冬のある日、閉じられた城の中で、人質少年の密室殺人が起きる。犯人はどうやって犯行に及んだのか。


 6月19日公開の映画「黒牢城」(こくろうじょう)は、戦国時代、織田信長に反旗を翻した荒木村重(本木雅弘)が籠城する有岡城を舞台にした時代劇ミステリーである。 原作は、第166回直木賞受賞と「このミステリーがすごい!」第1位を獲得した米澤穂信の人気小説。第79回カンヌ国際映画祭カンヌ・プレミア部門出品作品として上映され、現地でスタンディングオベーションを受けた。黒沢清監督の初時代劇作品だ。


 この作品には、注目点がいろいろある。


 まず、第一の注目点は、事件が敵勢に取り囲まれた「城」で起こること。撮影は、太秦のセットとともに姫路城はじめ実在の城や寺社でも行われた。裏切り者がいるのか。犯行の動機は何か。歴史的建造物ならではの薄暗さ、石の床の冷たさなどが、疑心暗鬼に陥る有岡城の人間たちの緊迫感をよく伝えている。


 第二の注目点は、その謎解きをするのが、村重が地下牢に閉じ込めた織田方の天才軍師・黒田官兵衛(菅田将暉)ということ。鎖につながれた官兵衛は、「知恵を貸せ」という村重の話を聞いただけで驚くべき推理をしてみせる。

その場を動かず、知り得た情報のみで事件の真相を見抜く官兵衛は、敵対する村重の奇妙なバディーであり、時代劇には珍しい「安楽椅子探偵」なのだ。


 なお、菅田は現在、大河ドラマ「豊臣兄弟!」で竹中半兵衛役。戦国の「両兵衛」「二兵衛」ともいわれる名軍師2人を同時期に演じたことになる。


 有岡城では、その後も、敵将の首の変貌、新たな殺人と宝物の紛失など、春、夏、秋と立て続けに奇怪な事件が起こる。鍵になるのが、城内の人間関係だ。村重を支える妻千代保(吉高由里子)、腹心として家臣をまとめる荒木久左衛門(青木崇高)、忠義心が強い側近の乾助三郎(宮舘涼太)、鉄砲の名手・雑賀下針(柄本佑)、影のごとく主君を助ける郡十右衛門(オダギリジョー)、僧侶で密使の無辺(荒川良々)、剣豪の秋岡四郎介(ユースケ・サンタマリア)などなど。 豪華キャストがくせものを演じ、各人が城での自分の役割をよく心得、働く。それだけに真相がわからなくなる……。


 本木は、「殺さず」の信念で官兵衛らを生かしながら、籠城戦の決着に苦悩する殿の人間味をチラ見せする。村重が、官兵衛を約1年、幽閉したのは史実だ。しかし、なぜ、自分を重用する信長に謀反を起こしたのかは諸説あり、謎でもある。 歴史に謎を残した武将・村重と官兵衛が見つけ出す驚愕の真相を確かめたい。


(ペリー荻野/時代劇評論家)


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