物価高や人件費、物流費の上昇を背景に、中小企業の経営環境は厳しさを増している。2025年度の全国企業倒産件数は1万505件に達し、12年ぶりの高水準となった。
商品や技術に強みがあっても、資金繰りや利益管理が不十分であれば、事業継続が難しくなる現実が浮き彫りになっている。

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 アパレル業界でも、ファストファッションと高付加価値ブランドへの二極化が進む中、中小規模のブランドやメーカーは、生地代、縫製費、物流費、在庫負担を管理しながら独自性のある商品を送り出さなければならない。優れたデザインや製造技術だけでなく、数字に基づく経営判断が求められる時代だ。

 そうした中、「アパレル業界×財務コンサルタント」という新たな立ち位置を打ち出そうとしているのが、株式会社カナエルスの青木竜社長である。

 青木社長は、アパレル業界で約20年にわたり、生産管理、営業、国内外の縫製工場の開拓などに携わってきた。2024年12月には株式会社カナエルスを設立。シャツやコートなどの布帛製品を中心に、国内のオリジナルブランドやセレクトショップ向けの商品を手がけ、ブランドと共に商品をつくる伴走型のOEM事業を展開している。

 これまでには、店舗のブランドイメージと現場での動きやすさを両立するオリジナルユニフォームも企画してきた。服を単なる消耗品ではなく、接客品質や人材教育、ブランドの統一感を支える「着るインフラ」として捉える発想は、従来のアパレル製造を超えた取り組みといえる。

 一方、アパレルの現場に精通する青木社長にも、自社の財務を十分に把握できていなかった時期があった。服づくりや工場との交渉は理解していても、決算書や事業計画、キャッシュフローを体系的に学ぶ機会は少なかったという。

 そこで財務戦略を学び、自社の数字を細かく確認した結果、送料や固定費など、従来は大まかに捉えていた支出が可視化された。
「今の状態が続けば将来どうなるか」「どこを改善すれば利益が残るか」を逆算して考えられるようになり、売上だけでなく収益性や資金の流れまで意識した経営へと変化した。

 インタビュー時点では、自社の売上が前期を上回る見通しとなり、利益率にも改善が見られているという。青木社長はこの経験から、数字の見方を変えるだけでも、経営改善の余地が残されているアパレル企業は少なくないと考えるようになった。

 青木社長が目指すのは、業界を問わず支援する一般的な財務コンサルタントではない。生地や型紙、サンプル制作、縫製工場との調整、納期、送料、原価、在庫といった、アパレル特有の構造を理解した上で経営改善を支える存在だ。

 中小規模のアパレル企業では、経営者やデザイナー自身が商品開発、営業、工場との調整まで担い、数字を確認する時間を十分に確保できないケースもある。売上が伸びても利益が残らない、注文があっても資金繰りが苦しいといった課題は、表面上の売上だけでは把握しにくい。

 そこで青木社長は、自社の改善で得た知見を、同様の悩みを持つアパレル事業者へ還元していく考えだ。特に中小規模のオリジナルブランドやOEM企業に対し、決算書やキャッシュフローを読み解き、将来から逆算した事業計画を立てる支援を視野に入れている。

 また、財務を初めて学ぶ人にも分かりやすく伝えるため、企業研修の講師としての活動も始めている。製造や販売の実務に置き換えて経営数字を説明できる点は、青木社長ならではの強みとなりそうだ。

 良い服をつくる技術と、その事業を継続させる財務力。
この二つがそろって初めて、ブランドや職人の仕事を次世代へ残すことができる。アパレルの現場と財務の双方を知るコンサルタントとして、青木竜社長が切り開く新たな領域に注目が集まりそうだ。
【編集:Y.U】
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