口のまわりに触手が18本。5億1800万年前の古代海洋生物が発見される


 触手の数はロマンの数。古代生物の謎めいたルックスは、同時代に生きることができなかった、くやしさとせつなさと潤いをしっとりともたらしてくれる。


 でもって今回発見されたのは、口のまわりに18本の触手がはえているクリーチャーである。

 5億1800万年前を生きたであろうその生物は「ダイフア・サンチョン(Daihua sanqiong)」と名付けられている。
【口のまわりに18本の触手】

 この魅力的なクリーチャーの化石は、中国の澄江で雲南大学の研究者によって発見されたものだ。

 古代海洋生物のその姿は現在のクシクラゲに似ており、この不思議な生物の起源の謎を解明する手がかりになるかもしれないそうだ。

 研究の中心人物である英ブリストル大学の古生物学者ジェイコブ・ビンザー氏は、「この化石によって、奇妙なクシクラゲの起源を知ることができた」と話す。

【クシクラゲの先祖か?】

 ダイフア・サンチョン(Daihua sanqiong)の名称は、雲南省に暮らす少数民族ダイ族と中国語の「花(フア)」にちなんだものだ。

 その口の周囲には18本の触手が生えており、それぞれは繊毛が並び、細かい羽毛のように枝分かれしている。

 注目されたのは、この繊毛だ。現在のクシクラゲ(有櫛動物)は美しい玉虫色の光を放つことで知られているが、これは繊毛をはためかせたときに生じるものなのである。

 さらにダイフア・サンチョンからは、18本の触手を持つシャンガンギアやチューリップのような姿をしたディノミスクスシファッソークタムといった、古代の生物との興味深い共通点も見つかっている。

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【クシクラゲの系統樹を再構築】

ビンザー氏によれば、こうした生物の解剖学的な特徴を比較することで、クシクラゲの系統全体を再構築することができた。

 これは重要なことだ。
というのも、クシクラゲは地球上で最初に進化した動物の仲間であるという学説があるからだ。

 これに対して、ビンザー氏は、クシクラゲの以前にも長い系譜が存在すると主張しているのである。

 新たに構築された系譜が示しているのは、クシクラゲの祖先の中には骨格があるものがいるということや、その触手が今日のクシクラゲのクシに進化したということだ。

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Facts: The Comb Jelly (Ctenophora) クシクラゲ

【クシクラゲとサンゴは親戚?】

この発見は、こうした古代の生物が系統樹のどこに位置するのかという点についても光を投げかける。

 たとえば、これまでシャンガンギアはイソギンチャクの仲間だと考えられてきたが、今回の研究によれば、じつはクシクラゲの仲間かもしれないのだ。

 またクシクラゲがサンゴ、イソギンチャク、クラゲの親戚であるらしいことも強く示唆されている。その口のまわりの触手は、サンゴやイソギンチャクに生えている触手とまさに同じものだという。

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【ダイフア・サンチョンをめぐる議論】

しかし、ビンザー氏の説に異を唱える向きもある。

 米イェール大学のケイシー・ダン氏もそうした1人だ。彼は、ダイフア・サンチョンとそれに関連するとされる生物の形状は大きく異なっており、どのように関連しているのか見て取ることは難しいと主張する。

 たとえば、チューリップのようなディノミスクスとシファッソークタムなら、親戚であると言うこともできるだろう。

 一方、シファッソークタムの繊毛が体内に生えているのに対して、その後に続くとビンザー氏が主張するガレアクテナ(Galeactena)の場合は体外に生えている。
体内の繊毛が体外に生えるにいたった進化を想像するのは難しいだろう。

 今回の研究の根拠は薄弱で、まだ結論を出せる段階にはないとのことだ。

 研究は『Current Biology』(3月21日付)に掲載された。

References: University of Bristol / maritimeherald./ written by hiroching / edited by parumo

記事全文はこちら:口のまわりに触手が18本。5億1800万年前の古代海洋生物が発見される http://karapaia.com/archives/52272748.html
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