【桧山珠美 あれもこれも言わせて】


 坂井真紀(56)か酒井美紀(48)か。水野美紀(52)か水野真紀(56)か。

それぞれ90年代にドラマで活躍、今も第一線で仕事を続けている。なのに、いまだに「ミキだっけ、マキだっけ」と一瞬、頭の中で確認しないとわからなくなるが、こればかりは文句もいえない。


 とはいえ、彼女たちもすでに30年のキャリアを重ね、紆余曲折を経て、それぞれ自分の居場所を獲得している。


 注目したいのが変幻自在の水野と坂井。水野は朝ドラ「風、薫る」でヒロインのひとり、りんの母・美津を演じている。武家の出という設定で、きりっとしたたたずまいとものの言い方に品のよさと芯の強さがにじむ。


 一方、夏ドラマ「告白─25年目の秘密」では敵役を演じ、ヒロインの継母として息子を後継ぎにしようと暗躍する。表面上は穏やかでも実はクセモノ。「奪い愛」シリーズ以来、怪演ぶりで話題をさらってきた。


 役を演じ、顔が変わるのに、それでもどれも「水野美紀」と思わせる。これぞキャリアを重ねた俳優の強みだ。しかも「突然ですが占ってもいいですか?」などのバラエティーでは自然体で姉御肌の親しみやすさも見せている。


 坂井真紀は現在、大河ドラマ「豊臣兄弟!」で主人公たちを包み込む母親なかを演じている。貧しい暮らしを経て息子たちの出世にともない身ぎれいになっていくが、その心根は変わらない。息子の幸せをひたすら願う「かかさま」だ。


 一方、夏ドラマ「ラストノート」では一変。内田有紀演じるヒロインの親友を演じている。年下の男に騙されても諦めきれずアタックし、恋にのめり込んでどんどん壊れていく。その姿が笑えないほど妙に怖い。


「かかさま」から「いかれた中年女」へ。この振れ幅を楽しめるのも坂井の現在地か。


 2人とも母親を演じながら一方でまったく違う「クセつよ女」も演じる名バイプレーヤーだ。


 もう2人の「ミキ」と「マキ」はどうか。水野真紀といえば東宝芸能らしい品のある華やかさをまとった女優として知られる。

「きれいなおねえさんは、好きですか。」というキャッチコピーのCMが話題になった。徳島県知事・後藤田正純氏の妻であり、関西で「水野真紀の魔法のレストラン」という冠番組を持って長く愛される居場所をしっかり持っている。


 酒井美紀はなんといっても「白線流し」のピュアな女子学生の姿が忘れられない。バラエティーでも時折見かけるが、清潔感あるたたずまいは変わらず。2021年には不二家の社外取締役に就任。活動の場を広げている。


 母になり妻になりクセの強い女になり、それぞれの人生を歩いてきた。坂井か酒井か、水野か水野か。ミキかマキか。30年のキャリアを重ねた今、4人は自分の名前でちゃんと勝負している。


(桧山珠美/コラムニスト)


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