名探偵・金田一耕助が活躍する横溝正史の小説を、清水崇監督が映画化した「八つ墓村」が9月18日公開される。1950年という原作の時代設定を現代に置き換え、尾上松也が金田一を演じている。


「八つ墓村」の映画化は今回で4度目。51年版初代金田一は、片岡千恵蔵がスーツ姿、77年版2代目は渥美清で、真面目な“寅さん”といった風情。96年版は豊川悦司がくたびれたはかま姿で原作のイメージに近い。中でも野村芳太郎が監督を務めた77年版は、配給収入19億8600万円という、金田一映画最大のヒット作になった。


 原作は、岡山県の八つ墓村にある旧家・田治見家の一員だと知らされた辰弥が、自分の出生の秘密を知ろうと故郷を訪れ、連続殺人事件に巻き込まれていくもの。ミステリーはもちろん、八つ墓村の由来ともなった400年以上前の8人の落ち武者惨殺事件、その祟りだとされる辰弥の父・田治見要蔵が村人32人を殺した20年前の事件といった伝説に端を発するオカルトホラー、落ち武者の鍾乳洞に隠したとされる財宝伝説、事件の間に辰弥と遠縁の里村典子との間で育まれるラブストーリーなど、さまざまな要素が凝縮されている。


 77年版はホラー要素を強め、市川崑監督の96年版はミステリーの要素を強めて映像化。今作は世界的なホラー映画監督・清水崇が演出しているだけに、作品のテイストは察していただきたい。清水監督とスタッフに会う機会があったが、誰もが77年版をリスペクトしていて、辰弥が訪れる田治見家の外観には、77年版と同じく岡山県高梁市の広兼邸がロケ場所に使われ、77年版で強烈なインパクトを残した、山崎努演じる田治見要蔵の32人殺しの場面が桜の季節を背景にしていたことから、今度も滝藤賢一演じる要蔵は桜を背負って村人を殺害していく。


 今回は村に伝わる「御神楽」が登場。動物の仮面をかぶった人々が刀を持った神と舞うもので、一見動物たちは滑稽な動きをしているが、460年前の落ち武者殺しとリンク。つまり凄惨な惨殺が滑稽な御神楽に変化しているわけで、清水監督は“情報が歪んだ形で伝わるSNS”になぞらえて描いている。

原作にも、辰弥に関する間違ったイメージが膨らんで、彼を殺そうとする村人の歪んだ集団心理になっていく展開があるが、清水監督はそれを、さらに強めて表現している。


 テレビドラマ版金田一役の古谷一行は推理する時に髪の毛をかきむしり、逆立ちして推理したが、尾上は耳たぶを押さえて推理。論理だけでは説明できない事件を前に、人間的な弱さや戸惑いをさらけ出す尾上の金田一は、非常に現代的なキャラクターになっている。清水監督ファンなら「ミンナのウタ」(2023年)に登場した、マキタスポーツ演じる探偵・権田が横溝正史の世界へ迷い込んだようにも見えるだろう。


 歴代作をリスペクトしつつ、アップデートした令和の「八つ墓村」。これが現代の金田一映画の幕開けになるか。 


(金澤誠/映画ライター)


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