【再発見 ちょうど10年前のテレビ】#14
今からちょうど10年前の2016年7月、WOWOWのオリジナルドラマ「沈まぬ太陽」が後半に突入していた。
原作は作家・山崎豊子の代表作の一つ。
最大の特色は、何より“連続ドラマ”であることだ。しかも全20話であるため、長い年月の物語を丁寧に描くことが可能だった。16年はWOWOWの開局25周年にあたっており、記念としてこの超大作が実現したのだ。
第1話は「1985年8月12日」の羽田空港から始まった。御巣鷹の尾根での日航機墜落事故が起きた日だ。「国民航空」の大阪行き123便に乗り込むクルー、順調な飛行、突然の破裂音、客席のどよめき、操縦室内の様子などが描かれた後、機影はレーダーから消える。
こうして実際に起きた航空機事故を正面からドラマ化することは、民放では困難だ。WOWOWだからこそと言っていい。
この後、物語の舞台は事故から24年前の1961年へと移る。国民航空に勤務する恩地元(上川隆也)は、労働組合の前委員長・八馬(板尾創路)の独断で、新たな組合委員長にされてしまう。
整備部門を視察した際、恩地は驚いた。人員不足に加えて、短時間での整備を強いられており、「いつ事故が起きてもおかしくない」状態だったのだ。生真面目で正義感の強い恩地は、安全運航を最優先する主張を繰り返して経営陣の反感を買う。その結果が約10年もの海外勤務、つまり不当な報復人事だった。
ドラマの後半は初回の冒頭で描かれた、御巣鷹の尾根の墜落事故からのスタートだった。長い“海外追放”を経て、ようやく帰国した恩地が、今度は「遺族係」として辛酸をなめることになる。
主演の上川は、かつて同じ山崎豊子原作の「大地の子」(NHK、1995~96年)で注目された俳優だ。「そんなに筋ばかり通していたら大変な目に遭うぞ」と見る側が心配になる恩地を熱演。タンザニアやドバイでのロケ映像もスケール感と臨場感を生んでいた。
大河ドラマ「軍師官兵衛」も手がけた脚本の前川洋一は、恩地を裏切ることで出世していく行天(渡部篤郎)や、恩地を追い込む経営幹部・堂本(國村隼)など、カタキ役をしっかり造形することで、主人公をより際立った存在にしていく。
墜落事故の背景。組合運動。海外支店たらい回しの刑。政治家の利権。役人の暗躍。無責任な経営者。全体はフィクションでも、そこにはドラマでしか描けないリアリティーがある。「これじゃあ、空の安全も危うくなるかも」とさえ思わせた。そんな「命を預かる会社」の内幕も含め、オトナが見るべき力作だった。
(碓井広義/メディア文化評論家)

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