【スージー鈴木のゼロからぜんぶ聴くビートルズ】#128


 アルバム『アビイ・ロード』(1969年9月26日発売)⑧


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■『ビコーズ』


 今回はLP時代のB面2曲目と3曲目。そしてこの2曲の後から、有名なメドレー大会となる。


 すでに見たジョン作品『カム・トゥゲザー』と『アイ・ウォント・ユー』は、完全に1970年前後のブリティッシュロックの音になっている。なのに、である。その傍らで、こんなに高度でクラシカルなコーラスの曲を作れるなんて。ジョンの柔軟性というか、ある意味での「器用貧乏」性に驚いてしまう。
 有名な話は、ベートーヴェンのピアノソナタ『月光』第1楽章のコード進行を逆さまにして作ったという話。


 ただ、参考資料があったとしても、こんなに変態(繰り返すが褒め言葉)な曲を作れるのもすごいし、変態ハーモニーを歌える3人(ジョン+ポール、ジョージ)はもっとすごい。【オリジナル記事で試聴する


 実は『ザ・ビートルズ・アンソロジー3』(96年)には、コーラスだけを抜き出したトラックがあるのだが、これは本チャンの方がいいかな。ここではシンセサイザーの使い方もいい感じだし。


 なお、こんな複雑な曲、当のビートルズでも、ライブでは絶対再現不可能という感じだが、果敢にライブで挑戦したグループがいるのだ。それも日本で、ビートルズとほぼ同時期に。


 ザ・ワイルド・ワンズである。『リサイタル'69』(70年)というアルバムを聴かれたい。

サブスクに入っているので。


■『ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー』


「アンタ、お金、くれまへんやん」


 さすが猿の交尾から『ホワイ・ドント・ウィ・ドゥ・イット・イン・ザ・ロード』(68年)を作ったポールだ。彼らが立ち上げたアップル社の経営悪化をネタに1曲仕上げている。


 どんどん曲調が変わっていく「組曲」的仕立ては、のちのポールの得意技になる。アルバム『バンド・オン・ザ・ラン』(73年)のタイトルチューンは、その代表曲だ。


 さて、ここからは個人的な話。


 今回取り上げた2曲は、30年以上前、20代の頃、「宅録」でカバーした(日刊ゲンダイDIGITALの会員限定連載「もっとゼロからぜんぶ聴くビートルズ」で公開済み)。
『ビコーズ』では先に書いた変態ハーモニーの難しさを知ったのだが、『ユー・ネヴァー~』では(当時の)PCに自動演奏させたリズムと、リンゴのドラムスのリズムがまったく異なることを痛感した。


 本連載でこだわってきた彼のドラムプレーの特異性分析は、このときの経験が源流となっている。


▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。昭和歌謡から最新ヒット曲まで幅広いジャンルの楽曲を、社会的な視点からも読み解く。主な著者に「中森明菜の音楽1982-1991」「大人のブルーハーツ」「日本ポップス史 1966‐2023」など。

半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。日刊ゲンダイの好評連載をまとめた「沢田研二の音楽を聴く1980-1985」、最新刊「日本の新しい音楽1975~」は大好評。ラジオDJとしても活躍。


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