【再発見 ちょうど10年前のテレビ】#10


 女優・松岡茉優を強く認識したのは、2013年の朝ドラあまちゃん」(NHK)だ。地元アイドル「GMT47」のメンバー、埼玉出身の入間しおり役で顔と名前が知られるようになった。


 次が翌年の時代劇「銀二貫」(同)だ。あだ討ちで父を失った鶴之輔(林遣都)が、大阪で商人として生きていく。松岡が演じたのは、鶴之輔を慕いながらも孤児の自分を育ててくれた養母のために、その思いを封印して生きる真帆だ。松岡の抑えた演技によって真帆のけなげさが際立っていた。


 15年、今度は現代劇の「限界集落株式会社」(同)に出演した。舞台の「止村」は、まさに廃村ギリギリの状態。農家の老人たちのある者は病に倒れ、ある者は村を去っていく。そんな村に帰ってきたのが大内正登(反町隆史)だ。かつて有機農業の夢に破れ東京へと逃げた正登だが、母親(長山藍子)や娘の美穂(松岡)と共に再び農業に専念する。このドラマでの松岡は、田舎と都会の間で揺れる“屈折女子”がこれほど似合う若手女優はいないと思わせた。


 さらにこの年、松岡は深夜ドラマ「She」(フジテレビ系)で連続ドラマ初主演を果たす。舞台は高校。

学年一の美少女・あづさ(中条あやみ)が突然姿を消してしまう。学校側は生徒から事情を聴くが、原因や行き先を知る者はいない。


 しかし、ジャーナリスト志望の涼子(松岡)が真相を探るうち、あづさだけでなく、クラスメートたちの秘密も明らかになっていく。高校生同士のリアルな距離感と関係性を見せた松岡の好演。ドキュメンタリーのような手持ちカメラの映像。また、問題の当事者が不在のままの推理劇という点も異色だった。


 そして今からちょうど10年前の16年6月、今度はNHKでの連ドラ初主演を実現させた。それが「水族館ガール」だ。主人公の由香(松岡)は商社に入って3年目のOL。上司(木下ほうか)から「使えないヤツ」の烙印を押され、水族館への出向を命じられる。


 由香は、水族館といえば「生きもの好きにはたまらない職場なんだろうなあ」くらいに思っていた。やがて24時間全力で命と向き合う大変な仕事だとわかってくる。

担当することになったイルカとのコミュニケーションも難しい。厳しいチーフ(桐谷健太)や先輩(西田尚美)らから叱られ続ける毎日だ。


 商社を追われ、水族館にも簡単に溶け込めないヒロイン。このドラマは、いわば自分の「居場所」探しの物語だった。それは単に生活の糧を得る職場という意味ではなく、自分が自分であることを実感できる「場」のことだ。松岡自身にとっても、どんなドラマでも存在感を放つ若手実力派女優から、ドラマ全体を引っ張る無類の演技派女優への本格的トライだった。


 今年はドラマ「ダウンタイム」(Netflix)の世界配信が控えている松岡。美容整形業界に飛び込む天才形成外科医の登場が待ち遠しい。


(碓井広義/メディア文化評論家)


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