国会軽視の「答弁拒否」から1カ月。ようやく疑惑の渦中にある地元秘書の「陳述書」が出てきた。


 高市首相が22日、自身の公設第1秘書である木下剛志氏の陳述書を衆院予算委員長に提出したのだ。


 陳述書はA4サイズで5ページにわたる長文だ。自民党総裁選や衆院選での中傷動画の作成・拡散疑惑についてが1ページ半、暗号通貨「SANAE TOKEN(サナエトークン)」発行に関与した疑惑については3ページ半を割いて説明し、発行元の「NoBorder」社からの8ページの提案書も付けてある。その内容は、高市首相の国会答弁と齟齬をきたさないよう、苦しい言い訳に終始している。


■「記録がない」「記憶もない」のオンパレード


 中傷動画については、「作成・発信したことも、第三者に依頼したこともない。そのような動画を一度も見たことがない。存在するかも承知してない」と完全否定する一方で、動画作成者の男性とのオンライン会議の存在を認めながらも、「顔とお名前のはっきりとした記憶がなく、直接お会いしたことのない方については、私としては『面識はない』としか申し上げようがない」と強弁するのだ。


 動画作成への謝意を伝えたとされるショートメッセージのやりとりについても、「選挙期間中の大量のやりとりの一つ一つを覚えているわけではないが、記録も記憶もない」と言い張る。


 サナエトークンについては「『サナエトークン』という名称の暗号資産の発行と取引について、事前に説明を受けたことも承認をしたこともない」と断言。あくまで「国民の声を広く聞くための企画」で、「アプリ内のポイントのようなものだと認識していた」と弁明した。しかし、NoBorder側とのオンライン会議で「暗号資産」という言葉が使われたことについては、「当該企業の方がそう言っておられるのであればそうなのかもしれない」としつつも、「私は聞いた記憶はありません」「私自身インターネットに関する技術について詳しくないので説明内容を覚えていない」と釈明。週刊文春が公開した音声についても「記憶がなく、自分の声なのか確証を持てない」と逃げる。


 とにかく、知らぬ存ぜぬ、記録がない、記憶もないのオンパレードなのだ。



秘書の参考人・証人喚問が必要

「陳述書」答弁が問題となった先月22日の衆院予算委員会で、唐突に「近日中に提出」と委員長に懇願したのは高市首相だ。その後、放置していたのに、1カ月も経ってから出してきたのは、25日まで延長された国会日程を睨んでのことだ。


「放送法に関する総務省文書の『捏造発言』でもそうだが、総理は強弁した後、逃げる。陳述書についても、本人はいつものごとくフェードアウトできると思っていた。しかし、24日に衆院予算委の集中審議が設定され、そこで陳述書について質問される可能性が出てきたので、それに間に合うタイミングで出さざるを得なくなったのでしょう」(自民党関係者)


 だが、誰が読んでも陳述書は「言い訳の言い訳」(答弁拒否に遭った中道改革連合の後藤祐一衆院議員)だから、この問題を追及してきた野党は納得していない。


 中道の長妻昭衆院議員は22日の予算委理事懇談会で、秘書の参考人招致を重ねて要求。小川淳也代表も「核心部分は『記憶がない』に終始し、疑惑の解明、終結にはほど遠い。ご当人に参考人として国会に出席いただくことが重要ではないか」とのコメントを出した。


 共産党の小池晃書記局長も「疑惑に全く答えていない。秘書本人に国会に出てきてもらい、参考人や証人の形で話を聞かなければならない。一問一答で疑惑に答えていただくことが必要だ」と言っている。


「ホントにバカなことをしたもんですよ。国会では答弁を議事録に残すことに意味があり、陳述書を答弁に代えてくれだなんて聞いたことがない。自民党内でも散々で、誰も総理をかばえない」(前出の自民党関係者)


 こんな陳述書の内容では到底、真相解明には不十分。24日の集中審議で幕引きとはなりそうにない。身から出た錆で提出に追い込まれた結果、国会最終盤で疑惑について再び注目度が高まったのも高市首相には誤算だろう。内閣支持率下落で野党は攻勢を強めている。高市首相は墓穴を掘った。


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