【再発見 ちょうど10年前のテレビ】#16


 今からちょうど10年前の2016年7月、北川景子主演「家売るオンナ」(日本テレビ系)が放送されていた。


 北川といえば、前年の「探偵の探偵」(フジテレビ系)も印象に残る。

北川は全身から怒りのオーラを発するヒロインを、キレのいいアクションも披露しながら見事に演じていた。その後、実生活で「DAIGOの妻」となり、このドラマで本格復帰したのだ。


 中堅不動産会社の新宿営業所に、成績抜群の営業ウーマン・三軒家万智(北川)が異動してくる。思えば、顧客である庶民にとって不動産は超高額商品だ。そう簡単に売れるものではない。しかし、万智は違う。何しろ「私に売れない家はない!」と豪語する自信家だ。


 たとえば、駅から遠い坂の上の売れ残りマンション。相手は元々広い一軒家を探していた医師夫妻だ。万智は彼らの一人息子に注目する。忙しい両親に甘えることも出来ず、どこか寂しそうな少年だ。やがて万智の中にひらめくものがあり、水面下の活動を開始。

結局、医師夫妻はこのマンションの購入を決めた。


 万智の仕事ぶりを眺めていると、単に「家」を売っているのではないことが分かってくる。顧客たちが、どんなことで悩んでいるのか、もしくは何に困っているのか。万智は彼らが個々に抱えている、しかも本人たちさえ気づいていない「課題」を発見し、住む家を活用してその課題や問題の「解決」へと導く。


 もちろん、そのためには陰で綿密なリサーチを行う。時には探偵かと思うような行動にも出る。徹底的に観察し、課題を見つけ、情報を集め、顧客に合った解決法を探す。つまり万智は家を売っているのではない。家を通じて“生き方”を提案しているのだ。このドラマのキモはそこにある。


 本作が好評だったことから、日テレは翌17年に「帰ってきた家売るオンナ」をスペシャルドラマとしてオンエアする。このとき、万智は上司だった屋代(仲村トオル)と一緒に「サンチー不動産」という会社をやっていた。

社長は万智だ。


 そして19年1月にスタートしたのが、連ドラ「家売るオンナの逆襲」だった。前作のタイトルが「帰ってきたウルトラマン」へのオマージュなら、こちらは「ゴジラの逆襲」の引用かもしれない。脚本家・大石静のユーモア精神に拍手だ。


 三軒家万智の登場から10年。昨年9月から今年3月までのNHK朝ドラ「ばけばけ」で、北川は主人公・松野トキ(高石あかり)の生みの親である雨清水タエを演じた。上級武家の出身でありながら、明治維新後に身を持ち崩していく女性だ。その「美しすぎる物乞い」ぶりも話題となった。


 凛としたたたずまいに磨きがかかる北川。彼女にしかできない役柄がある強みは今も変わらない。


(碓井広義/メディア文化評論家)


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