前方にいる車との車間距離を極端に詰めるなど、危険行為で相手を威嚇する「あおり運転」。何気なく車を運転している時に、ピッタリと後ろの車に張り付かれ、怖い思いをしたことがある人も多いのではないだろうか。

非常に危険なあおり運転は、2020年6月の道路交通法改正で「妨害運転罪」として正式に犯罪と位置づけられた違反行為だ。警察庁によれば、著しい交通の危険を生じさせた場合は最大で5年の拘禁刑、一発で免許取消し(欠格期間3年)という重い処分が科される。

それだけ重大な犯罪であるにもかかわらず、SNSやニュースでは新たなあおり運転の被害が報告されている。

今回、実際に体験したあおり運転の被害を教えてくれたのは、都内在住の柴田ひろこさん(仮名・20代)。柴田さんは、父親の影響でバイクにハマり、クルーザーモデルの新車を買ったばかりの初心者ライダーだ。はじめて一人でツーリングしている途中に、悪質なあおり運転の被害にあってしまったという。

「バイク初心者の22歳女性」が執拗な“あおり運転”を受け号泣...の画像はこちら >>

ノロノロ運転の軽自動車が豹変

「先月、夏休みを利用して北関東にバイクで一泊二日のソロツーリングに出かけた時に、地元の車からあおり運転を受けました。まさか、自分があおり運転の被害にあうとは思っていなくて、パニックになってしまい事故を起こすところでした。いま思い出しても、ゾッとします」

バイクに乗っている時に、車からのあおり運転被害にあった柴田さん。当日、あおり運転を受けるまでの詳細な足取りを振り返ってもらおう。

「木曜の朝に東京を出て、お昼ごろには宿泊する旅館がある県に入っていました。チェックインが17時だったので、観光スポットを回ってから旅館に行こうと思っていたんです。お昼ご飯を食べた後に、行きたかった神社に向かうため田舎道を走っていました。
1時間くらい走行していると、前を走っていた軽自動車に追いついたんです。30キロくらいのノロノロ運転で、明らかに遅かったので、追い越し可能な道だったこともあり追い抜きました。すると、軽自動車が猛スピードで近づいて、ピッタリと後をつけてきたんです」

あおり運転は延々20分間続いた

遅い車を追い越したタイミングで、まさかのあおり運転にあってしまった柴田さん。悪質なあおり運転は、20分近くも続いたという。

「さっきまでノロノロ運転だった軽自動車が、スピードを上げてついてきたので、直感であおり運転だとわかりました。ずっと後ろにピッタリとつけてくるので、ハザードを点けてバイクのスピードを緩め左に寄ったんです。追い抜いてくれるのかと思ったのですが、その軽自動車もスピードを緩めて後ろにピッタリとついてきました。停車したら何をされるかわからないので、怖かったのですがあおられたまま、信号もない田舎道を延々と走り続けました」

長時間にわたり、執拗なあおり運転の被害にあった柴田さんは、走行中にサイドミラーで運転手の顔を確認すると、さらに恐怖心が大きくなったという。

「どんなドライバーなのかミラーで確認すると、無精髭でヨレヨレのTシャツを着た40代くらいの男性でした。軽自動車は古いタイプで、車内も汚いのがミラー越しでも分かりました。周りは民家も少ない場所ですし、何をされるかわからない恐怖心で、泣きながらバイクを運転していました」

コンビニに現れた救世主たち

恐怖のあおり運転に遭遇してしまった柴田さんだが、突如として救世主が現れることになる。柴田さんを救ってくれたのは、仲間でツーリングに来ていたライダーたちだった。

「20分ほどあおられながら、何もない田舎道を走行していたのですが、いつの間にか民家やコンビニが点在するエリアに入りました。ここなら、周りの人に助けを呼べるし、大丈夫だろうと思いコンビニに入ったんです。
すると、その車も同じく駐車場に入ってきました。襲われるのではないかと恐怖を覚えたのですが、3人の同世代の男性がわたしに声をかけてくれたんです。反対車線を走っている時に、わたしがあおられているのを発見してくれたそうで、Uターンして助けに来てくれたと言っていました」

わざわざUターンしてまで、柴田さんを助けに来てくれた若いライダーたち。しかも、後ろからしっかりとドラレコとスマホで、柴田さんがあおり運転の被害にあっているところを撮影してくれていたという。

「そのライダーたちは、わたしを保護してくれただけでなく、軽自動車の男にも話をつけに行ってくれました。はじめは、その男はとぼけていたそうですが、一人の男性がスマホで撮影した動画を見せると、自分があおり運転をしていたことを認めたそうです。わたしは、バイクにドラレコなど撮影する機材を装備していなかったので、本当に助かりました。理由を聞くと、『女のくせに良いバイクに乗って、生意気だったからあおった』と話したと教えてくれました。頭にきたので、すぐに警察を呼んだんです。3人のライダーたちも暑いのに待っていてくれて、警察官に状況説明を一緒にしてくれました」

理不尽な悪意に立ち向かうためには…

その男性たちは、証拠となる動画を警察に提出し、柴田さんのサポートを最後までしてくれたという。

「3人のライダーたちは、旅の途中だったのにわざわざ時間を割いてくれて、本当に感謝しきれません。それだけに、つまらない理由であおり運転をしてきた中年ドライバーを許せない気持ちになりました。
わたしは、翌日の予定をキャンセルして、地元の警察署に出向いて状況説明して、詳細なあおり運転の理由を聞きました。その犯人は、仕事がうまくいかない40代のニートで、優雅にツーリングしているわたしが気に入らなかったそうです。その理由を聞いて、絶対に許さないので裁判も起こしたいと警察官に相談しました。弁護士にも相談していますが、徹底的に犯人を追いつめてやるつもりです」

柴田さんは、偶然にも周囲のライダーが助けてくれ、動画の証拠があったため、加害者を追い詰めることができた。しかし、都合よく助っ人が周りにいるとは限らない。ライダー自身もドライブレコーダーを装着するなど、理不尽な悪意から身を守るための自衛が不可欠な時代になっている。

<TEXT/高橋マナブ>

【高橋マナブ】
1979年生まれ。雑誌編集者→IT企業でニュースサイトの立ち上げ→民放テレビ局で番組制作と様々なエンタメ業界を渡り歩く。その後、フリーとなりエンタメ関連の記事執筆、映像編集など行っている
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