【桧山珠美 あれもこれも言わせて】


 夏ドラマが出揃い始めた。今期の話題作といえば3年前、話題になったTBS系日曜劇場「VIVANT」と28年ぶりに連続ドラマで復活する「GTO」だが、その2作の放送を前に、現時点でおすすめ作品を。


小池栄子の力量を感じる「さよならノワール」


 まずは「さよならノワール」(フジテレビ系)。初回放送後、個人視聴率1%台の爆死スタートなどと揶揄されたが、今の時代、視聴率だけでドラマの価値を測るのは無理がある。TVerや配信サービスで一気見する人も多いわけだし。だから視聴率だけで良し悪しを判断するとか、数字だけを根拠に、しかも見てもいないのに「つまらない」と決めつけるのはどうなのか。


 そこで改めて「さよならノワール」。主演は小池栄子。先日までNHK「ムショラン三ツ星」で刑務所の栄養管理士を演じていたと思ったら、今度は犯罪被害者支援室に所属する警部補。コメディーから一転、重厚なヒューマンドラマへ。異なる役柄を見事に演じ分けるところに小池の力量を感じる。


 相棒を務めるのは北香那。朝ドラ「ばけばけ」では勝ち気なお嬢さま役で注目を集め、夜ドラ「替え玉ブラヴォー!」ではコメディエンヌとしての才能を開花。今、もっとも勢いのある若手だ。

2人を筆頭に脇を固める俳優陣も岡山天音味方良介、真島秀和と濱尾ノリタカ、荒川良々利重剛と粒揃い。


 しかも脚本は「白い巨塔」「緊急取調室」「フィクサー」など数々のヒット作を世に送り出してきた井上由美子。演出はフジの黄金期を支えた河毛俊作。この組み合わせだけで胸が高まる。警察ドラマは数あれど、犯人を追うのではなく、被害者に寄り添う姿を軸に据えたところは新鮮だ。



蒼井優・中島歩コンビの「Tシャツが乾くまで」は見る価値あり!

 もう1本はTBS系「Tシャツが乾くまで」。これはもう蒼井優と中島歩の芝居を見るだけでも価値がある。2人の演技はあまりにも自然でその人物の人生をのぞき見している感覚になる。


 このドラマの魅力は何げない会話や沈黙の中から少しずつ人物の心情が浮かび上がってくるところにある。生方美久の繊細な脚本と日常の小さな変化をすくい取る土井裕泰の演出がいい。


 3本目は日本テレビ系「告白-25年目の秘密」。ここでの注目は松村北斗

アイドルグループSixTONESのメンバーとして活動する一方で、俳優としても着実に評価を高めている。感情を大きく表現するのではなく、心の奥に抱えた葛藤や痛みをわずかな表情や声の変化で伝える。一人の女性を25年間思い続けるというよく言えばピュア、一歩間違えばストーカーと言われかねないスレスレの役どころを絶妙に演じている。


 今夏のドラマはミステリーやサスペンスが多いのが特徴だが、謎解きや考察だけがドラマの魅力ではない。心を掴むのは物語の力と俳優の芝居だ。


(桧山珠美/コラムニスト)


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