【私が生きるクスリ】


 森次晃嗣さん(俳優/83歳)


 7月10日は「ウルトラマン」がテレビに登場して60年を迎えた「ウルトラマンの日」。そしてシリーズの最大のヒット作といえば、来年で60周年を迎える、♪セブン セブン~が大流行したモロボシ・ダンの「ウルトラセブン」だ。

主演の森次晃嗣さんが藤沢市内で経営するカフェレストラン「ジョリーシャポー」を訪ねた。店内にはファンがプレゼントしてくれたというウルトラセブングッズがたくさん飾られている。


  ◇  ◇  ◇


「ウルトラセブン」は中国でもすごい人気らしくてね。今年のGWは大変でした。お店の前からずっと後ろの方まで人が並んじゃって。日本人より中国の方が多くて。半分以上がそうでしたね。近所の人には「何かあったんですか」って言われました(笑)。


 セブンをやってよかったか? 今ではよかったと思っています。最初は60年も愛されるような作品になるとは思ってもいなかった。モロボシ・ダンは宇宙人です。それが地球を守るために人間になって闘う。

セブンはそういうシンプルさが多くの人に広く受け入れられたんだと思います。


 でも、セブンの後は何に出てもウルトラセブン、モロボシ・ダンと言われてね。そのイメージを消すことができなかった。あの頃はどっちに見られても嫌でね、そう見られることが許せなかった。それが40年以上も続きました。


 吹っ切れた時は60歳を過ぎてたかな。もう何を言われようが、僕は違う番組で違う役を演じているんだから、どう見られてもいいと思えるようになった。視聴者にとってはモロボシ・ダンやセブンのイメージで見ていても、演じている僕が殿様の役やヤクザの役をやっていることに納得していればいいと、割り切ることができるようになった。


 僕の基本的な考え方は自然体。


 例えばお酒を飲むにしても仲のいい友だちと酌み交わす。若い時に比べて酒量もだんだん減るから、控えめに。人付き合いでも北海道出身のカラーなのか、無理してお世辞を言うこともないし、逆にお世辞を言う人も受けつけないんです。

嘘っぽいなというのはわかるし、かといってそれを責めようとも思わない。そういう人と無理に付き合う必要はないと思っています。無理なく、愉快に一日一日を送ることを心がける。何ごとも自然体です。


■時代劇に多数出演、師匠は萬屋錦之助さん


 セブンの後はホームドラマ的な作品に出て、30代手前からは時代劇に数えきれないくらい出ました。(撮影所がある)京都に行くようになったきっかけは大川橋蔵さんの「銭形平次」です。3年くらいやりました。それをやりながら京都でのしきたりをしっかり覚えました。太秦には京都映画、大映、東映の3つの撮影所があって封建的なところもあるし、スタッフは職人肌です。主役でもゲストでも扱いは同じ。まずそういう人に好かれることが大切です。挨拶の仕方や付き合い方については厳しいですから。


 時代劇では萬屋錦之介さんが師匠だと思っています。言葉はもらっていないけど、作品はなるべく見るようにし、錦之介さんの演技を見よう見まねで覚えました。時代劇は所作ごとが多い。着物の着方から二本差しの差し方、草鞋の履き方まで基礎が大切です。1年や2年では覚えられない。今はそれを知らないで時代劇をやっている若い人が多いですけどね。


 カツラが似合う? そうですね。自分でもかぶるとスーッとハマるような感覚はあります。カツラは合わない方ではない気がします。


 東野英治郎さんの時代の「水戸黄門」には50本くらい出ていると思うけど、ホント、数えるのも嫌になるくらい時代劇はやりました。


 時代劇の他に舞台もやっていたので、ずっと東京と京都を行ったり来たりで一日に新幹線に3回乗ったこともある。向こうで舞台がある時は3カ月は帰ってこれなかったですね。

それでも正月には帰ってきたのかな。帰ってくると家の壁紙が変わっているなんてこともしょっちゅう。


 子供は3人ですが、僕の仕事のことをどう理解していたのかは疑問です。今振り返ると子育ての時期に父親がいないわけで、言われたことはないけど、迷惑をかけたんだろうなと思います。



■キャベツ、レタスをバリバリ食べて大病知らず

 そんな日々を過ごしても病気一つしない、体を壊すことがなかった。


 歩いたり自転車に乗ったりして体は鍛えたけど、ハードなことはやっていません。体の基礎的な強さがあるのかな。この前、骨密度を調べてもらったら80代なのに、60代の骨だと言われました。


 食べ物はとにかく野菜を食べますね。北海道育ちで子供の時からとにかく野菜を食べた。ジャガイモ、トウモロコシ、トマト、ナス、キュウリ……そんなものばかり食べて育った。菜食主義ではないけど、好んで食べるのは肉よりも野菜。

草が好きなんです。それは今でも変わらなくて、レタスやキャベツはドレッシングをかけてバリバリ食べます。やはり北海道時代の味が体に染みついているんだと思います。


 病気といえるのは血圧がちょっと高いのと、30代に痛風になったことかな。血圧と痛風の薬は今でも飲んでいますが、それくらいです。


 店でシャンソンも歌っていたけど、コロナでやらなくなって今では「歌を忘れたカナリア」ですね。この間久しぶりに常連の方20人くらいの前で歌ったけど、やはり疲れます。若くないことを実感しました。でも、僕に会いに来た人はまた変身するんじゃないかと思ってるみたいで(笑)。頼むよ、もう80歳過ぎているんだから。


 ただ、楽しくないと生きている価値がない。一日一つでもいいから楽しいことがあったと思えたらいいな、明日も迎えられるかなと願いつつ毎日を過ごしています。


(聞き手=峯田淳)


▽森次晃嗣(もりつぐ・こうじ) 1943年、北海道滝川市出身。67年、特撮ドラマ「ウルトラセブン」で主演。以後、ウルトラシリーズ、「子連れ狼」など数々の時代劇、映画などに出演。


編集部おすすめ