2026年07月21日、全米の広範囲で人々の健康を脅かしている寄生虫「サイクロスポラ」による集団感染を巡り、大きな混乱が生じている。米国保健当局が一度は感染源と特定し発表したレタスから寄生虫が検出されたとする検査結果について、後に誤りであったと訂正したためだ。
米国の有力報道機関であるワシントン・ポスト(The Washington Post)が報じた内容によると、米国食品医薬品局(FDA)は一度「陽性」と判定した検体について、再検証を行った結果、実際には寄生虫が存在しない「偽陽性(ぎようせい)」であったと発表した。

その他の写真:イメージ

 サイクロスポラは、汚染された水や農産物を経由して人の口に入り、腹痛や激しい下痢、発熱、食欲不振などを引き起こす単細胞の寄生虫である。米国疾病対策センター(CDC)の発表を元にCBS Newsが伝えたところによると、今回の集団感染では全米の30を超える州で1600人以上の感染者が確認されており、そのうち140人以上が入院治療を余儀なくされている。症状が数か月間も持続する場合があり、体調を大きく崩す人が相次いでいる。

 事態が大きく動いたのは、FDAが特定の輸入レタスから寄生虫を確認したと公表した時だった。APの報道によれば、調査対象となったのは大手農産物供給業者であるテイラー・ファームズ(Taylor Farms)社がメキシコ中部の農場で生産し、米国へ出荷した刻みアイスバーグレタスだ。FDAからの陽性判定連絡を受け、同社は直ちに全米27州の小売店やファストフード店へ流通していた該当製品の自主回収(リコール)に踏み切った。タコベルなどの有名外食チェーンでもレタスの使用を見合わせる動きが広がり、消費者の不安は頂点に達した。

 しかし、その翌日に事態は一転する。FDAが追加の遺伝子検査を実施したところ、前日の検出結果は機械や反応の誤差による偽陽性であったことが判明したのだ。サイクロスポラは細菌やウイルスとは異なり、試験管の中で人工的に育てて増やすことができないという非常に厄介な性質を持つ。そのため、検体に寄生虫が含まれているかどうかを調べるには、非常に微量な遺伝子を何重にも増幅させて検出する高度な検査技術が必要となる。
この過程で技術的なノイズを誤って拾ってしまい、寄生虫が存在すると誤判定してしまったという。

 結果の撤回を受け、テイラー・ファームズ社は声明を出し、製品から寄生虫が一切見つからなかった事実を強調した。しかし、一度生じた不安を払拭することは容易ではなく、食品の安全性を監視する当局の信頼性にも大きな疑問符がつく形となった。

 では、レタスは本当に無関係だったのだろうか。科学的な検査結果が振り出しに戻ったにもかかわらず、米保健当局は依然としてこのレタスが原因である可能性が高いとみている。ニュースサイトのポリティコ(Politico)の取材に応じたFDAの担当幹部は「検査結果の修正は、我々の追跡調査や疫学的な根拠を否定するものではない」と説明している。発症した多数の患者から食事内容を聞き取った結果、多くの人が特定の外食チェーンで同じレタスを口にしていたという事実が判明しているためだ。患者の行動記録と製品の流通ルートを重ね合わせると、どうしてもこのレタスに行き着くという。

 現在も製品そのものから直接寄生虫を見つけ出す作業は難航しており、明確な決定的証拠は得られていない。それでも企業側は安全を最優先し、該当地域からの調達停止や自主回収措置を継続している。一度失われた食品への信頼を取り戻すことは難しく、原因究明に向けた米当局の混迷した調査は今も続いている。
【編集:af】
編集部おすすめ