2026年6月1日、南アフリカの新聞「The Star」「The Mercury」「Cape Times」の紙面をめくった読者たちは、一様にショックを受けた。
紙面にはまるで血のような鮮やかな赤いシミが広がっていて、次のページにも、その次のページにも染み込んでいるようだったからだ。
これは印刷ミスでも血痕でもない。生理用品を買えない少女たちの現実を伝える、新聞の紙面を使った広告だったのである。
新聞紙の上に血痕のようなシミがついている?
南アフリカのジャーナリスト、アンドレ=ピエール・デュ・プレシス氏がThe Star紙をめくっている様子を写した動画があったので、まずはこちらを見てもらおう。
最初のページの真ん中には、大きな血痕のような赤いシミが印刷されていて、一瞬ドキッとしてしまう。
実はこれは印刷ミスではなく、生理の経血を視覚的に表現した「広告」である。最後の「血痕」の上にはこう書かれている。
A Newspaper Can Absorb The Blood, But Not The Shame
新聞紙は血を吸収できても、恥までは吸収できない
さらに同じページには、次のようなメッセージも書かれている。
400万人の女子生徒が、生理用品を買うことができず、新聞紙などの不衛生な代用品に頼っています。
たった60ランド(約580円)で、女子学生1人に1年分の生理用品を提供し、彼女の健康を守り、学校に通い続けられるよう支えることにもつながります。
私たちが力を合わせれば、生理の貧困をなくすことができるのです
生理用品を買えない女子学生を支援するための広告だった
上記にもあるように、南アフリカでは多くの女子学生が経済的理由で生理用品を購入できず、学校を休んだり、やむを得ず代用品を使ったりしているという。
今回の広告は、新聞紙や布、時には牛糞などの不衛生な素材を代用品として使っている少女たちの現実を伝える、啓発キャンペーンの一環として行われたものだ。
新聞紙をめくると、その裏にも次のページにも、血痕が染みている様子が表現されている。
だんだんとシミが小さくなっていくところもリアルにできていて、知らずに見ると本物の血がついているのか?と思ってしまいそうだ。
この企画は南アフリカの広告会社Joe Publicと、MENstruation Foundation[https://www.facebook.com/profile.php?id=100064413170045](生理財団)、Independent Newspapersの協力で実現したものだ。
MENstruation Foundationは南アフリカの非営利団体で、生理用品を買えない女性への支援のほか、生理にまつわる偏見やタブーの解消を目的に活動している。
主な活動内容は以下のとおり。
- 生理用品(ナプキンなど)の配布
- 学校や地域コミュニティでの月経教育
- 生理の貧困(Period Poverty)に関する啓発活動
- 月経に対する偏見や羞恥心の解消
- 企業や団体と連携した寄付キャンペーン
同財団の共同創設者、シヴ・ンゲシ氏は、女子学生への支援の大切さについて次のように語っている。
私たちは解決策を持っています。世界で最も手頃な価格で高品質の生理用ナプキンを製造しています。
しかしさらに何百万人もの少女に届けるためには、寄付やスポンサーが必要です。支援がなければ、南アフリカの生理用品不足を解消することはできません
また、Independent Newspapersの役員、ルトフィア・ヴァイェイ氏は、今回のキャンペーンについて次のように述べている。
より多くの女子生徒が無料で生理用ナプキンを入手できるようにすることで、彼女たちの健康を守り、学校に通い続けることができます。
私たちは、女子生徒が使用せざるを得ないまさにその素材を、誰もが耳を傾けるべき力強いメッセージとして活用するこの取り組みに参加できることを誇りに思います
発想を称賛する声もあれば、嫌悪感を示す人も
この広告は、南アフリカの新聞読者に大きな衝撃を与えた。「クリエイティブ」だと賞賛する人もいれば、嫌悪感を示す人もいた。
- なんでこんなものを見なきゃならないんだよ
- なぜ生理用品は無料じゃないの? 出血するのは私たちの選択じゃないのに。本当に腹が立つわ
- HIVの流行時には、南アフリカ政府は予防手段を広く利用できるようにした。女性にとって生理用品も生活必需品だ。
でも多くの人には今も手が届かない。学校を休まなくて済むよう、公立学校で利用できるようにすべきだよ- 新聞のインクには鉛か何か有害な成分が入っていたはず。私が初潮を迎えた頃は生理用品なんてなくて、包帯を何重にも折って使っていた。決して楽なものじゃなかったよ。今の快適さを忘れがちだよね
- ただ売るだけじゃなく、問題意識を高める賢い広告だね。本当に寄付や生理用品の配布につながることを願うよ
- この広告自体に不満はない。ただ、集まった寄付金が本当に生理用品の購入と適切な配布に使われることを願う
- この広告は何か賞を取るべきだ
- その通り! 広告嫌いの私も、これは良い広告だと言わざるを得ないな
- みんながこの活動を知り、寄付の機会を広めていること自体が、この広告への最高の賞だよ
- 2026年にもなって、こんな暮らしを強いられている人がいるなんて本当にひどい
- スコットランドは、無料の生理用品へのアクセスを法律で保障している世界で唯一の国だよ
- オーストラリアでも少しずつ、図書館やコミュニティセンター、美術館などに無料の生理用品自販機が設置され始めている。パッケージには全部「ぜいたく品ではない」と書かれていて、それを見ると本当にうれしくなる
- 広告を作った人たちはもちろん素晴らしいけれど、実際に掲載した新聞社にも敬意を表したい
- 多くの女性にとって、生理用品が手の届かない存在であること自体がおかしいんだよ
日本でも社会問題となっている「生理の貧困」
このような問題は、海の向こうの話だけではない。日本でも最近、「生理の貧困」が社会問題として注目されるようになってきた。
これは主に経済的な理由から生理用品の購入が困難だったり、必要な時に十分な量を確保できなかったりする状況を指す言葉である。
日本財団が2021年に行った調査[https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/pr/2022/20220204-67162.html]では、経済的な理由などから生理用品の入手に苦労した経験がある若い女性が一定数いることが明らかになった。
さらに2022年には、厚生労働省が「生理の貧困」が女性の心身の健康等に及ぼす影響に関する調査[https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24693.html]を実施している。
この調査では、以下のような結果が驚きを持って迎えられた。
- 新型コロナ以降、生理用品の購入・入手に苦労したことがある 8.1%
- 入手できない時の対処として交換頻度を減らしている 50.0%
- トイレットペーパーやティッシュで代用している 43.0%
思春期~閉経前の女性なら、ほぼ毎月お世話になる生理用品だが、その分お金も定期的に、必ず出て行くことになる。
生理用ナプキンやタンポンはもちろん、生理用のショーツや鎮痛剤、生理痛がひどい場合は、低用量ピルを処方してもらっている人もいる。
十代の若い女性の場合、生理は「恥ずかしいもの」「隠さなければいけないもの」という意識から、親に買ってほしいと言えずにいるケースも多いという。
X(旧Twitter)に投稿された「市役所のトイレに生理用品を置いてほしい」[https://www.asahi.com/articles/AST583C2GT58OIPE01CM.html]という訴えが炎上し、批判殺到した事件は記憶に新しいのではないだろうか。
日本でもまだまだ生理をタブー視する意識はあるものの、この「生理の貧困」という言葉が広く知られるようになった結果、最近では多くの自治体や教育機関で、ナプキンの無料配布やトイレへの設置が進められているようだ。
ナプキンなどがない時代、女性は草や藁、ボロ布、紙や羊毛などもナプキン代わりに利用していたという。古代エジプトではパピルスも使われていたそうだ。
現在の研究では、不衛生な布や紙などを使うことは、感染症のリスクを高めることがわかっている。
月経を安全に管理できるかどうかは、女性自身の健康に直結する問題でもある。
今回のキャンペーンが、女性たちが避けて通れない生理の期間を少しでも快適に、そして健康的に過ごせる世の中の実現に、一歩でも近づくきっかけになるといいのだが。
南アフリカの女子学生も生理用ナプキンを寄付する取り組みはこちらから参加できる。
Donate – MENstruation Foundation[https://menstruation.foundation/donate/]
References: Blood-stained newspapers expose the reality of period poverty in South Africa[https://www.famouscampaigns.com/2026/06/blood-stained-newspapers-expose-the-reality-of-period-poverty-in-south-africa]











