2026年08月24日、「週に4回も停電が起きる。時間は1回につき3時間から4時間ほど。
参ってしまいます」

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フィリピン(Pilipinas)の中部ビサヤ諸島(Visayas)に位置するリゾート地、セブ州マクタン島コルドバ区(Cordova)。現地に暮らすアクティブシニア・マクタン島木曜会の尾田慎二さんは、容赦なく襲いかかる深刻な電力不足の窮状をそう訴える。

南国の楽園という華やかなイメージの裏側で、いまフィリピン(Pilipinas)全土の電力網は崩壊寸前の危機に瀕している。町のショッピングモールでは自前の自家発電機を回し続けて凌ぐ有様だ。一体なぜ、これほどまでに電力が安定しないのか。

フィリピン(Pilipinas)の現地エネルギー省(Department of Energy=DOE)や現地日刊紙インクワイアラー(Inquirer)の報道によれば、ビサヤ諸島(Visayas)周辺では実に27カ所もの発電所がトラブルなどにより強制停止へ追い込まれている。同国では全体の発電量の約60%を石炭火力発電に依存し、さらに約15%を原油に頼るという構造だ。しかし、稼働する石炭火力発電所の多くは老朽化が激しく、トラブルが相次いでいる。

本来であれば最新の設備へ更新したいところだが、環境保護団体や地元住民の強い反対運動により、技術力に定評のある日本の最新式火力発電所すら建設できずにいる。政府が進めるクリーンエネルギー政策の影響もあり、新規の石炭火力発電所の建設は全面ストップした。送電網の整備も長年後回しにされてきた。

フィリピン国家送電公社(National Grid Corporation of the Philippines=NGCP)は、全体の電力供給量と万が一に備える運転予備力が壊滅的に不足していると公式に警告する。
過去には約100万世帯が一斉に暗闇へ突き落とされる大規模停電が発生したが、今後も同様の大停電がいつ起きてもおかしくない状態だ。

こうした非常事態を打開するため、政府は離島向けにソーラーシステムを導入し、ディーゼル発電の燃料消費量を20%削減する計画を推進している。さらに、セブ島では大型のセブ太陽光発電所計画が動き出し、来年末までの稼働開始を目指している。だが、現地放送局GMAネットワーク(GMA Network)の取材に対して専門家が懸念を示す通り、太陽光発電の整備が進む一方で、関税ゼロとなった中国製の電気自動車やバイクが急増。急速な電化によって電力需要は増える一方であり、太陽光だけでこの需要を賄えるかは甚だ疑問だ。

追い詰められたフィリピン(Pilipinas)政府が最後の切り札として見据えるのが、原子力発電の復活だ。最大手電力会社であるメラルコ(Meralco)は、韓国企業と手を組み、原発開発に向けた協力を強めている。

しかし、この原発にはフィリピン(Pilipinas)国民にとって消し去ることのできないトラウマが存在する。現地ラジオ局DZRHの解説によると、1980年代に当時のマルコス大統領主導でバターン原子力発電所の建設が進められたものの、1986年に旧ソ連で起きたチェルノブイリ原発事故を受けて建設は凍結された。

この挫折の代償は重かった。建設費用の23億ドルは外貨での借入金だったため、1980年代の深刻な経済危機と現地通貨ペソの暴落によって、ペソ建ての借金返済額は一夜にして倍増。主要な元本と利息を完済するまでに30年以上という途方もない年月を要した。
その結果、公立学校や病院、道路などのインフラ整備に必要な国家予算が極度に圧迫され、社会全体に深い爪痕を残した。

かつての巨額の借金苦とチェルノブイリの記憶から、カトリック教会の指導者らは今回の原発建設に対しても強い反対の声を上げている。

老朽化した既存の発電所、進まぬ送電網の強靭化、そして過去の原発失敗がもたらしたトラウマ。複雑な事情が絡み合った結果、市民や現地在住者は今日も不便な暮らしを強いられている。住民は電源喪失自衛策として自宅にソーラパネル電源を入れている。
【編集:eula】
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