【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#100


アルバム『マジカル・ミステリー・ツアー』(1967年11月27日)⑧


  ◇  ◇  ◇


■『フライング』


 ビートルズが現役時代に発表した中で、たった2曲しかない、「作詞・作曲のクレジットがメンバー4人の連名になっている曲」の1つ。もう1曲はまた追って。


 また同じく現役時代発表曲の中で、唯一のインストゥルメンタル曲だ。


 メロディーを奏でる不思議な音の楽器は「メロトロン」。各鍵盤がテープの再生スイッチになっていて、押すと録音された音が流れるという「アナログ・サンプラー」とでもいうべき20世紀の珍楽器。ちなみに、この曲ではトロンボーンの音色をサンプリングしたらしい。


 ビートルズ×メロトロンといえば、何といっても『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』のイントロだ。あの不思議に物悲しい音は、フルートをサンプリングしたものだった。【オリジナル記事で試聴する


■『ユア・マザー・シュッド・ノウ』


 前回ご説明した「サイケデリック」の方向に、ジョンやジョージが傾倒していく中、このアルバムでのポールは、ドラッグの香りのしないオーソドックスなポップスの維持に、躍起になっている気がする。


 ただオーソドックス過ぎる感じもして、アルバムを聴いていると次の『アイ・アム・ザ・ウォルラス』に残像がかき消される。


 全体的にゆるゆるなテレビ映画『マジカル・ミステリー・ツアー』のいよいよゆるゆるなラストシーンを飾る曲。



 その後すぐに早逝するブライアン・エプスタインがマネジャーとして録音に立ち会った最後の曲だという。


■『ベイビー・ユーアー・ア・リッチ・マン』


 前作『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』(67年)の流れをくんだ、全体的に遊び感覚に乏しいアルバムの中で、唯一、いい意味で脇の甘さのある緩い曲。


 イントロから流れるオーボエ? バグパイプ? のような音は「クラヴィオリン」というアナログシンセの元祖のような鍵盤楽器らしい。


 メロトロンも含め、ビートルズはテクノポップの元祖としての側面も持っているのだ。


 功成り名を遂げたジョンとポールが「よっ、お金持ち!」と歌っている。


 アルバム『マジカル・ミステリー・ツアー』は以上。テレビ映画の評判を引きずらず、『サージェント・ペパーズ~』から少しだけポップ方向に戻ったアルバムだと思うと、案外楽しく聴ける。


 これで(私の定義による)「中期ビートルズ」も終わり。次作からは「後期」、そして解散への足音が……。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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