【再発見 ちょうど10年前のテレビ】#13
今からちょうど10年前の2016年7月、長谷川京子主演「ふれなばおちん」(NHK BS)が放送されていた。原作は小田ゆうあの同名漫画だ。
長谷川は、かつてファッション雑誌のモデルとして若い女性の支持を集め、その人気ぶりが「ハセキョー現象」といわれた。そんな彼女も放送時は30代後半。実際に2児の母となり、堂々の人妻女優となっていた。
夏は家族と一緒に社宅で暮らしている。自分のことよりも家族を最優先する毎日だ。中学生の娘(山口まゆ)から、「お母さんて、それでも女?」などと叱られたりするが、平穏な人生だった。
ところが、同じ社宅に住む夫の同僚の妻が若い男と駆け落ちしてしまう。それをきっかけに夏の気持ちが揺れ始めた。
このドラマで“駆け落ち妻”を演じていたのが戸田菜穂だ。彼女もまた私生活では2児の母であり、大人の女性としていい味を出していた。男と泊まった旅館から夏に電話をしてきて、「思い出したの。女として満たされるって、こういう感じだったなって」などとのたまうのだ。夏は「家族への責任」を持ち出すが、到底かなわない。長谷川と成田の恋模様はもちろんだが、長谷川と戸田の“人妻女優ガチンコ対決”が大きな見どころだった。
人妻の恋がテーマのドラマといえば、14年に放送された上戸彩主演「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」(フジテレビ系)が有名だ。専業主婦の孤独、夫婦の気持ちのすれ違いなど、夫のある女性が「なぜ不倫に至るのか」が描かれた。
しかし、「昼顔」の2年後に登場した「ふれなばおちん」は、いわゆる“不倫ドラマ”とは少し違う。まず、「不倫」自体ではなく、「ときめきの回復」を描いていること。
次に、夫を悪人にしていないこと。夏の夫はモラハラ夫でもDV夫でも冷酷な配偶者でもない。仕事熱心で家族を大切に思っており、妻をないがしろにしている自覚も薄い。だからこそ、「穏やかだが、満たされない生活」が浮き彫りになる。
脚本は後に朝ドラ「おかえりモネ」(NHK)や「お別れホスピタル」(同)を手掛ける安達奈緒子。本作は女性の“自己回復ドラマ”における、隠れた佳作だった。
(碓井広義/メディア文化評論家)

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