タイ内務省は2026年7月17日、昨年末に実施された地方公務員採用試験において、全合格者の3分の1以上に相当する5924人に及ぶ大規模な得点データ改ざんなどの不正が発覚したとして、これらの職員を即時解雇する方針を発表した。当初は外部ハッカー集団による中央データシステムへのサイバー攻撃も疑われていたが、現地メディアの独自分析により、システム管理権限を持つ行政内部の人間が主導した組織的職権乱用であったことが明らかになりつつある。


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 事件の詳細によれば、タイ国家汚職防止委員会(NACC)と警察汚職捜査部(ACD)が今年6月から合同で内部調査を進めた結果、電子化された採点システムの素データと公式合格者名簿の間に深刻な不整合が確認された。合格者約15520人のうち3600人以上は本来不合格水準の得点であったにもかかわらず、データ上で大幅な加点が行われて合格枠に滑り込んでいた。さらに、希望職種や有利な赴任地を確保するため順位を不正に上昇させたケースも1000件以上確認されている。不正受験者は仲介業者や自治体関係者に対し、1人あたり最大80万バーツ(約390万円)の巨額賄賂を支払っていた実態も判明した。

 タイ公共放送「タイPBS(Thai PBS)」は、中央データシステムのアクセスログを検証した結果、外部からの不正侵入の形跡が認められないことを指摘。つまり、セキュリティを突破するハッキングではなく、正規権限を持つ内部担当者が直接データベースを書き換えていた。同局は「近年の公務員組織における汚職事件の中でも最大規模の醜聞」と位置づけ、行政基幹システムが身内の犯罪によって脅かされた事実を強く批判した。

 また、タイ大手紙「タイラット(Thai Rath)」も捜査当局の動きと連動し、事件の裏側を鋭く報じている。同紙によれば、警察中央捜査局(CIB)はすでに不正データ改ざんに関与した疑いで複数の地方自治体幹部職員ら11人を特定し、刑事訴追に向けた本格的な取り調べを開始した。これら内部関係者は職権を悪用し、賄賂を受け取る見返りとして受験者の答案データを組織的に水増しするネットワークを構築していた。単なる個人の思いつきではなく、複数部署が結託した構造的犯罪であった可能性が高い。

 タイでは古くから親族や金銭的つながりを重視する縁故社会(パトロン・クライエント関係)が存在し、採用や昇進の場面で不正な金品授受が社会的課題となっていた。
こうした不正を排除し、公平で透明な選考を行うため導入されたのが「中央データシステム」の電子化だった。しかし、タイメディアの指摘は、行政デジタル化が皮肉にも「不正の効率化」を招いた現状を浮き彫りにしている。最高権限を持つ内部の職員が犯罪に手を染めれば、数千人規模のデータを一括改ざんすることが可能となるからだ。

 タイ政府は事態を極めて重く受け止め、アヌティン首相兼内務相の強い指示のもと、不正合格者5924人を即刻解雇するとともに、過去10年間に実施されたすべての地方公務員試験結果について全面的な遡及調査を行う方針を固めた。現職公務員であっても過去の改ざんが認められれば例外なく解雇し、公文書偽造や贈収賄罪で逮捕・起訴する構えである。安定した地位を求め多額の現金を支払った受験者も職を失い刑事罰を受ける見通しであり、タイ社会全体に大きな衝撃と教訓を与えている。
【編集:af】
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