け取りやすい物語に流されず、沈黙のなかに消えていくパートナーシップを回復するために、本書の「小石」たちを抱きしめながら、身近な関係を考えなおしていきたい。

本書の要点

・シングルマザーの物語が溢れている一方で、「なぜ今、物語において、父は語られづらいのか」という問いを考えたい。
・社会の個人主義化が進むなかで、家族、パートナーシップにおいて、新しい対等な関係を結ぶことができればよいのではないか。
・「男性的な働き方」は社会の主流のままであり、それが夫婦間のディスコミュニケーションを生んでいる。



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