高市首相の答弁拒否や事務所を巡る疑惑で審議が空転するなど、会期末ギリギリまで大モメの国会だが、石破茂前首相の肝いりだった「防災庁」の設置法は、13日の参院本会議で混乱なく静かに成立した。「防災庁」は今年11月にも発足するという。


 災害対応の司令塔となる新組織の設置は、昨年9月に自民党内抗争に敗れて引きずり下ろされた石破氏が、総裁選時から打ち出していた公約。その実現は、在任1年と短命だった石破氏にとって“唯一”と言っていいレガシーだ。高市早苗首相は就任前、「防災庁」に否定的だっただけに、「石破首相の退陣で次に引き継がれるのか危ぶまれた」(内閣府関係者)が、設置法成立までこぎつけた。


「ようやく一歩踏み出したと、石破氏は胸をなでおろしていることだろう」(石破氏周辺)


「防災庁」は内閣府防災担当を改組し、首相をトップとする内閣直属の独立組織となる。専任の防災相を置き、防災施策の基本方針策定や、大規模災害に対処するための企画立案・総合調整を担当する。事前防災から災害対応、復旧・復興まで一貫して取り組むという。


 職員数は現在の内閣府防災担当の220人から352人に大幅拡充。防災関連の施策を行っている省庁間の縦割りを排すため、防災相には各府省庁への勧告権が付与され、府省庁は勧告を尊重する義務が課される。


 本庁以外に地方機関の「防災局」を、2027年度以降に2カ所設置する方針で、防災人材の育成に向けた研修や研究を行う「防災大学校(仮称)」も設置される見通し──と、立派な箱ができあがったように見えるが、防災の専門家の受け止めは微妙。「防災庁ができたのは嬉しいが、あまり期待できない」といった厳しい声も聞こえてくる。司令塔なのに、権限が曖昧だというのだ。


■勧告権には強制力なし


「勧告権と言うと権限がありそうに聞こえますが、強制力はありません。

勧告の尊重も努力義務でしかない。司令塔と言っても現実には各府省庁の『調整役』に留まり、各府省庁を動かすことはできないでしょう。従来の霞が関の発想の枠内にとどまる組織になってしまった」(民間の防災アドバイザー)


 職員数が大幅増となっても各府省庁からの出向組が中心で、プロパーの専門職集団にはなっていない。


「大規模災害時は指揮命令系統の1本化が重要ですが、大臣は防災の専門家ではないし、短期間で交代してしまいます。防災庁設置検討の会議では、専門性を持った『防災監』のような人を置いて指揮すべし、という意見も出たと聞きました」(前出の防災アドバイザー)


 災害の現場となる地方自治体の位置づけもはっきりしていない。


「被災した自治体の首長が現場を最も分かっている。総理が首長に指揮命令権限を与えて、その調整を防災庁が担うような形で、首長が思う存分動けるようにして欲しかった」(災害を経験した自治体の元首長)


 発災後についても、復旧・復興はどうしてもインフラ整備などハード部門の国交省を中心に組み立てられるが、「災害関連死の多さなどを考えると、健康面のケアが重要で、厚労省も絡むべきだと思います」(前出の元首長)。


 箱はできても魂はこれから。唯一のレガシーなんだから、総理を辞めても石破氏は防災庁を育てる責任がある。


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